第120話 一番幸せな瞬間
寝ている時が一番幸せだと思っていたけれど、厳密には違うことに気がついた。
友人が大学卒業祝いにくれた無印良品の小さな目覚し時計、これを私は壊れるまで使い続けるつもりだが、それをセットしようとして、しなくてもいいと気づいて手を離し、布団にごろりとする瞬間が一番幸せだった。
明日は何時に起きてもいいし、いくらでも寝ていられる。
実際一日中寝ていることはまずないけれど、「寝ていてもいいし、起きていてもいい自由」が何ものにも代え難くて、両手で顔を覆って「ああ……」と気の抜けきった乾いた笑いを洩らす。
もうね、ぐったりだけどね、こういう瞬間がこのあとの人生、何回あるのかも定かではないけどね。
眠ってしまえば何もわからなくなる世界の、落ちる寸前で目に映るものが、明日を束縛しないと知ってこみ上げる喜び。
幸せの基準は低ければ低いほど、幸福度が上がる。
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