第321話 タダより高いものはないと知りつつも、ついやっちゃうんだ
ソフトバンクのユーザー向けで、スーパーフライデーというサービスがある。
スマホにクーポンが送られてきて、決まった店舗の決まった日時(金曜日)に行くと食品が無料でもらえる。
先日もらったクーポンは、ファミリーマートのファミチキを一個くれるというものだった。
私は別にファミチキが特別好きということもないのだが、クーポンを見てとりあえず貰うことに決めた。
無料でくれるというものを受取らないのは、なんだか損な気がしたからだ。
実際はなんら損していないにも関わらず、不思議とそう思ってしまう。
小市民の小市民たるゆえんである。
しかし、実際ファミリーマートの店舗へ行ってみると、ファミチキを貰うためだけに店を利用することには抵抗を覚えた。
子供じゃあるまいし、いい大人が無料という言葉に飛びつき、喜び勇んでファミチキを貪るのはなんだかとても浅ましい気がする。
事実浅ましいんだろうけど、人に浅ましいと思われるのは嫌なのだ。
突然発動する薄っぺらい見栄、そしてなけなしのプライド。
そう思うなら、ファミチキを貰わなけりゃいいだけの話なのに、店まで来ておいて何もせず帰るというのも悔しい。
この時点で、私は無料という名の有料の罠に落ちていた。
(……仕方ない。なんか買ってこ)
と思い、適当にドリンクコーナーへ行く。
「ファミチキの油を緩和してくれそうだから」という特に根拠のない理由で飲むヨーグルトを手に取り、「風邪ひいてるし栄養補給・水分補給のために」という理由でポカリスエットを手に取るもアクエリアスの方が20円安かったのでアクエリアスにし、レジに持っていった。
そして、本当はそのために来たくせに、そこで初めて思い出したかのように「あっ!」と慌ててスマホを取り出し、「違うのよ。飲み物を買いに来たんだけど、たまたまソフバン使ってて、たまたまの金曜日に、たまたまファミチキのクーポンのこと思い出したから一応貰っていこうかなってだけなの。たまたま!」みたいな顔をして店員にクーポンを見せ、ファミチキを貰ったのだった。
別にファミチキが食べたいわけではないし、飲むヨーグルトやアクエリアスが必要だったわけでもないのに……。
自分のちっぽけな見栄のためだけに、なんとなく買ってしまった。
いや、わかっているのである。
サービスの本当の意図は、最初から店のついで買いを狙うものであることに。
ファミチキだけ貰って帰る人もいるだろうけど、それ以上にファミチキは副菜にしてごはんは別に買ったり、飲み物と一緒に食べようと思う人の方が多いはずである。
無料ファミチキは店舗へ誘導し、入店させるための手段に過ぎない。
これが当人だけでなく、友人や家族も一緒だったら、尚のこと商品が売れる確率は上がる。
積もり積もって儲かる。
店を出てから、(実際はたいした金も使ってないのに)「タダより高いものはないなあ~」と苦笑してみたり。
わかっていても、ついつい罠にはまってしまうんだよね。
最も、ファミチキも飲料もちゃんと消費したからいいんだけどね。
といいつつ、私は今日もポイントを200ポイント貯めて買い物時に使いたいがためだけに、マツキヨにシャンプーを買いに行った。
……あれ?
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