第322話 ざんざか ざんざか




 心が砂っぽくざりざりする日に、雨が降ってたりするのは自分と大気と同調しているようで、少しばかり得意げな気分になる。

 逆に心が大気に合わせているだけかもしれないけどね。

 山田今次の「あめ」なんかを黙読してみたり。


 ***


 あめ あめ あめ あめ

 あめ あめ あめ あめ

 あめは ぼくらを ざんざか たたく

 ざんざか ざんざか

 ざんざん ざかざか

 あめは ざんざん ざかざか ざかざか

 ほったてごやを ねらって たたく

 ぼくらの くらしを びしびし たたく

 さびが ざりざり はげてる やねを

 やすむ ことなく しきりに たたく

 ふる ふる ふる ふる

 ふる ふる ふる ふる

 あめは ざんざん ざかざん ざかざん

 ざかざん ざかざん 

 ざんざん ざかざか

 つぎから つぎへと ざかざか ざかざか

 みみにも むねにも しみこむ ほどに

 ぼくらの くらしを かこんで たたく


 ***


 ざんざか さんざか

 ざかざん ざかざん


 いいなあ、この響き。

 ことばが雨の代わりに染みこんでゆくよ。

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