再び建午月

第358話 「響 小説家になる方法」




 柳本光晴さんの漫画「響 小説家になる方法」を読んだ。とても面白かった。

 ツタヤで全巻買ってその日のうちに読破してしまった。

 しかし、手もとに置いておきたい作品ではなかったので、翌日には全巻手放してしまった。

 なんでだろうな……と思い、しばらく考えてわかった。

 純文学にしろ、文芸にしろ、ラノベにしろ、好きという気持ちがイマイチ伝わってこないからだった。

 天才設定なのはいいとして、主人公に創作における悩みや葛藤や努力の軌跡が感じられないからだった。

 人によるだろうけど、小説家版俺TUEEEは読んでいて地味にしんどい。小説に限らず、創作者無双も辛い。

 私はどれだけ売れていても、成功していても、創作者にTUEEEな人はいないと思っているので……。

 きっと作者が描きたいテーマと、私が求めている泥くさいカタルシスが違うのだろう。だったら合わない方が去るのみである。


 松田奈緒子さんの漫画「重版出来!」も同じような内容で、少年誌を中心に作家と編集者と出版業界を描いているけれど、こちらはもうどんな話でも、台詞がなくても、画面から殴りつける勢いで伝わってくる。

 本が好き。漫画が好き。活字が好き。自分が作った本を読んで欲しい。おススメの本が売れて欲しい。面白い本をもっと多くの人に知ってもらいたい。

 とにかく、好きで好きでたまらない気持ちにボコボコにされる。もうフルボッコ。

 完全に好みの問題だが、私はこちらの方がいい。作家を取り巻くドラマがどれほど悲しくても切なくても、本への愛情を思えば幸せな気持ちになれる。傍に置いておきたくなる。

  

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