第61話 山登りと書くことはどこか似ている①



 3年前くらいから山に登るようになった。

 正確に言うと、登山ではなくハイキングである。

 尾根づたいに山小屋を泊まり歩くようなガチ登山勢ではない。

 登っても標高2000m程度の山ばかりなので、登山を趣味とする人たちから見れば、子供の遊びみたいなものだろう。

 登るのは日帰りで行けるところばかりで都内なら高尾山、その周辺の山や奥多摩、少し遠出して山梨や静岡、群馬、栃木など。山歩きをするのは春から秋にかけてまで。怖いので冬山には近寄らない。

 どこへ行ってもまずはヒイヒイ言いながら登り、慣れて余裕が出てくると草花を眺めながら歩き、山頂でお昼を食べ、休憩所で甘味をつついたりもしながら大体5~6時間くらい歩く。帰りに温泉に寄ったり、地元の美味しいものを食べたり。実に気楽な道程である。



 元々両親が登山をする人たちで、3歳くらいの頃から富士山だの、立山だのに登っていた。山頂で撮った写真も沢山あるし、なんとなく覚えている。

 けれど十代に入ってからはとんとご無沙汰になり、学校行事の遠足くらいのものだったが、山自体は好きでキャンプやBBQは楽しんでいた。最近になってハイキングに目覚めて復活(?)した次第である。

 今思うと、子供の頃の方がよっぽどハードな登山をしていた。

 ハイキングは気楽だけど、ちょっと軟弱になった感は否めない。



 始めたきっかけは二つあって、一つ目は運動不足が気になりつつも、ジムが嫌いで通う気になれなかったこと。

 泳ぐのは好きなのでスイミングはよいのだが、筋トレ全般がつまらなくてやる気になれなかった。何がつまらないって、景色が一切変わらないのがつまらない。ランニングマシンで走っても見えるのはビルの外の雑沓か、テレビの画面くらい。なんら面白いことがない。

 その点、登山は上りも下りもどんどんと景色が変わるから飽きない。

 これが性に合っていた。


 二つ目は人に誘われたから。一緒に登る仲間ができたから。

 趣味というものは一人で楽しんでもよいけど、やっぱり同志がいた方が何倍も楽しい。

 登山者にも色んなタイプがいるのだが、私は一人で山に登ったことはないし、これからも登ることはないと思う。

 旅は道連れ、山も道連れ。誰かと一緒に歩くのが楽しいのである。

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