第309話 湯船にもぐる




 平穏な日が、あまりに平穏すぎてちょっと息苦しい。

 なので、お風呂に入った時に、湯船にざぶんと潜ってみた。

 しばらく湯の中でゴボゴボ気泡を吐き、いい加減苦しくなって顔を出した。

 全身が熱い。頭の中もうだっている。ゆでたまご。大分前に生まれてしまったけど。


 一歩間違えれば、溺れてしまうのだろうね。

 でも、無事だったからいいよ。冷水をザバザバ浴びたら、新鮮野菜のようにシャキッとできそうだし。

 息苦しさがなくなったら、歌を歌いたくなった。自由に歌った。


 人間、ちょっとくらい不自由な方が生活に張り合いが出るね。

 窮屈なのも嫌だけど、顔半分くらいまでお湯に浸かっているくらいがちょうどいいよ。

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