第343話 参った




 何も思い浮かばない。

 何もことばが浮かばない。

 本を読んでも話が頭に入ってこない。


 仕方ないので、ベランダに出て汗ばむ陽気の下、ずっと土をいじっていた。

 爪の中に土が入りこんで汚れて、それをじっと眺めていたら、少し元気が出てきた。


 生きてるなあ。

 どうしようもなく生きてるなあ。

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