第155話 手紙を書くよ




「メールするよ」

「LINEするよ」

 でもいいけど、

「手紙を書くよ」

 と気軽に言える関係に憧れる。

 好きな人ほど、そう思う。


 今はSNSが発達しているから、相手の住所や本名を知らないままでも不自由はないし、それこそ何年も経ってから知るなんてこともザラ。

 親族や仕事関係ではなく、季節の折々に特に用がなくても時候の挨拶を送ったり、旬の果物や旅行先のお土産を気兼ねなく贈りたいと思ってもなかなかそうはいかない。。

 そういう気兼ねない関係は、今後はもっと貴重になるのかもしれない



 今日は早起きして手紙を3通書いた。

 頼まれていたものに同封して送るつもりである。

 どれも便箋1枚ずつなのに、とても時間がかかった。

 丁寧に書いても元々字が綺麗ではないので、あまり様にならない。

 書きたいことはいっぱいあるのに、どうにも上手くまとまらない。

 気の利いたことも書けなかった。なんだか事務的な文章になってしまった。

 無難だが、つまらない。


 だけど、便箋と封筒がとても素敵なデザインで、見ているだけでウキウキするので、これに頼りきって投函してしまうことにする。

 美しい絵と紙の上質な手触りが、至らない字面を上手くぼかしてくれるだろう。


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