建寅月

第238話 元旦の椿




 昨年末に、注文していた椿の苗が届いた。

 同時に鉢や土も一緒に購入したのだが、多忙につき植え替えができなかった。

 それはそのうちやるとして、丸々としたつぼみを沢山つけた椿をぼんやり眺めていたら、惲格うんかくの漢詩「歳寒圖さいかんのず」を思い出した。

 惲格(惲寿平うんじゅへい)は中国・清代初期の画家・書家である。



 歳寒圖


 寒花還與歳寒期     

 夜起移燈看雪時

 未許東風到桃柳

 山茶先發近窗枝


 冬の花は冬の寒さと約束していたのだ、

 夜起きて明かりを移し、雪景色を眺めやるこの時に

 まだ春風が桃や柳に吹くことができない時期、

 椿はまず一番に窓辺近くの枝に花を開く



 どうして、椿はこのような厳しい冬の時期に咲くのだろう。

 春が待てないのだろうか。

 せめて自分くらいは、花の失せた寒々しい世界を彩ろうとしているのか。


 大晦日の夜を越え、朝の光に照らされたベランダの椿

 詩のように雪景色ではないけれど、椿もまだ花を咲かせていないけれど、これから開く清廉な美を愛でるのが、楽しみでならなくなった元旦の朝。



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