第247話 どんだけ文才のある素人やねん
よく主人公の一人称で書かれている小説がある。
どのジャンルにもあるが、私が読むのはミステリーが多い。
主に殺人事件が起きて、それに巻き込まれた一般人の視点で述べていく形式のものである。
回想だったり、手紙だったり、或いは日記、手記だったりするが、この時点で確かなことは、主人公は最後まで生き残ったことと犯人ではないこと(ただし例外はある)。
ただ、それらを読みながら、私はいつも内心で突っ込んでしまう。
どんだけ文才のある素人やねん、と。こんなの一般人には絶対書けんから、と。
やたらに細かい風景描写、純文学のような芸術的表現、謎の薀蓄……それ必要あるの?
主人公の設定が、小説家、作家、記者あたりならわかる。仕事が物書きだからね。そりゃ上手なのは当たり前ですよ。逆に下手だと困る。およそ職業に説得力がない。
教育者や難関資格保持者、教養の高い知識階級(インテリゲンチャ)出身、天才設定でもまだわかる。
しかし、幼年期から何十年も幽閉されていた、まともな教育を受けていない、海外暮らしが長い等の設定でも、流暢すぎる文章が並ぶと、どんだけたくみな口述筆記で絶妙な翻訳でプロの編集済みなんだよと思ってしまう。
何が普通のサラリーマンだ。平凡な主婦だ。どこにでもいる三流大学の学生だ。
こんなに上手けりゃ、作家はみんな廃業してしまうよ!
いや、突っ込んじゃいけないのはわかっている。
作家が書いている以上、フィクションでも主人公の書くものが上手いのは当然なのだけど。
でもこれだけ上手けりゃ、話の最後に「僕はこの告白文が新聞に載り、●●賞を取りました」「手記が作家デビュー作になりました」と書かれていても全く構わないのに、一人称の小説でそういうオチは見たことがない。不思議だね。
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