第26話 猫が飼いたい




 猫が大好きである。

 とりあえず好きな動物の第一位。次が鷹で、その次がきつね。

 大抵は犬派と猫派で意見がわかれることが多いが、断然猫。

 犬も好きだけどやっぱり猫。

 何故なら猫はかわいい。姿かたちも色も鳴き声も全てがかわいい。

 見ているだけで心和む。

 まさに人に愛玩されるために生まれてきた動物だと思う。

 猫はそんなこと思ってないだろうけど。

 猫を飼っている人の家に行くと、もう大喜びで抱っこしまくり、揉みまくりで「お前は猫目当てで来たのか」と言われる始末。

 一時期は猫カフェにはまって、毎週のように店に行っては猫と戯れていた。

 私自身もずっと前から猫を飼いたいと思っている。


 猫が飼える条件は整っている。

 住んでる家はペット可の物件だし、猫が飼えるスペースもあるし、自宅から徒歩5分のところに動物病院があるので安心。地元に猫譲渡のコミュニティがあって、とてもよく機能しているので、買う必要もない。

 もし猫を飼ったら……という妄想はしょっちゅうしている。

 貰えるとわかっていてもこだわりはあって、黒猫かロシアンブルーがいい。

 ロシアンブルーのあの高貴な顔だちと、シュッとした体躯と、灰色の毛並みが好きなのだ。

 名前は星からとるつもりでいる。

 自分の誕生星でもいいけど、なんかナルシストっぽいので月(MOON)がいい。三日月、十六夜いざよい、有明、曉月ぎょうづき弦月ゆみはりなどなど。はっきりいって呼びにくい。

 毎食、高級缶詰は与えられないかもしれないが、そこそこ美味しいものを食べさせてあげたい。

 ことあるごとに猫を撮り、厳選した写真をデコってSNSにアップし、お洋服なんかも着せたりして、友人知人その他から「かわいい、かわいい」と絶賛されたい。

 うちの子があまりに可愛すぎて10000RT、50000イイネされたらどうしようとか、可愛すぎて盗まれたら大変だとか、しょうもない心配をしてみたい。

 女性誌の企画みたいだが、晴れた日の休日は駅前のペット同伴可のカフェへ行って交流したい……。などなど。


 しかし、これだけ日頃から妄想をたくましゅうしているのに肝心かなめの猫がいない。

 あと必要なのは飼う勇気だけなのに、どうしてもふんぎりがつかない。

 それは猫を失う時のことが怖いからだ。

 いくら一緒に仲良く暮らして、ちゃんとお世話ができても、いずれ来る別れ、ペットロスの悲しみを思うと躊躇してしまうのである。

 かといって、飼い主の私が先に死ぬわけにはいかない。

 飼うならきちんと最後まで面倒をみなくてはと思うし、でもそうなると悲しいし……で以下エンドレス。


 いや、わかっているのだ。

 生き物を、一つの命を預かるのだから、迷いがあるうちは飼うべきでない。

 残念ではあるが、覚悟が決まるまでは手を出さず、妄想の猫生活を送ることにする。

 私はそれなりに楽しいが、傍から見ればただの痛い人だろう……。




 ああ、猫が飼いたい……(飼うとは言ってない)


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