第55話 家に帰ったらガスが止められていた①
大雨が降った日、足もとをずぶ濡れにして、お腹を空かせて帰宅した。
時刻は既に夜の11時を回っていた。
外は肌寒かったのでとりあえず温かいお茶でも淹れようと思い、ヤカンに水を入れてガスをつけた。
ところがいくらスイッチをひねってもガスがつかない。三口あるうちのどれもつかない。昨日までは普通に使えたのにつかなくなっていた。
ガスコンロに内蔵されている電池が切れたのかと思ったが、電池切れのランプは点灯していない。
「……ハア!?」である。疲れて帰ってきて、お茶どころか料理は一切できなくなってしまった。電気はつくので電子レンジは動くし、電気ケトルもあるのでなんとかお湯は沸かせるが、ガスが止まるなんて聞いてないし、何の予告もなく突然止めるとはどういうことなのか。
私自身の名誉のために言っておくと、ガス料金は一切滞納していない。
銀行口座から自動引き落としだし、カードで払っている。口座の残高不足でガス代が引き落とせなかった場合でもまずカード会社から連絡がくるはずだ。
怒り心頭のまま、東京ガスのお客様窓口センターへ電話をかけた。
しかし受付時間は午前9時から午後5時までで、当然誰も出ない。
さらに怒りが増したが、そこでふとあることを思い出した。
数日前、ガスのメーターの点検を行うというお知らせがポストに入っていた。
もしや今日その点検が行われたのだろうか……?
ポストを覗くと、案の定東京ガスから委託を受けている担当区域のガス工事会社からお知らせの紙が入っていた。
メーターの点検をしたところ、ガス漏れが確認されたので、緊急でガスを止めたという。
至急連絡が欲しいと書いてあった。
再び「……ハア!?」である。そんな、あなたガス漏れて。ガスはほぼ毎日使ってるんですけど……。
一歩間違ってたら、一酸化炭素中毒で重大な障害をもったり、死んだりしていたのだろうか。怖すぎる。
とにかく24時間対応というコールセンターに電話したら、ものの2秒で担当が出た。
受付番号を言うと、「今から係員が行きます。30分くらいで着きます」と言われた。
……え? 今から? 時計を見たら24時近い。
深夜になるのに、これから来るの?
まあでも緊急事態であるからには仕方ないのか……。私はげっそりしつつ、訪問を受けることにした。
電話を切ってから、ガスコンロを見て気づいた。
コンロは真っ黒で……油や食べ物のカスなどが飛び散り、とてつもなく汚かった……。
とてもじゃないが人に見せられる状態ではない。
それから30分の間、私はガスコンロの表面をクレンザーで必死に摩いたのだった……。
(教訓)いつガス漏れが起きて、深夜に人がやってくるかわからないので、台所の掃除はこまめにした方がいいよ……!
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