第223話 舞台を観に行ったらアンケートを書け




 最近は忙しすぎて、観劇予定のものを殆どキャンセルしてしまった。

 行けなくなってしまった舞台のチケットは、全て友人に譲った。

 残念ではあるが、先方がチケットを得て喜んでいるのを見ると、行ける人が行って楽しんでもらえるのが一番だと思う。

 そして、その譲渡の際には一つ条件をつけた。

 観劇後に、簡単でいいので私にメールで感想を送ること。

 感想を読めば、私も束の間劇場にいるような気分になれて楽しいからである。


 その友人の一人が「△△は〇〇の方が良かった……。XXでもいいんだけどね」というような、希望とも愚痴ともつかない感想を送ってきた。

 そういう場合は「劇場で配られるアンケートに全部書いた方がいい」と返信した。

 それはもう事細かに、「え、こんなことまで?」というようなことでも書きまくった方がいい。

 ウィッグのツヤが気になる、化粧が濃い、顔色が悪く見える、マイクが雑音を拾っている、ライトが反射して眩しい等々、演技以外のことでも全然可。


 舞台の場合、アンケートに書かれた意見はその日のうちにスタッフに吟味され、役者に伝えられ、早ければ次の公演に反映されたりする。

 舞台は生き物なのだ。

 毎日毎公演、客の意見を取り入れて、目まぐるしく変わっていく。

 絶えず良い方向を模索し、客の満足度を高めようと努力し続ける。

 それを観る側も期待しているし、自分たちが作品を育てているような感覚にもなるし、製作側がブラッシュアップを怠ると簡単に愛想をつかしてしまう。それでは次回の公演に引っ張れない。

 作る側、演じる側も必死である。客も必死に観る。

 必死と必死がぶつかりあい切磋琢磨すると、また新たな感激、感動が生まれる。


 なので、舞台をより良いものにするためにも意見はその場で送った方がいい。

 勿論全ての要望が取り入れられるわけではないが、初演と千秋楽を観た時の完成度の差が高ければ高い程、喜びもひとしおである。

「よし、また次回作も観に行こう!」と満足して帰路につきたかったら、自分の意見を伝えるのが一番。

 何も言わずに、ネットでブチブチ文句を言ったりするのはとても勿体ない。

 テレビや映画と違って、舞台は観客と共に作っていくものである。

 その長所を存分に味わって欲しい。


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