第64話 深夜の水やり
毎日暑いので、ベランダの鉢植えに朝夕2回水をやらなくてはいけない。
特にカエデは乾燥に弱いので水を切らしてはいけないし、シャワーのごとく葉っぱにも水をかける。
大きなじょうろに水をたっぷり入れて何回も往復するのは大変だけど、これを面倒くさがっていては動物などとても飼えないなあと思う。
そうして朝晩たっぷり水をあげても、昼間太陽に焙られ続けると夕方には葉が下を向いてぐったりしている。水をあげてしばらくすると葉がピンと張り詰めてくるから、懸命に水を吸っているのがわかる。
動かないし、しゃべりもしないけど、やっぱり生きているんだなあ……と感心する。
深夜になればさすがに外も涼しくなるし、部屋の照明も落としてしまう。
誰に見られる心配もないので、サンダルを履いて寝巻きのままベランダに出る。
水をあげて、その場に踞って、5~10分くらいボーと草花から滴って光る水滴を眺める。
湿った土の匂いが鼻孔をくすぐる。花の甘い香りも漂ってくる。
昼間の灼熱を乗り越えた夜の匂い。一日を無事に終えた安堵がこみ上げてくる。
無音の優しい夜に融けてしまいそうになる。
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