第285話 春風の暴威




 とんでもなく暖かくて、とんでもなく風の強い日だった。

 外を歩いているうちに髪はめちゃくちゃ、暑くて汗びっしょり、日差しはカンカン照りで焼けてしまいそう……と、とんだ2月の中旬である。

 こんなにも激しい風に揉まれていると、自分が木の葉にでもなったようで、弄られるたびに心で悲鳴をあげつつ、段々諦めの境地になって楽しくなってくる。


 こういう日は、宮沢賢治の「春と修羅」を読みたい。

 あの詩は名作だけど、えらく長くて、読むのに力がいる。

 春風は自然の暴威で、詩のことばも暴威で、春は冬と変わらず修羅そのもので、私はくるくると振り回される。春風とことばに揉まれていたい。詩は凶器だ。

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