建酉月
第85話 正しい夏
8月になってしまった。
一年のうちで一番苦手な月である。
暑さのせいで身体は常にだるいし、食欲もないし、かといってクーラーをつけっぱなしにしていると今度は頭痛がしてくるし、身体も冷えてやはり具合が悪くなる。
せめてもの抵抗で、山や海に出かけたり、BBQや花火に出かけたり、たいして飲めないくせにビアホールへ行ってみたり、とうもろこしや枝豆を茹でて食べたりして、いかにも「正しい夏」を満喫してみたりするが、自分でも無理してるなあ……と苦笑いしきり。
大きな入道雲とか、激しい夕立とか、陽光の下で咲き誇る向日葵とか、涼やかに鳴る風鈴、喧しい蝉の声、夏祭りの太鼓の音、浴衣で歩く人々など、夏の風物詩と呼ばれるものをこよなく愛しているのに、その中に身を置いてさえ、一向に馴染まない肌に落胆する。
日本で生まれ育ったのに、毎年毎年本当に諦めが悪い。憧れながらも辟易している。
夏をあるがままに、素直な諦めを以って愛せる人が羨ましい。
……とセンチメンタルに書いてみたものの、簡潔にまとめると
8月、お前の暑気と湿度を私は許さない。以上。
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