第241話 「劒を持つ者」




 そろそろ新年読書始めをしなくては……と思うのだが、疲れが溜まっているようで小説を読む気になれない。

 書くのにも力がいる。読むのにも力がいる。力というよりは、勢いか。

 長文を読むのが億劫な時は、詩にかぎる。


 というわけで、今年一番最初に読んだのは、八木重吉の「つるぎを持つ者」



 ***


 劒を持つ者


 つるぎを もつものが ゐる、

 とつぜん、わたしは わたしのまわりに

 そのものを するどく 感ずる


 つるぎは しづかであり

 つるぎを もつ人は しづかである

 すべて ほのほのごとく しづかである


 やるか!?

 なんどき 斬りこんでくるかわからぬのだ


 ***


 炎のごとく静かながら、いつ何時斬りこんでくるのかわからぬもの。

 人、或いは天災、事故、病気……はたまた人を生かしもし、殺しもする言葉そのものだろうか?


 だが、作者は劒にも劒を持つ者にも屈する気はない。

 戦うのだ。戦う気満々なのだ。それが覚悟となって文面から滲み出ている。

 私は「やるか!?」のところが特に好きである。

 やるのである。やるしかないのである。

 るのか、殴るのか、牽制するのか、逃げるのかはわからない。

 とにかく抗うのだ。がむしゃらに戦うのだ。この世の、理不尽かつ暴虐なもの全てに。

 何よりはなから諦めていない。そこがよい。

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