第242話 この世で一番怖いのは生きた人間の嫉妬
私は常々、この世で一番怖いものは心霊現象でも呪いでも天災でもなく「生きた人間」だと思っている。
中でも、最も複雑で厄介で化け物じみているのは「嫉妬」という感情だと思っている。
その嫉妬は、決して自分も無関係ではない。
何か鼻につく。どうにもアイツは気に食わない。
努力してみても、好きになれない相手がいる。
正直、嫌いである。関わりたくないし、顔も見たくない。
そういう人物がいたとして、
① 当人が反社会的もしくは、人道・倫理観が欠落した言動をしており、改める気配を見せない
② 当人の周囲に①のような悪辣な人物(家族も含む)がいて、全く信用できない
③ 当人が甚だ非常識であり、近くにいることで自分も同じ人間だと思われたくない
④ 擁護できないほど当人の性格が悪くて付き合いたくない
でないのならば、それは嫉妬である。
当人の容姿、性格、才能、環境、職業、社会的地位、人脈、家族や友人、持ち物(不動産、お金など)、成功や名誉をひたすら嫉んでいるだけなのである。
もう一度書く。それは嫉妬である。嫉妬以外の何物でもない。
当人のせいではない。自分が勝手極まりなく嫉妬し、もやもやしているだけの話なのだ。
憧憬、羨望と書けば聞こえはいい。
しかし、一歩間違えばどろどろとした醜い嫉妬の沼が口を開けて待ち構えている。
うっかりすると沼に呑みこまれてしまう。
何度でも書く。それは嫉妬である。
そのことから、目を背けてはいけない。
嫉妬なのである。自分は醜い。醜い感情を持っている。
持ってはいるが、相手に嫉妬していることを認めてしまえば心は楽になる。
「あ、私はあの人のことが羨ましいんだ。妬ましいんだ。自分がそうなれないことを知っているからこそ、どうしようもなく辛くて苦しいんだ。八つ当たりして、ヤケクソじみて、他人や社会のせいにしたくなるんだ」と。
嫉妬をつっかえつっかえながらもなんとか飲みくだしてしまえば、外部に発露せずに消化できたことに、誰も傷つけずに済んだことに深く安堵する。
良かった。私は、自分も他人も誰も貶めずに済んだ……。これで良かったのだ。
嫉妬は苦しいが、いずれは静まる。
胸や喉に熱い塊が詰まって苦しいのはいっときだけだから、なんとか乗り越えたいと思う。
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