第32話 野外で飲むビールをとんでもなく美味しくする方法




 日毎に蒸し暑くなり、いよいよ夏らしくなってきた。

 暑いととにかく喉が渇く。何か冷たいものを飲んで爽快になりたい。

 だったらビール! 夏といえばビール! という人も多いのではないだろうか。

 仕事帰りにビアホールに繰り出したり、海山といった行楽地で飲んだり、とビール好きには楽しい季節だろう。

 ここで、先日教えてもらい、実践して目から鱗だった美味しいビールの飲み方を紹介したい。本当にびっくりしたので、是非とも広めねばと思った次第である。


 最初に言っておくと、私は元々ビールは好きではない。

 余程のことがない限り、自発的に飲むこともない。お土産でもらうと飲むが、自分用に買ったことはないし、家にも置いていない。

 居酒屋へ行っても皆が「とりあえずビール」な中、一人だけカシスオレンジを頼んだりする異端者である。宴会で瓶ビールが回ってくると、少しだけもらって一口二口程度飲む。ビールの祭典、オクトーバーフェストへ行ってもビールより白ワインを飲んでいることが多い。ドイツ人から見ても異端者である。

 おそらくビール以外に飲むものがない状況を除いて飲むことはない。


 ……はずだったのだが。

 とある野外で飲んだビールがあまりにも美味しすぎて、ちょっと開眼しそうになっている。


 その方法を教えてくれたのは、都内で幾つも飲食店を経営している食の達人・S氏。

 S氏いわく、「BBQなどの野外で飲むビールがえてして不味いのはぬるいからと、飲み方が間違っているから」「ぬるいのを我慢して飲むのもよくない。ぬるいビールが肉や野菜など他の食材をも不味くする」ということだった。

 彼が勧める、冷やしたビールを一層美味しく飲む方法は以下の通り。


 ① クーラーボックスに氷を大量に入れ、冷蔵庫で冷やしておいた缶ビールを沈めて目的地へ持っていく

 ② 現地へ到着すると、まずプラカップに氷を入れてぐるぐる回して冷やす。冷えたあとのカップの氷は捨てる

 ③ キンキンに冷えた缶ビールを氷に沈めたまま何度もぐるぐる回す。これは急速冷蔵の方法で、さらにビールが冷える

 ④ 冷えたプラカップにビールを注ぐのだが、一人で1缶飲むのではなく、必ず3人で1缶を分け合って飲む。外気に晒されるとビールはすぐにぬるくなる。それでは何の意味もない。一番美味しい状態で飲むには、3人で分けて飲むのが一番


 私たちはS氏の指導のもと、野外でのBBQで①~④を徹底して繰り返した。

 半信半疑で飲んでみて私は驚いた。あまりにもビールが美味しかったからである。

 キンキンどころかギンギンギンに冷えたビールはいわばフローズン一歩手前で、実にのど越し爽やか。つるつると吸い込まれて、あまり苦みを感じない。しかし、ちゃんと麦の味がする。下手な店で飲むよりも余程美味しかった。

 ビール自体は、コンビニでもスーパーでもどこにでも売っている缶ビールである。

 なのにどうしてここまで違うのか。野外の陽気や外で飲む解放感を差し引いても、これは神がかった美味さ……!


 結局、ソフトドリンクがあったにも関わらず、私は他の2人と3缶飲んでしまった。

 つまり一人で1缶飲んだことになる。こんなことは人生初だった。

 ごめん、今までビールのことなめてたよ。ちょっと人生損してたかも……。



 というわけで、ビール好きは勿論のこと、ビールが苦手な人も騙されたと思って「激ウマ野外ビールへの道」を実践してみて欲しい。世界が変わって見えるかも!?


 あ、①~④のどの手順もすっとばしてはだめ。手抜きは禁物。




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