第128話 長雨




 台風がひっきりなしに来るからというのもあるが、また梅雨に入ったのかと思うほど連日雨である。

 夕方からは大分冷えるようになり、月を見ながらの夜の散歩も、ふと頬に手を当ててその冷たさに気づいた瞬間にポツリとくることがあって、やがてサアサアと柔らかに降り始める。夏に比べてやさしい、だが浴びれば容赦なく冷たい。


 そういえば、長く降りつづく雨のことを長雨といい、長雨は淫雨いんういん)とも書く。

 この場合の淫は「淫ら」「猥褻」「性欲」の方ではなく、「度を過ごして熱中する。ふける」の意味だろう。

 雨が降ることにふけっている。字面からして、どこか艶やかな感じがして好きだ。


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