第52話 初めてインターネット上で詐欺被害に遭う②




 イベント当日になった。

 私は代行をするため、都内某所のイベント会場へと足を運んだ。

 抽選が始まる10分前くらいに着いたが、既に100~150名ほどの人が集まっていた。

 自然と列ができていたので並んだが、中国語を話すグループが複数おり、若い女性が引き連れた男性数名に抽選の指示をしているのも聞こえてきた。

 早い番号を引くための人海戦術なのだろうが、以前アップルショップであったiphoneの買い占めや転売騒ぎを思い出した。

 思っていた以上にグッズは争奪戦になりそうだったし、辺りはギスギスした空気が漂っていた。


 時間になるとスタッフが出て来て抽選箱から抽選券を引いた。

 私は運よく10番以内の番号を引いた。並んでいた全員が抽選券を引くとスタッフが番号順に並ばせ始めた。

 皆、粛々と並んだが自分の前に早い番号を持った人が入ってくると露骨に舌打ちをしたり、「後から来た奴いつまで入れる気だよ」とこれみよがしに大声で言う人もいて、少し嫌な気分になった。最も、来た人全員が純粋なファンとも思えなかったが……。

 とはいってもスタッフが沢山いたのと、レジで抽選券を渡さないと買えない仕組みなので、割りこみなどの騒ぎやトラブルはなかった。


 時間になると物販会場の中へ列を入れ、販売が始まった。

 物販の流れはとてもスムーズだった。

 A賞とB賞は、1番・2番の券を引いた人が買ったので即完売した。

 私はC賞とD賞を一つずつ買い、すぐに会場を後にした。会場に着いてから離脱するまで1時間もかからなかった。ここまでは特に何もなく順調だった。


 次の日の夜、Gに写真付きで代行の報告をした。

 当方の銀行口座や住所氏名等も連絡した。送料を合わせて代金を口座に振り込んでもらえれば、すぐにグッズを発送するつもりだった。

 しかし報告の後、Gから連絡はこなかった。

 一週間後、メール事故かもしれないと思い、もう一度送ったが返事がない。

 また数日して再度入金を催促すると、今度は3行メールで「週末までには必ず振り込みます」と返事が来た。しかし、相変わらず個人情報の記載がない。

 私はここで初めて「怪しいな」と思った。

 こちらの個人情報を渡したのは軽率だったかもしれない。

 何せこの時点でGに関してわかることといったら、ユーザネームとフリーメールのアドレスのみである。他には何の連絡手段もない。

 とりあえず週末まで待ってみたが、振り込みはなかった。

 さらに催促メールを送ったが返事はなかった。

 ああ……これはやられたかもしれないと感じた。


 イベントから一ケ月ほどが経過した時点で、私は交流掲示板にGを名指しして連絡するように呼びかけた。勿論、元の代行依頼の書き込みをリンクさせている。

 結論から言うと、名指しして呼びかけてもGからの連絡はなかった。


 ところが、その名指しの書き込みをした夜から朝にかけて、掲示板のユーザ複数人から私へメールが来たのである。

 内容はG、またはGと思われる別アカウント、別名義のユーザに関することだった。




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