第183話 やっぱり紙の本が好き




 自分はどうもアナログな人間のようで、重くてかさばって値段も割高でも、やっぱり紙の本が好きだ。

 そのぎっしりとした紙の厚さと重みに安心する。

 一冊読み終わると、これだけの文字数を読んだのだという達成感、満足感がある。


 SFも好きだけど、SFも紙の本で読みたい。

 最先端の科学技術も人工知能にも興味深々。

 でも、願わくば、これから進む未来の話も紙で読みたい。


 自分が死ぬ頃には、電子化がどんどん進んで、紙の本が珍重される時代になっているかもしれない。

 最初はなんのかんのと抵抗しても、人類は新たな環境とシステムに馴染んでいくだろうし、そうであったからこそ、これまで退化も滅亡もせず生き延びることができたのだ。

 適応できない人間は自然に淘汰されるのだろう。

 紙の書物というものに関しては、私はきっと確実に置いていかれる側だ。


 そうなったら、悲しいというよりかは寂しいかな。うん、ちょっと寂しい。

 誰もがいずれは過去の遺物になると知りつつも、先進国の文明人を気取っていたいものだし、少数派に甘んじるには勇気がいるから。

 ぶらぶらと神保町の古本屋街を歩きながら、そうしんみりと思った。

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