第298話 地球の七つの妹




 最近NASAが発表した、39光年先の宇宙にあるという恒星「トラピスト1」。

 その周囲には地球によく似た惑星7つが回っているという。

 これらの少なくとも3つには、水が液体の状態で存在し、生命が存在する可能性があるという。

 いや~ここまで来たかというかんじ。

 私が生きている間になんとか「地球外生命発見」くらいまで行って、その吉報を聞いて人類に生まれた喜びを噛みしめながら息絶えたいものだけど、我々以上の科学文明を持つ知的生命体の方からコンタクトがない限りは無理かなとも思ったりする。


 宇宙はあまりにも広い。

 地球から見た星との距離は100光年だの1400光年だのという数字がポンポン出てくるので、39光年なら近いのでは、もしや人類は到達できるのでは? などと錯覚してしまうがとんでもない。

 光は1秒で、地球を約7.5周する。光の速度は秒速約30万km。

 1光年は60×60×24×365×30万km=約9兆4600億kmである。

 この時点でなんのこっちゃ? なのに、これの39倍なので約368兆6400億km先ということになる。もうどこやねん、それ。

 仮に惑星探査機に人が乗りこめるようになったとして、現在の技術だと1光年進むのに4300年かかるらしい。1光年はほぼ人類が知性を得てからの歴史そのものなのだ。

 これが単純計算で39倍として16万7700年……。


 16万7700年後も太陽の寿命は尽きてないので、おそらく地球自体は存在するだろうけど、そのまえに資源が枯渇して人類は滅びているんじゃなかろうかと思う。

 光を越える速さで飛ぶワープ技術でもない限り、トラピスト1に辿りつくのは不可能なのだ。


 現地想像図みたいなのを見たら、この七つの惑星は間隔が狭いらしく、陸地や海面からは月なんか目じゃないくらいにきょうだい星が大きく見えるらしい。

 視界いっぱいに複数の惑星が入り乱れる空。やはり青かったりするんだろうか。

 星が点じゃない天空。ああ、いいなあ……。見てみたいなぁ。


 人間の肉体ではどう足掻いても無理だけど、私の意識、というか私の意識を内包した人類の記憶数十億人おまとめパックみたいなのを作って記号化して、AIに組み込む技術ができないだろうか。

 さらに宇宙で半永久的にAIを動かせる技術ができれば、何十万年という途方もない時の果てに知的生命体のいる惑星に着陸できるかもしれない。

 もはや自分は人類ではなく、生物でもなく、かつて太陽系に存在した知的生命体の残骸、残りカス、みたいな代物になっているだろうけど、第二の太陽と地球を拝めるなら喜んで宇宙へ飛び出したい……。


 ほんと叶わない夢。夢物語。SF。宇宙は空と、己の妄想の中にのみありけり。

 でも何の拍子か、人類に想像力というヘンテコな知性がついたおかげで、我々は宇宙に、まだ見ぬ我々を期待できるまでになった。

 考えれば切ないことばかりだけど、やっぱり嬉しいね。


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