第204話 商業ギルドでの会合
現在、モリブデンで店を構えるために最初に登録したままで、年会費が金貨50枚の一般的は店を持つ会員としての登録のままだ。
普通、他の都市に、特に王都に支店也本店移動也する場合には、より上位の登録に変えていくものらしく、今のままだとギルド内での役職にありつけないとか。
別に役職にありつくつもりなど無いので、そのままでいいと思うのだが、そうなると俺の爵位が邪魔になるらしい。
邪魔というか、そもそも貴族が商業ギルドの会員なんぞにはならない。
貴族は商人を利用はすれども、自分から直接商売などしないものらしい。
稀に、貴族成りと言って、大店の店主が功績により爵位を与えられる場合などがあるが、その場合などはギルドでの功績も最高なくらいまでに高められているらしく、ギルド内で地位も最高会員として評議員などを務めているものだと教えてもらった。
そもそも、貴族成りするのなんか領地内で一番の商人くらいだそうだ。
それでも、貴族になれるのはごくごく少数で、ほとんどが貴族成りを目指そうにも、商業ギルド内での地位で我慢している。
俺の場合では、そのどちらでもなく、確かに貴族成りではあるが、状況が違いすぎる。
そもそも貴族成りしている商人が領地を持つことは無い。
爵位が男爵まで成り上がる者もいるには居るらしいが、ほぼ全員が法衣貴族で、数代の代替わりをしていくうちで領地を拝領する者も出るには出るが、その場合でも商人は男爵本人ではなく、一族の別の者が商売をしている。
そう、俺があまりに異常なのだとギルド長がこぼしていた。
異常とは、あまりに失礼だと思ったのだが、隣で聞いているサリーさんはしきりに頷いているのが気に入らない。
「で、このままギルドに登録してくださるので」
うん、言い回しが前に会った時とは完全に変わり、俺に対しても敬語で話しかけてくる。
なんか調子が狂うが、これも叙爵の影響なのだろう。
「ええ、このままにしておきたく思っております」
「ならば、ランクを上げますね」
「いえ、そのままでという訳には……」
「レイ様。
ここは素直に、応じましょう」
サリーさんはギルド長の申し出に応じるつもりのようだ。
俺が貴族になっているので、その体面がどうとか、本当に面倒くさい。
そんなことを話していると、ギルドにペンネさんが訪ねて来たらしく、ギルド長の部屋に通された。
良かった、いっぺんに厄介事が片付きそうだ。
「レイ様。
こちらが、レイ様をお訪ねになりました諸侯連合のペンネ様です」
「ご無沙汰しております、レイ様」
「ええ、こちらこそご無沙汰して申し訳ありませんでした。
ですが、こんな大げさに訪ねなくとも、店の方に来ていただけたら良かったのに」
「ええ、一度お店の方にもお訪ねしましたが、レイ様は男爵になられたとか。
失礼があったらと思い……」
「あ、そのことですか。
それこそペンネ様は気にする必要がありませんよ」
「それは?」
俺は、今回の騒動の発端である俺の叙爵についてペンネさんだけでなく商業ギルド長にも説明を始めた。
「という訳で、もとはと言えばペンネさんが病院経営を始めようと提案してくださったのが原因ですから」
「そういうことでしたか。
これは……なんと言えばいいのでしょうね。
普通ならば貴族成りすることになった訳ですから、私のおかげと思うところなのでしょうが、レイ様はそのご様子からしてご迷惑をおかけしたようで」
俺とペンネさんとの話に出てくる病院のついて商業ギルドには伝えていなかったこともあり、ギルド長が食いついてきた。
「レイ様。
病院というのはお聞きしたことがございませんが」
「あまり大げさにしていなかったもので」
そこから俺は、ギルド長にモリブデンでの病院について説明を始めた。
現在、ほとんど営業らしいことはしておらず、ごくたまに紹介状を持ったものから生き腐れ病の治療をしていたくらいだった。
それでも、金持ちの治療だったこともあり法外な治療費を頂いているので、そこそこの儲けは出している。
そのうち、出資者に対して配当を出さないといけないだろうが、正直俺の財布は現在かなり軽い。
これも領地経営に対してかなり持ち出しているためなのだが、本当に厄介でしかない。
許されるようならば、このまま国に返還でもしてしまおうかとも考えなくもない。
まあ、かなりの持ち出しだから、それなりのお金を頂かないと赤字決定なのだが、考えるだけでも無駄だな。
お姉さん方は絶対にないと断言していたことだし、何よりあの宰相がな~、あの人かなりの曲者に見えたし、無理だと俺も思う。
しかし、このままあそこを開発していても良いものか、正直疑問に思えてきた。
このままだと赤字決定なので、開発しないと領地は持たないが、取り上げられる前提で考えるとあまり持ち出しも考えないとまずいかな。
それよりもペンネさんが俺を訪ねてきたことが気になるので、直接聞いてみた。
「それよりも、ペンネさんは俺に緊急で用事があったと店のものから聞いたのですが」
「ええ、各地で広まる噂について、レイ様からお話をお聞きしたかったものですから」
「噂ですか」
ペンネさんが言うには、商業連合の港町や、職連合の一部の港でシーボーギウムからの船がモリブデンに入れないとか言っていた。
「ギルド長。
その話は本当なのですか」
「あ、いや、私は領主様や港の関係者からは聞いていない。
確かに一部でそんなうわさ話があることは知っているが、その程度のうわさ話など、この町ではいくらでもあることだしな。
そもそも港については商業ギルドの扱いではないしな」
「では、どこの扱いなのでしょうか」
「政に直結するので、ご領主様がご自身で扱われている。
だが、港を使った荷止めなど聞いたことが無い。
そもそも道でもないので荷止めなどできないがな」
「ええ、私もそう思いますが、モリブデンが荷止めをするようでしたら、それこそ私どもの商売のチャンスですし、できるだけ早急に確認を取りたかったのです」
そこからペンネさんやギルド長からお話を聞いて感じたのが、やはり今抱えている派閥争いに関してだ。
どうも、隣の領地の行っている荷止めが俺たちには一切効果が出ていないことに業を煮やした侯爵が、モリブデンに圧力をかけているとか。
それと同時にモリブデンの港に噂を広めているが、これもあまり効果は出ていない。
そもそも、モリブデンとの直接の取引はほとんど行っていない。
なので、船止めと言えばいいのか、モリブデンとの行き来ができなくとも、現状では俺たちは一切困らない。
現在、モリブデンを経由しているらしいが、取引については一切を商業連合の大店であったフェデリーニさんに任せきりだ。
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