第47話 母娘の奴隷

 

「こういうのもあるのですか」

「ああ、いわゆる難ありだな」

「難ありですか」

「ああ、この場合、パンフレットによると、親娘を一緒に買ってくれと言っている。

 夜の相手も可能だそうだが、母親のみだそうだから娼婦には無理そうだ。

 仕事も一緒にしてくれという話だからな。

 しかも、娘の方はあっちの了解はされていないから、どう考えても直ぐには娼婦として出せないだろう。

 二人とも結構いい線言っているに、もったいないけどうちは買わないよ」


 確かに母親はアラサーですこぶる美人という訳では無いが、十分に美人の範疇に入るかなり魅力的な女性だ。

 娘も年のころは15~6歳で、スタイルはダーナといいとこ勝負だ。

 フィットチーネさんでないが娼婦としたら、絶対に二人とも人気が出るだろうと思われる。


 俺も、店に作業員として奴隷が欲しいと考えていたので、どうかなとその二人を見たらダーナの時と同様に情報が目に入ってきた。


 二人とも奴隷になる前は商人の家にいた。

 そこそこの商人の妻と、その娘で、二人ともしっかり商人としての教育がなされている。


 あれ、これって俺向きかも。

 よくよく眺めると、確かにフィットチーネさんの云う通り母親の方は褥を共にするのを了解している。

 では娘はと言うと、母親と一緒ならOKだと。

 しかも、処女。

 俺は処女厨ではないが、親子丼には非常に興味があり、なおかつ店番から作業までも任せられるとあってはいくら高くとも欲しい人材だ。


「フィットチーネさん。

 申し訳ありませんが、あの二人を競り落としてもらえませんか」

「え、レイさんが買うので」

「ええ、店で使えそうなんです。

 最近、つまみのポテトチップスの売れ行きが良すぎて、人が欲しいと考えていましたから、一遍に二人も手に入るのなら、私にとって、なにも問題になりませんよ。

 しかも、あっちも大丈夫だというのなら申し分なしです」

「分かりました。

 確かに忙しそうですからね。

 頑張ってみますが、予算はどれくらいですか」

「どれくらいかは見当がつきませんから、無理そうなら途中で止めます。

 ですので、私が止めるまで競ってみてください」


 結局二人で金貨300枚で落とせた。

 フィットチーネさんは、ここまで競り価格が上がるとは思ってもみなかったようだが、俺たちと競っていた奴隷商は、なんでもかなり評判のよろしくないところだとか。

 条件である二人一緒というのも反故にしてバラバラにして売り捌こうとしていたのではとフィットチーネさんは言っていた。

 二人とも、あの器量なんだし、難ありで無ければ500枚くらいまでは言っていたかもしれないとも教えてくれた。

 これって、ダーナの時と一緒だな。


 今回は諸々の費用を入れても金貨で350枚、日本円で3500万円くらいだから中古マンションが買える金額になるが、俺の金銭感覚がずれて来たのか、それを一括でポンとフィットチーネさん支払った。


 オークションが終わり、俺たちは一度ドースン奴隷商に向かう。

 今回オークションでフィットチーネさんが競り落とした奴隷15名と俺の依頼で競り落とした二人を加え総勢17名の一時的な管理をお願いしているためだ。


 王都の奴隷商はこういう場合に何ら問題にはならないが、王都以外からオークションに参加する奴隷商は、競り落とした奴隷の扱いに困ることになる。

 ほとんどの奴隷商は、檻の付いた馬車を所有しており、その中に買った奴隷を入れて、自分の町まで帰っていくが、オークションは昼過ぎから遅いときで夕方までかかるので、大抵の場合、その日は王都で一泊する。


 当然、買い取った奴隷たちの扱いはオークションに既定の管理料を支払い預かってもらうか、檻の馬車に放り込んで、そのままだ。


 だが、フィットチーネさんは国内でも奴隷の扱いが丁寧な奴隷商として有名なことでもあり、以前は王都にあった兄弟子の経営していた奴隷商で、移動のための準備をしていた。


 ここで言う準備とは、大抵の場合オークションが済んだばかりの奴隷の状態はあまり良くない。

 十分な食事を与えられていなかったり、衛生状態が悪かったりしている。

 そんな状態で運んでも、かなりの高確率で、地元に戻る前に病気などのトラブルに遭う。

 喩え無事にトラブルに遭わずに拠点とする町まで戻れても、奴隷たちの心がすさんでいれば、奴隷の価値も上がらない。


 だが、フィットチーネさんやドースンさんのような、それなりに規模と知名度のある奴隷商は、その辺りの管理に余念がない。

 元々状態の良くない奴隷を安く仕入れては、十分にケアをして、価値を爆上げして売るようなビジネスモデルを持っている。

 これはフィットチーネさんの師匠の商人から受け継いだ教えなのだそうだ。

 ドースンさんもフィットチーネさんの兄弟子から奴隷商を引き継いだだけあって、その考えに賛同しているようだ。


 なので、以前から王都でオークションに参加するときにはフィットチーネさんはドースン奴隷商に協力してもらっている。

 特に今回は買い取った奴隷の数が多く、そのケアは大変だ。


 数日は王都にとどまっての出発になるそうだ。


 前に俺がドースンさんに頼んでダーナを買った時にはオークション会場にて、引き取りの手続きをした後、そのままドースンさんの馬車にダーナも載せて、ドースンさんの店に連れて行ったが、今回は人数が多いこともあり、引き取りの手続きは前回同様にオークション会場で済ませているようだが、まあ、当たり前のことだが、その後が違った。


 商業ギルドのオークション担当者にドースン奴隷商までの移送を依頼して、この場を後にする。


 俺と、フィットチーネさん、それに会場で落ち合ったドースンさんは一緒にドースンさんの店まで移動した。

 その際、フィットチーネさんの馬車には俺の他、ナーシャやダーナと言った俺の奴隷たちと、今回購入した二人も一緒に乗せてもらった。

 フィットチーネさんやサリーさんはドースンさんの強い、いや、あれは強引と言った方が良いだろうな、その勧めによりドースンさんの馬車で移動している。


 後で、バトラーさんに聞いたら、馬車の中は異様だったそうだ。

 異常に興奮していることは端から見ても分かるドースンさんが、しきりにはしゃいでいるが、それでも直接サリーさんとは話さない。

 どうも、あこがれの人を目の前にして、中学生じゃあるまいしとは思うが、直接話すことができずに、フィットチーネさんにモリブデンの娼館の話をしていたそうだ。

 ちょっと見てみたかった気もするが、めんどくさそうなので、同乗しなくて助かった気持ちもある。

 絶対に俺が乗り込んだら、面倒ごとになる。


 それよりも、俺の方もちょっと気まずい。

 何せ、夜のお供も大丈夫というよりそのつもりで買ったことは見え見えの状態での初顔合わせだ。

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