第四章 自分のお店
第46話 オークション再び
決して、あの時にフィットチーネさん達を助けるつもりなど全く無かった事なんかはとっくに忘れ、良いように判断できるこの性格だから、長らくブラック職場で生きて来られたのだろう。
最後には過労死したが、それでも、そんな性格もある意味運の良さともいえるかも。
フィットチーネさんは無理をせずに10日かけて王都に向かった。
道中、あの時のような盗賊に襲われることもなく無事に王都に着いた。
王都に着くと、その足で王都の商業ギルドに向かい、予め予約していたオークション参加の手続きを取った後に、王都の定宿に向かう。
俺たちは一度商業ギルドで解散して、一緒に護衛をしていた暁さんとはここで別れる。
俺たちも、いつもの宿に向かおうとしたら、サリーさんに止められた。
「レイさん。
今日は私と同じ部屋ですよ」
「え、そ、それは……」
「大丈夫ですよ。
私が御主人さまにお願いしていたの。
今まで娼館で頑張ってきたご褒美を強請ったの。
綺麗な部屋よ。
私も王都で娼婦をしていた時に、公爵様とここでお仕事したことがあるから。
お付きのナーシャさんたちの部屋もあるから気にしないで」
「で、ですから……どうして……ですか?」
「だって~、レイさんたら、娼館がオープンしてから一回も来て下さらないじゃないですか。
私たちみんな待っているのに」
「ですから、前にも言いましたように、無理だって。
直ぐには絶対に無理ですよ。
やっと商売が軌道に乗ったのもお姉さん方のおかげでもあるのに、遊びになんか行けませんよ。
金貨50枚でしょ。
あそこの最低の金貨2枚だって難しいのに」
「それにしては奴隷さんを買って、毎日楽しんでいるっていうじゃないですか」
え、ダーナの件を何故知っている。
「世の中って狭いのよ。
だから私の方からご主人様にお願いしたの。
ご主人様は、日ごろお世話になっているし、しっかりおもてなしをしなさいって」
結局その夜はお姉さんにお世話になりました。
しかも、途中で機嫌の悪くなったダーナが混じり、最後にはナーシャまで混じりました。
流石にナーシャのはいつもの尻尾攻撃でどうにか撃退はできましたが、それもだんだん効き目が悪くなってきているような。
いつまで、持つかちょっと心配する夜でした。
翌日は昼過ぎに集合とのことで、午前中も仲良く三人でした後に、宿の風呂に入りさっぱりしてからフィットチーネさんと一緒にオークション会場に入る。
今回はフィットチーネさんの付き添いという形で入りましたが、後で聞いたら、俺にも参加できる権利があったとか。
商業ギルドで、銀証以上の会員ならば所定の手続きをするだけで参加もできたようです。
でも、奴隷を買う場合にはどうしても奴隷商の手を借りないと手続きができないので、奴隷を買う場合は今回のように奴隷商と一緒に来るのが良いそうだ。
前回も王都の奴隷商のドースンさんとご一緒させていただいたので、とても良い買い物もできたし、正直今回も期待していた。
何せ、今回はかなり多くの一般奴隷が出品されるという話だそうだ。
入り口で貰ったパンフレットには、この王国と小競り合いをしているお隣のゴールタニア帝国から村人多数を連れ帰ることに成功したとかで、戦争奴隷の内、実際には戦争に参加していない村人を奴隷として持ち帰ってきたようで、こういう場合に王国としては戦費調達の意味もあるので、直ぐにオークションで売られるという話だそうだ。
なので、このオークション会場は前回とは格段に違い、王都だけでなく王国全土から奴隷商が多数詰めかけてきており、最初の時と印象が全く違う。
実際にオークションが始まっても今回は奴隷ばかりなので、ほとんど奴隷商しかこの会場には来ていないそうだが、その奴隷商がしきりに競りに参加しているから、会場全体がかなり興奮気味だ。
初めは身代金の期待できない戦士や兵士の奴隷から始まって、村人の奴隷になっていく。
奴隷商によって、求める奴隷も違い、戦士や兵士の様な戦闘向きの奴隷のオークションにかなり多くの奴隷商が参加してる。
顧客の多くに、冒険者や商人がおり、その者たちの護衛用としてこういった戦闘向きの奴隷はかなり人気だそうだ。
女性兵士などはそれこそ目玉商品として高値で取引されるそうだが、それはあちらにも期待してのことのようだ。
だが今回はフィットチーネさんの目的が自身の娼館の娼婦の追加と、同業の娼館からの注文でもある娼婦の仕入れのために戦闘向き奴隷のオークションには参加していない。
かなり多くの奴隷がオークションにかけられるために、目的の奴隷を確保した奴隷商からどんどん会場を後にしていく。
村人の女性になる頃には最初の半分くらいの奴隷商しか残っていない。
俺のような奴隷の居ない世界から来た人間には女性奴隷すなわち性奴隷という思いしかなく、皆そんな目で見てしまうが、実際にはそんな目的で奴隷を買う人は少数派なのだそうだ。
よくよく考えれば当たり前の話で、奴隷はいわば生産財だ。
稼げない奴隷はお荷物以外になく、それしかできないような女性奴隷は案外安く仕入れられ、しかもほとんどが娼婦として買われる。
なので、客層としてもよほどの金持ちか一部貴族を除くと、ほとんどが娼館しかない、そこにルートを持たない奴隷商はまず手を出さない。
どんどんオークションも進んでおり、フィットチーネさんもサリーさんの助言で何人もの女性を競り落としている。
オークションが進むと、色々と問題の多い奴隷が増えて来る。
前に来た時も最後に犯罪奴隷であったダーナだったくらいだから、ここでのオークションは目玉は初めの方に出品されるようだ。
その方が競りの価格も上がりやすく、結果的にはオークションの運営側も儲かるらしい。
理屈としては目玉が出るまで、様子見されて参加者が少なくなるよりも、初めの方に目玉を出して高値で取引してもらった方が得だと考えているのだそうだ。
先に目玉を出すと、それが終わると客がかえってオークションがしらけないかと、俺なんかは心配するが、今残っている奴隷商を見ていると、それなりに残るので、案外こっちの方が良いのかもしれない。
まあ俺には関係ないが。
結局、俺はよくわからずに参加できず最後を迎えた。
最後はいわゆる厄介案件のようで、親娘の奴隷が一緒に出て来た。
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