第108話 ギルドとの喧嘩
「わかりました、今受けている仕事は続けますが、今後は一切の注文を受けません」
「それは困ります。
モリブデンでは、あれのうわさが広がってきており、今でもギルドに問い合わせが入るのです」
「それはギルドの問題でしょ。
私の方に問い合わせが来たら、今までの経緯をお話しして、ギルドの不誠実を理由に注文を受けませんから、そのおつもりで」
俺がこう言い切ると、今度はギルド側が完全にパニックにでも陥ったかのように、あの主任は『月夜の晩だけだと思うなよ』とまで脅してくる始末だ。
前に彼の顔をつぶしたようなことをしたものだから、相当根に持っているようだが、あれは明らかに俺を利用したお前らが悪い。
しかし、本当に王都にでも移動を考えるか。
娼館やフィットチーネさんには不義理となるが、酒の卸とおつまみ関連だけでも残して引っ越しの検討に入ろう。
とりあえずその日はギルドを後にして、フィットチーネさんを訪ねた。
ことの経緯を説明するためだ。
最悪本拠地を王都に移すことまで正直に話した。
フィットチーネさんは驚くとともに、お怒りの様子だ。
この件は私に任せてほしいとまで言ってきたので、俺はとりあえずフィットチーネさんにこの件を預けた。
普通に注文をくれればこちらとしても邪険にしなかったのに、だまし討ちのようなことまでして、主任が懇意にしているところの注文を、しかもあり得ない量まで、それも俺のいないときに、これって絶対に無いでしょ。
奴隷しかいないのに、ほとんどだまし討ちで無理やり注文をしてくるのなんて商人としてあるまじき行為だ。
まるで俺の以前勤めていたような会社のやり口だ。
俺はその場にいる全員に対して、新規のお客様からの注文は今後一切受けないことを命じておいた。
この店には奴隷しかいないので、俺からの命令になれば俺が不在でも絶対に受けられない。
しかも、ポテトチップスをはじめ、食品についてもすべて既存のお客様以外に、店に買い物に来ても、商業ギルドのだまし討ちにあったために受けられない旨を丁寧に説明して断ることを確認しておいた。
さっそく翌日に唐揚げのたれについて、初めて買いに来た客があったが、俺がその場で丁寧に先の話をしてから断った。
文句なら商業ギルドに言ってくれと。
こちらとしては、たいして恩恵もないのにしっかりと会費は取られているのだ。
恩恵どころか詐欺被害のようなものにあったようなものだ。
俺も手伝いながら、とりあえず今ある注文だけでも片付けようとしていると、店にフィットチーネさんがお客様を連れてやってきた。
少々ややこしい話になりそうだったので、風呂場の二階にある食堂スペースにみんなを案内しておいた。
フィットチーネさんの連れてきたお客様は、開口一番に頭を下げて詫びてきた。
「此度の件、聞きました。
明らかにわれらギルド側に責があります。
レイ様のところの皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ありません」
フィットチーネさんが言うには、初老のお客様はこの町の商業ギルドのギルド長とのことだ。
例の主任からの注文については、在庫及び仕掛品を除き、注文を破棄して構わないとのことだったので、俺はその場で注文書を破り、ギルド長に渡した。
その上で、後日になるが金銭で賠償金まで払うことを約束して、その日は終わった。
あ、例の主任の処遇については、現在調査中のため謹慎だけにとどめているが、状況がはっきりした際には、俺の納得ができるような内容での処分を下すとまで約束してくれた。
なので、今俺たちがしているような新規の客への対応を控えてほしいとのことだ。
相当あっちこっちから商業ギルドにクレームがきているらしい。
フィットチーネさん曰く、高級娼館が俺との取引が切れることを恐れてすぐに商業ギルドに圧力をかけているのだとか。
モリブデンの領主にまでも話が上がりそうだとまで言っていた。
寝屋での
あれ、俺ってそこまで大物だったのか。
俺がモリブデンから離れれば済むだけだと思って啖呵を切っただけなのだが、どうやらそうでもないらしい。
一つには、高級娼館だけでなく中級の娼館にまでポテトチップスを卸していたようで、今ではモリブデンの娼館の売りにまでなっているのだとか。
最近は、それに加え唐揚げや、他の料理までもが娼館名物になり始めているので、俺がモリブデンからいなくなるのが困るのだとか。
それと、最悪なことに、あの手押しポンプまでもが有名になり始めてきている。
正直手押しポンプについては、落ち着いたら権利だけを取って他の鍛冶に任せようとしていたが、モリブデンでは考えた方がいいかもしれない。
まあ、とりあえず商業ギルド長との約束もあることだし、現状維持として、新規については信用のある者とだけと答えておいた。
それから数日は、俺も後処理に当たっていたので、ほとんど店の奥にいた。
でも、一旦おかしな方に転がると、勘違いするような連中は出てくるものだ。
さっそくギルド長訪問の翌日には勘違いした偉そうな連中が店を訪ねてきた。
彼らは、俺が商業ギルドに訴えている案件を取り下げろと高飛車に要求してきた。
とにかく俺が店先まで出て彼らの対応をすると、あいつらは男が出てきたことに驚いていたようだ。
どうもこの店は女しかいないとばかりに勘違いしていたようだ。
まず俺は彼らの身元を確認しようとすると、なんだかんだと言い訳をしながら身元を明かさずに要求ばかりしてくるので、正直に俺が商業ギルドに訴え出たことは無いと説明する。
あいつらは納得しないようだが、とにかく商業ギルドに不正案件の訴えがないかどうか位は調べられるので、それを調べてから出直して来いと追い出した。
面倒なことになってきた。
まあ、モリブデンのごろつき連中数人程度ならドワーフの二人でも十分すぎるくらいにおつりがくるが、それでも面倒なことには変わりがない。
何よりドワーフ以外にも子供もいるし、それ以外の種族の女性だと危険なことには変わりがない。
面倒な連中については、本当に訴え出た方がいいかもしれない。
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