第115話 女性だけの会話

 

 一通りの仕事の説明をしておいた。

 基本的には店長であるカトリーヌに任せるが、将来的には王都とモリブデンとの間の仕入れ業務にもしてもらいたい。

 何せ、護衛の要らない戦力だ。

 ダーナと三人のうちで一人だけでもいれば王都とモリブデンでの移動に関しては問題ない。

 ナーシャまで付ければオーバーキルの戦力になるだろう。


 まあ、とにかく王都の補充については、いっぺんに三人も増えたので解決と考えてもいい。

 しばらく、王都で生活をしてもらい、慣れてきたらモリブデンに連れていき、あっちの方でも紹介はしておこう。


 拠点が増えると、こういうこまごましたところは面倒になってくるな。


 王都で10日ばかり過ごしてしまった。

 俺たちは急ぎモリブデンに帰る。

 もう、問題はそうそう起こらないとは思うが、それでもあの事件以来心配はある。


 いつも通り、王都で世話になっているドースンさんとバッカスさんに挨拶と王都の店のことについてお願いをしてからモリブデンに戻った。


 俺が王都から離れた後の王都の店での話だが、スジャータが店主のカトリーヌに時間をもらい、相談をしていた。


「店長殿。

 あの~……」


 何か言いにくそうだったので、察したカトリーヌが助け舟を出す。


「私とご主人様との関係ですか」


「はい、それもありますが……」

 まだ言いにくそうだ。

 しかし、そんなことを無視するかのようにカトリーヌはモリブデンでの事を丁寧に説明した。

 今までの自分の受けた経緯を説明するほうが早いとでも感じたのだろう。


「という訳で、王都に来るまでは私も奴隷でしたのよ。

 なんでも店長にだけは奴隷だとまずいらしく、私だけ解放してもらいました」


「店長と、ご主人様との関係は」


「愛妾といった感じかしら。

 ご主人様からは側室にでもと言われましたけど、恐れ多くて私のほうから辞退して愛妾にしていただいたの……ムフ」

 嬉しそうにスジャータのそう語るカトリーヌだ。


 それもそうだ。

 王都にいた10日間は毎日のように相手をしていたわけで、彼女からしたら久しぶりに満足させてもらったようなものだ。


 尤も、二人きりというのは一回もなかった。

 初日は親子の二人に相手をしてもらい、それ以降はほかの元メイドたちと三人多い時には娘も加わり5人という日もあったが、それでも毎日相手をしてもらったのがうれしかったようだ。

 王都の店の中では一番多かった。


 当然、大して大きくない店の中での逢瀬だ。

 聞こえるのだよ、新たに仲間に加わったスジャータや彼女の連れていた部下たちには。

 当然、彼女たちも奴隷として売られたことを理解している。

 自分たちも求められれば断れないことくらい理解しているだけに、スジャータからしたらたまったものではなかっただろう。


 あとでカトリーヌから話を聞いた時に、配慮が足らなかったと反省したけど、よくよく考えればどうしようもない話でも合った。


 それで、俺が王都からいなくなるのと同時に不安を直接店長に聞いてみたという訳だ。


「店長殿。

 あの~、私もご主人様のお相手をしないと……いけないのでしょうか。

 あ、いや、私がお相手することで二人に欲望が向かわないものでしょうか」


「ああ、スジャータさん。

 あなたが何を心配しているかわかりました。

 ですが、少なくとも当分の間はあなたの順番は回ってこないでしょうし、何より、ご主人様は晩熟おくてですの。

 こちらから迫らない限り手を出された人などおりませんから、本当に嫌でしたら、はっきりとご主人様にお願いされたらどうでしょうか。

 もし、どうしても自分から言えないようでしたら私からお願いしておいてもよろしくてよ」


「なぜですか?」


「ライバル?

 そんな感じの女性が減ることは愛妾として大歓迎ですから。

 正直スジャータさんもあのお二人も女性としての魅力は相当なものですから、順番に加わるようでしたら、それこそ王都でしてもらえる日が減ってしまいますわ。

 そうでなくとも、なかなか王都にはいらしてくれないのに」


 俺のいなくなった王都でそんなことを会話されていたとのことだ。

 カトリーヌやマリアンヌ、それにゼブラからそんな感じだったことを聞いた。


 年頃な女性が三人、興味はあるが怖いという感じだったようでそんなことを聞いたようだ。

 次に王都に行ったときに、彼女たちから教えてもらったけど、王都にいる間に最後までスジャータから体の関係だけは嫌だとは聞かなかった。

 尤も、抱いてほしいとも聞かなかったので、抱くこともなかったが。

 とりあえず彼女たちの仕事としては主に石鹸の販売についておこなってもらっている。

 石鹸の販売や会計など、計算ができるので、フロアーの接客や料理作りではなく、入り口近くでの仕事をしていた。


「だいぶ慣れたようだな、スジャータ、それにアイリーンとシルバーナ」


「ハイ、慣れてきました。

 しかし、それにしてもものすごい売り上げですね。

 こんなに高価な石鹸ですが、それこそ毎日のように売れていますから」


 最低ランクのポテトチップスで使っていた油を使った石鹸の売り上げがすごいことになっているらしい。

 一日1~2個売れているというからものすごい。


「そうか。

 それなら変な奴から目をつけられてはいないかな」


「そうですね。

 たまに、怪しそうな連中が訪ねてきますが、店長がお相手をなさっております。

 貴族のご婦人たちが多くお客様としていらしてくれていますので、そうそうおかしなこともできずにいるようですね。

 私たちが入ってどうこうするような荒事になったことはありません」


「それなら、一度モリブデンに連れていけるかと思ったけど、ここが忙しそうなので、それも難しいか」


 用心棒的な意味合いで彼女たちを購入したのだが、幸いなことに荒事にはならずに済んでいるようだが、彼女たちはフロアーも手伝い始めているので、そっちの関係で、連れだすことが難しそうだった。

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