第95話 泡娘の実演

 

 この世界の冒険者ならばもしかしたらとは思うのが、俺が嫌だ。


 ござを2枚敷くだけでは足りない。

 ござを全く敷かないよりは少し良くなるが俺は嫌だ。


 そこで、みんなでアイデアを出し合いながら、買ってきたござで袋状の物を作り、その中にそこらで売っているむしろをできるだけソフトな感じになるように詰め込んだ物を作った。


 畳マットの出来上がった瞬間だ。


 風呂で使うには、それこそ毎日乾かすなどの手入れは必須だが、それでも何も無いよりはましだ。


 畳マットの完成を待って、俺は娼館の別館の完成を宣言した。


 宣言と云ってもすることは無いのだが、俺はガーナを連れてフィットチーネさんを訪ね、俺達が作っていた娼館別館の引き渡しを行った。


 早速フィットチーネさんはあの三人を連れて別館を訪れ、内観を始める。


「レイさん。

 風呂の使い方は良く分かりました。

 これならば毎日でもお客様に個室での入浴サービスができると思います」


「あの、レイさん。

 ですが、風呂で前にレイさんの……」


 エリーさんの言う事は良く分かる。

 俺達が、前に貰い湯の時に、やらかしたことをここで再現するにはどうしようかと迷っているようだ。


「フィットチーネさん、それにお姉さん方に提案があるのですが」


「提案?

 何ですか」


 俺はマットサービスの提案をしてみる。

 既に、あの畳マットでのサービスは自分の店に作った風呂で実証済だ。


言葉で説明をしながら、俺はガーナから用意していた畳マットを受け取り、簡単にまねをしてみる。


「何となくイメージは分かりましたけど、実際に使うとなるとどうなりますかね」


「レイさん。

 今の提案、実際に試してみたいのですが」


「それよりも、レイさんにしてみてもらえますか」


「え、俺が皆さんの前で……」


「何を今更」


「レイさん。

 マリーたちに、実際にして見せては貰えないかな。

 流石に男の私がいてはレイさんもやりにくいでしょうから、私は席を外すから。

 何なら、今の提案も含めてお礼はするから」


「あの、レイさん。

 私がレイさんのお相手をしますから、皆さんに……」

 ガーナが顔を真っ赤にしながら提案してきた。


「分かりました。

 先程太陽熱温水器に水を入れましたから、夕方近くになりますが、それで良ければ」


「夕方なら、まだ大丈夫よね。

 それに、今頃は先日王都で行われていた建国祭の影響もあって、ちょっと暇でもあるから、問題無いわね」


 簡単に話がまとまり、夕方もう一度ここに集まり、実際に試してみることになった。


 その日の夕方、日中は良い天気だったこともあり、太陽熱温水器がしっかり仕事をしたので、水を沸かし直す必要もなく風呂の方はすぐに準備が整った。


 お姉さん方三人も早速集まって来た。


「え、店の方は大丈夫なのですか。

 これから忙しく……」


「ええ、大丈夫よ。

 最近は皆も育ってきたおかげで、私たちはそれほど忙しく無いのよ。

 それよりも別館の準備の方がね」


「そうそう、娼婦の手配もまだですしね。

 それに初めての試みでしょ。

 私たちもどうしていいか、まだ試行錯誤なのよ」


「フィットチーネさんなんかは、風呂のサービスがあるだけで十分だと言っているけど、せっかく個別に風呂があるのならね」


「それより、レイさんどんなサービスを見せてくれるのよ。

 まえにうちの風呂場で石鹸を派手にまき散らかした時は、何をしていたの」


 お姉さん方は興味津々のようだ。

 でも、風呂を使ったサービスって、この世界では無いようだ。

 まあ、風呂自体が贅沢品なのだから当たり前と言えば当たり前か。

 王族や貴族などはメイドに体を洗ってもらうこともあるのだろうが、娼館遊びとは結び付かないようだ。


「ええ、今回はこれを使います。

 私としては、かなり気に入っていますが。

 ガーナ、始めようか」


 俺の後ろにいるガーナに声を掛けた。

 ガーナは恥ずかしそうにしているが、それでも服を脱ぎだした。


 自分からやると言ってきたのに、今更って、やっぱり人前では恥ずかしいのかな。


 でもうちではいつも人がいるけどな。


 ガーナは着ている服を全て脱ぐと、今度は俺の服を脱がしにかかる。


 娼婦のお姉さんのようにはいかないが、ぎこちなく俺もガーナに裸にされると、俺の手を取り風呂場に向かう。


 そこで、俺にお湯をかけた後、俺を畳マットの上に寝かせて、液体状の石鹸を手に取り、俺の体をガーナの手についた石鹸で軽く洗い出した。

 全身に石鹸がつくと、今度はガーラ自身の体に石鹸を塗り、自分の体を使って俺のことを洗い出した。


 この時の俺の顔は多分人には見せられないくらいだらしなくなっていただろうが、気持ちがいいので構わない。


 そんな様子を見ていたお姉さん方は驚いたように声を上げた。


「これなのね」


「これなら風呂場中に石鹸がまき散らかれたのも分かるわ」


「でも、このサービスっていいかも」


「そうよね。

 これなら十分にお金を取れそうね」


 お姉さん方は口々にここでの営業形態について言葉を発していた。


 もう俺の方は、デモンストレーションをしていることなどすっかり忘れて、ガーナと楽しむことしかしていない。


 一連のムフフを終えて、賢者タイムになって、やっと思い出した。


「どうでしたか。

 これならここならではのサービスになりませんか」


 俺は照れ隠しに、お姉さん方に聞いてみた。

 するとお姉さん方は驚くほどの食い付きだった。


「そうよね。

 レイさんは本当に気持ちよさそうだし、サービスとしては良いかもしれないわ」


「となると、問題は実際にサービスを行う娼婦の負担の方ね。

 どんな感じかしら」


「ガーナさん。

 どんな感じだったの」


 ガーナは突然尋ねられても、どう答えて良いか分からない様子だった。


「そうよ、実際に私がしてみれば良いのよ。

 レイさん、まだ大丈夫よね」

 何がとは聞かない。

 そこまで野暮ではないので、俺は『大丈夫』とだけ答えた。


 その後は、お姉さん方一人ずつが、ガーナと同じことをした。

 まあ流石に4回は出せないので、中に入れはしたが、それだけで勘弁してもらった。


 で、流石にこれ以上はということで、賢者タイム中に話し合いを行った。


「このサービスは十分に価値があるわ」


「最低でも金貨で10枚は貰えるでしょうね」


「でも、貰うには私たちの方に十分な経験と技術がいるからすぐには無理でしょうかね」


「別館専門で、娼婦の教育をする必要はあるわね」


「レイさん。

 相談なんだけど、女性たちの教育をして頂けないかしら」


「え、教育ですか。

 私が……」


「ええ、報酬は出します。

 そうですね、一晩で女性一人につき、金貨で1枚いや、3枚までは出します。

 まずは二人に教育してほしいかな」


「あの二人をここで使うのですか?」


「そうよ、マリー。

 あの子たちは、見た目も私たちとは違うけど十分以上に美人だわ。

 なら、ここで付加価値として、使えないかしら」


「そうよね、ここでのサービスが十分に知れ渡れば、他の子を回しても問題無いけど、最初だけはね」

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