第86話 新たな試み

 

 下水関連の施設から作るが、そのまま店の下にまで伸びている下水に繋いでも良いが、ここでも俺は一つの実験をしてみる。


 前に何度も森で、試してはいるが、本格的にスライムを捕まえてきて、浄化槽を作ることにした。


 俺のアイテムボックスで、付近の土を取り込むことで、好きな形の穴をあけることができた。


 これは、以前漫画で見たことのあるテクニックだ。

 実際に使ってみると、初めは難しかったが、直ぐに慣れた。

 まあ、明確にイメージが思い浮かぶので、割と簡単にできたのだろう。

 こういう事は、この世界生まれでは難しいのかもしれない。

 レンガの水抜きも、ダーナには難しかったように、工夫という文化が無い訳では無いだろうが、一般的では無いのだろうな。


 そういう意味でも俺にはアドバンテージがあることになる。 

 人生イージーモードで行けそう。

 まあ、そんな訳ないだろうが、とにかく、浄化槽から作る。


 俺のあけた穴に沿って、レンガを敷き詰め、その上から防水を兼ねて三和土たたきを塗っていく。


 この三和土についても、海で貝殻を拾い焼いて作ることから始めた。

 この辺りも、昔テレビで見た知識だったが、試行錯誤を数回するだけでできたのだから、本当に知識は身を助くだな。


 沈殿槽にスライムを入れて、その隣には炭を敷き詰め、フィルターにした層を作り、そこから出た排水を下水管に繋げた。


 もう、スライムの層を超えるだけでも十分に綺麗になっているように思えるが、活性炭代わりの炭を抜けた水は十分に綺麗に見えるが、飲みたいとは思わないので、そのまま下水に流す。


 後は、浴場から建設していく。


 浴場の隣には当然脱衣所も作るが、同じ一階には石鹸などを作る多目的な作業場も作った。

 かなり広めに作ったので、一階はそれで終わりで、2階に、子供たちのための大部屋を二つと広めな食堂に、これまた広く作った調理場も備え付けてある。

 そこからさらに階段で上がると、屋上になるが、屋上には浴場や調理場用の浄水タンクも作った。


 これは、先に浄化槽で作った要領で屋上に用意したものだ。


 ただ、ここに水を入れるのに苦労しそうだということが分かり、ここで、一旦建設作業を中断した。


 ここからが本来の目的である給湯システム造りになるのだが、俺は昔大流行した太陽熱温水器なるものを考えている。


 屋上に作った浄水タンクから青銅などで作ったパイプで昼の太陽熱を使って水を温め、更に、一階に作るボイラーもどきに通して必要に応じてお湯を温めることにしてある。


 ただ、問題なのが、屋上に水をくみ上げる作業だ。

 俺のアイテムボックスを使えばとりあえず用は済むが、娼館のこともあり、別の方法を考えないといけない。


 ここはやはり手押しポンプの登場か。


 となると、最低でもここで青銅を加工できないとまずい。


 ガーナに相談してみると、青銅の加工くらいまではできるという話だった。

 ガーナは鋼の加工となると、苦手と云うかはっきりできないとまで言っていたが、ドワーフなら日常でよく使う青銅の加工くらいは誰でもできると云うのだ。


 そこで、次の工程であるボイラー造りのために、レンガを焼く窯の隣に青銅用の炉をレンガで作った。


 これも耐火煉瓦では無いので、どこまでもつかは分からないが注意して使ってもらう。

 その内耐火煉瓦の研究をして、敷地内に鍛冶場を作っていこう。


 そんな感じで、建設に夢中になったこともあり、肝心の商売にも影響が出始めた。

 具体的には酒の仕入れだ。

 今まで余裕を持って仕入れていたので、今までもったようなものだったが、そろそろ限界だ。


 在庫がぼちぼち無くなっている。


 俺は、青銅のパイプをある程度作ってもらうようにガーナに頼んでから、いつものメンバーで王都に急いだ。


 王都に行く前に娼館に寄って、状況を再度確認の上、お姉さん方に一筆貰った。

 当分、自分たちの予約は出来無いということを書いてもらったのだ。


 流石にここまで準備すればドースンさんにも義理がたつ。


 王都で、一月ぶりにバッカスさんの店に行き酒を仕入れ、ポテトチップスを卸して仕事は終わる。


 まあ、ポテトチップスの卸が一月の間滞っていたことをチクチク皮肉を言われたが、そこは我慢だ。

 実際、本業をおろそかにしていた気持ちもある。


 その後、直ぐに帰りたかったが、ドースンさんのところに行き、お姉さん方に書いてもらった手紙を渡し、状況を説明した。


 予約が取れないことが書かれているはずなのに、なぜかしらドースンさんは非常に喜んでいる。


 え、どういう事??


「だって、レイさんや。

 これ本当に、あの方々お姉さん方に書いて貰ったものなのか」


「ええ、目の前でマリーさんに書いてもらいました。

 だって、予約が取れないことを私の口から伝えても信じたくはないでしょ」


「ああ、そうだな。

 でも、この手紙を俺が貰っても良いのか」


「え、どういうことなのですか」


 いよいよもって俺には状況がつかめない。

 だって、楽しみにしていた予約が一切取れないと書かれているんだよ、あの手紙には。


 あまり時間をかけたくはなかったが、流石に分からないと気持ちが悪いこともあり、ドースンさんによくよく話を聞いてみた。


 早い話が、あこがれのお姉さん方から直筆の手紙を頂いたのがうれしかったようだ。


 一押しのアイドルから直筆の手紙を貰う、そうとう思いの強い追っかけのようなものか。


「これ、家宝にするわ。

 本当にレイさん、ありがとうな。

 もし、これからも俺の助けがいるようなら、遠慮なく言ってくれ。

 できる範囲で最大限協力するから」


 なんだか、またお姉さん方に助けられたのか。


 俺は、その足で、王都を離れて、モリブデンに向かった。


 途中で、海岸によって、塩つくりのための海水を相当量仕入れ、そのついでに魚もいくらか捕獲した。


 これを使って、フライか何かを食べたいかなと考えている。


 あ、そう言えば、パンはいつも食べているからパン粉や小麦粉はすぐにでも手に入るが、卵は見たことが無い。

 実際にこの世界では卵はあるのだろうか。


 モリブデンに戻ったら、フィットチーネさんにでも聞いてみよう。

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