第38話 酒の取引

「フィットチーネさん。

 お酒の仕入れですが、私がしましょうか」


「え。レイさんがですか」


 俺はそう言うと、ダーナを傍に呼んでからダーナから酒を受け取るような真似をして、俺のアイテムボックスから、前に盗賊のアジトで奪った酒をいくつか取り出してみた。

 それを見ていたフィットチーネさんたちはものすごく驚いたような顔をしている。


「レイさん。

 今何を……」


「ええ、王都のオークションで買いましたダーナです。

 彼女は主あるじ殺しの罪を擦り付けられて冤罪えんざいで犯罪奴隷としてオークションに出品されていたところを、私のスケベ心で衝動買いをしたのです。

 これが思わぬ掘り出し物でした」


 俺はそう言ってから、彼女の初めてを奪ったら、今まで使えなかった魔法が使えるようになったことと、そのため彼女の生まれながらに持っていたアイテムボックスのスキルが使えるようになったことを伝えた。


「それは、本当の幸運でしたね。

 レイさんは、ものすごい運の持ち主かもしれませんね。

 アイテムボックス持ちの奴隷なんか、それこそオークションでしか買えませんよ。

 しかも競せり落とすのにいくらなるかは想像すらできませんよ」


「ええ、これもみなフィットチーネさんにドースンさんを紹介して頂いたおかげです」


「それにしても幸運だ」と散々言われた。


 まあ、今回王都に行ったのも将来アイテムボックス持ちの奴隷がどんなものかを知るためだったのだが、その奴隷を、それとも知られることなく格安で買えたことができたのだから奴隷を扱う者にとっては幸運としか言えないそうだ。

 だが、これほど珍しいスキルではないが、隠れていたスキルが何かの拍子に現れることはあるらしい。

 それらに当たると奴隷商冥利に尽きるとまで言っていた。

 価値が大化けするのだとか。

 そういう意味ではドースンさんが知ったら、どんな顔をするか少し楽しみでもあった。

 その後、俺はフィットチーネさんに連れられて娼館にまで行き、お姉さん方とお酒の件で話し合った。

 今回俺が持ち込んだお酒は全て合格点を出してもらい、そのまま俺の在庫を引き取ってもらった。

 金貨で40枚にもなる商いだった。

 日本円で400万円か。

 相当なものだ。

 これからはこの娼館でも酒を出しておもてなしをするらしい。

 今までは姉さん方以外の女性だけでの営業をしていたが、十分なおもてなしができないと、主に新人女性だけでの営業となっているが、それでもかなりにぎわっている。

 それもお客様は皆、モリブデンの上流階級に属する人ばかりとあって、いわゆるサロンといった趣も出ている。

 それだけにお酒の問題はかなり深刻だったようだ。

 娼館でお出しする食事の方は、フィットチーネさん宅に勤めているシェフが当たっており、問題にはなっていないが、お姉さん方はいわゆるつまみのような物も欲しがっている。

 つまみに関しては俺に心当たりがあるが、フィットチーネさんから言われたのはアポーの実があればそれもここに卸してほしいというのだ。

 俺のとってはまだ俺のアイテムボックスに相当抱えているから問題無いし、はっきり言って商材が増える分には大歓迎だ。

 とりあえず俺の商人としての第一歩は、フィットチーネさんが経営する娼館相手に王都から酒の仕入れと、アポーの実の納品という、行商からはちょっと違った形にはなったが始まった。

 話し合いは無事に終わったが、お姉さま方に相手をされることなく今日のところは素直に帰ることにした。

 もうここは営業をしているのだ。

 お姉さま方に相手をしてもらうにはきちんと対価を払わないといけない。

 だが、まだ駆け出し、いや、商売を始めてもいない身分では、喩え所持金に余裕があっても買うのは憚はばかられる。

 そもそも、娼館なんか行ったことが無いので、いったいいくらかかるかも知らない。

 まあ、王族を相手するお姉さま方は流石においそれと買えないというくらいは分かるが、いったいくらになるのだろうか。

 流石にいきなり金貨でどれくらいになるか聞けずに、今日のところは娼館を後にした。

 後で聞いた話ではあの娼館の最低価格で金貨2枚からだそうだ。

 日本円で20万円。

 十分高級娼館だとは思うが、それでも最低価格だというのだから驚いた。

 お姉さん方は王都では金貨100枚は下らなかったそうだが、ここでは金貨50枚から始めると言っていた。

 ドースンさんには金貨30枚で一回のみお相手できるようにするという。

 明日にもう一度フィットチーネさんに呼ばれているが、どうも王都にその手紙を届ける仕事を俺に頼むのだそうだ。

 まあ、俺も酒の仕入れ先を開拓しないといけないので、願ったりかなったりなのだが。

 今日は家に戻り、まだダーナの治療の続きが残っている。

 その日は、俺たちはこの娼館から直ぐ傍そばにある自宅に戻り、治療?を始めた。

 ダーナは、すでにいくつかの魔法経路が繋がってきており、全治までもう少しだと思われる。

 既に体をまさぐるポイントも少なくなってきており、その代わりにピンク色したポイントが増えてきたように思われる。

 このピンク色したポイントは魔法経路とは全く関係のない事は経験上分かったが、もしかして……まさにその通りだった。

 そう、彼女の性感帯だったようだ。

 そこを刺激するといとも簡単に達してしまう。

 今日も治療ポイントをいつも通り刺激した後に、俺のをダーナに突っ込んでからあの違う色をしたポイントを刺激して、十分に楽しんでから終えた。

 大抵の場合、ダーナはこうなると朝まで起きないので、後処理は明日の朝になる。

 俺は事後の片づけをすること無く、今まで寂しそうにしていたナーシャを呼んで、尻尾を町で買ったブラシで丁寧に撫でて、頭をなでた。

 これだけでナーシャも十分に満足してくれるので、この日が終わる。

 もうこれが俺たちのスタンダードになりつつあるが、流石に風呂には入りたい。

 この屋敷にはあいにく風呂は無いので、そのうち風呂を作りたいとは思うが、今日のところは俺も横になり意識を手離した。

 翌日、朝食を自宅で取ってからフィットチーネさん宅に向かう。

 入り口前でバトラーさんに迎えられて、執務室に入る。

 もうこの辺りは完全にスタンダードになっているから気にしないことにしている。

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