第16話 訳ありの奴隷
今回はそんな大それた話では無かったが、それでも驚くことを教えられた。
「レイさん。
レイさんの連れて来た虎人族の少女の件ですが、少々まずいことが分かりました」
「何か問題でも」
「ええ、大問題ですね。
彼女、違法奴隷だったのです」
「違法奴隷?」
「違法に奴隷にされる場合、ほとんどの場合には合法奴隷と変わりがありません。
しかし、奴隷商が違法奴隷というのは別物です」
そう言ってからフィットチーネさんは詳しく教えてくれた。
なんでも、奴隷商が言う違法奴隷とは、奴隷商が施す奴隷拘束魔法では無く、それよりも強力な魔法で、奴隷化されるとか。
もうこうなると、奴隷の解放どころか、所有者の変更すらも奴隷商ではできず、奴隷は商品とはなり得ないと言うのだ。
「別に商品でなくとも問題無いのでは」
元々奴隷の居ない日本から来た俺には、どこに問題があるのか正確に理解していない。
そこで、フィットチーネさんは更に詳しく問題となることを教えてくれた。
まず、こういった違法奴隷は商売できないことから奴隷商では扱えないと、法律で定められている。
また、更に問題となるのは、この拘束魔法がどんなことかを正確に分かっていないことから、いつ何時暴走するかも分からないために特に力の強い獣人の場合にはその場で殺処分されることが推奨されているそうだ。
流石に助けた傍から殺されるなんて俺にはどうしても理解できない。
そんな俺の様子を理解したのかさらに続けて説明してくれた。
「私どもで出来ることはファースト所有者の記録だけです。
違法奴隷の場合、奴隷商で出来るのはこれくらいでしょうか」
「それはどういう意味ですか」
「最初のご主人様に限り、奴隷として扱えると言うのです。
ただ法律がある関係で、私には所有が認められておりませんが」
「え、どういうことですか」
「この場合、レイさんが彼女の主人として所有はできるということです。
幸いなことに、まだ彼女は誰の物でもありませんが、どうしますか」
「私にしか彼女を助けられないのなら私が所有します」
元々俺は奴隷でハーレムを作ろうとしているのだ。
流石にまだ彼女では青すぎるが、育てればいいだけだ。
十分に熟れたら美味しく頂くだけだ。
「え、良いのですか。
もう一度説明しますが彼女に掛けられた魔法が良く分かっていないのですよ。
ある日突然、あなたに牙をむくかも知れませんがそれでもよろしいのですか」
「構いません。
私しか今の彼女を助けられないのなら、それくらいのリスクは負いますよ」
「まあ、レイさんなら彼女を酷く扱うようなことはしないでしょうからいきなり牙をむくようなことはないでしょうし、何より獣人、特にあの虎人族は戦闘に優れた特性の有る種族ですから冒険者のお供としても行商の護衛としても役に立つことでしょう。
分かりました、明日にでも登録しましょう。
彼女も明日には動けるようにはなりますからね。
それよりも今夜はこちらにお泊りしますか」
え、流石にお姉さんたちに何も言ってこなかったし、心配させるのもなんだかな。
楽しみでもあり、次に会った時に本気で生気を全部取られそうで怖いこともある。
「いえ、今はあそこを拠点として動いておりますから、今日も戻ろうかと思います。
要らぬ心配を掛けたくはありませんしね」
俺はそう言ってフィットチーネさん宅からお暇して、今世話になっている娼館に向かった。
娼館の前にお姉さん方が外に出て俺を待っていた。
なんでも娼館とフィットチーネさん宅とで連絡する手段があるそうだ。
なら心配などしていなかっただろうとは思ったが、ここではとても怖くて何も言わなかった。
当然この日も、死の直前まで俺は頑張って、快楽をむさぼった。
本当に俺は、ここに居てはダメ人間になりそう。
元々ハイレベルの人間では無かったが、どこまで落ちるのか試してみたいという気持ちも無くも無いが、俺には扶養する人間ができるのだ。
おいそれと奈落に落ちる訳にもいかない。
辛うじて、将来のハーレムを夢見て一線を辛うじて超えることなく、正気を得ている。
やっぱりクズだわ。
翌日も三人に気持ちよく起こされてから、俺はギルドに向かった。
新人なら新人らしく誰よりも早く出勤しようと思っていたのだが、既に暁さん達は集まっていた。
尤も、ここに来ているにはセブンさんとイレブンさんの二人だ。
まあ、分け前の相談だけならこの二人だけで事足りる。
もうこうなると腐れ縁すら感じるが、またあの主任さんが担当だ。
「おお、よく来たな。
こっちに来てくれ」
またあの応接に通されて、相談が始まる。
今回のようなケースでは鹵獲品の半分がギルドを始め公的な所のモノになる。
残り半分を参加者で分けるのだが、この参加者の中には公的機関から派遣されてきた者が居るので、頭数に入れて分けられるが、参加した本人には回らずに公庫に入れられるそうだ。
話し合いの結果、武器類は全てギルドを通して領主に、残りを頭数でとなり、暁の皆さんは少なくなかったお宝を選んでいた。
俺は、この先商売を考えていたから、運んできた樽の内どれかでもと思っていたら、樽全部と言っても3つしかないが、それを俺へと渡された。
それに、今回の参加報酬として別に金貨を1枚貰った。
これは一人金貨一枚という計算でなく、パーティー単位の褒章のようだが、人数によって多少の調整が入るそうだ。
今回は暁さんだけだったので、暁さんはパーティーで金貨2枚、それでもかなり稼ぎの良い仕事だとか。
まあ6人で1日仕事をして20万円か。
一人頭で考えると一日三万三千円といったところか。
う~~ん、微妙な数字だな。
やっぱり冒険でなく、商人として大きく儲けたいな。
あのフィットチーネさん位を目指すと、あのお姉さんたちのような女性をたくさん囲える。
やっぱり、俺の目指す方向は間違っていない。
比較的簡単にギルドでのお仕事を終えた俺は、そのまますぐにフィットチーネさん宅に向かった。
入り口では、いつものバトラーさんが待っていた。
本当にどうして俺が来ることが分かったのだろう。
この人たちは不思議がいっぱいだ。
俺はそのまま中に通されて、フィットチーネさんの執務室に入った。
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