第124話 王都での仕入れ
彼女たちを連れて一度モリブデンを離れて、森の中を移動する。
途中で、アポーの実などを採取しながら、魔物や盗賊たちを見つけては狩っていく。
海に一度向かって、海水を採取してから、海の魔物ともスジャータたち三人に経験させて、魚釣りについても体験させた。
釣った獲物で浜辺でバーベキューを楽しんだが、これには元騎士たち三人も相当喜んでいた。
浜でのバーベキューが本当に久しぶりだったこともあり元騎士だけでなくナーシャがことのほか喜んでいた。
ビキニの水着でもあれば、俺も本当に楽しいひと時を過ごせたのだがと、一人妄想を考えながら浜でのひと時を楽しんだ。
ビキニ姿なぞ、それ以上のことをしているのだからと言われそうだが、これはこれあれはあれだ。
男の業は闇深いものなのだ。
その後は途中の村には寄らずに森の中を移動しながら、野営を楽しみ王都に向かった。
今回の野営にはメンバーが三人も増えたので、やっている最中の周りの警戒役を残しても十分にメンバーも充実していたこともあり、安心して楽しんでいたために野営とは思えないくらいに張り切ってしまった。
さすがの俺も翌日に多少の疲れを残すくらいだったのだが、俺もここまでレベルというのを上げてあるので、問題は無い。
俺の他のメンバーについてもレベルも上がり、またそれに何なくついてこれるスペックを持つ元騎士たちとの移動だったこともあり、途中浜で楽しんだとしても、かなり短い時間で王都についた。
俺たちはまず、バッカスさんの店に向かい、王都に来た本来の目的でもある仕入れを行う。
なじみの店員さんが俺を見つけ挨拶してきた。
「あれ、レイ様。
ひさしぶりですね」
「ええ、聞いているかと思いますが、貴族からの茶々を嫌いモリブデンに避難してましたが、あっちは祭りでしょ。
仕入れた酒が無くなりそうで慌てて仕入れに来ました。
いつものようにお願いします」
「わかりました。
レイさんの王都の店が閉まっている関係で、その分うちの売り上げが減っていますから、今回はその分も含めたっぷりと買っていってくださいね」
「そのつもりです。
いつものように適当に見繕ってください」
俺がいつもの店員さんとまじめに商売をしていると、店主のバッカスさんが店先まで出てきた。
「お、レイさんか。
いつ王都に着いたんだ?」
「今ですよ。
モリブデンの祭りで、うちの酒が底を尽きかけてきておりまして、慌てて追加の仕入れに来ました」
「祭りの分、仕入れていなかったのか?」
「仕入れたつもりでしたんですがね。
見積もりが甘かったようで」
「そうか、そういえばレイさん初めての祭りと聞いていたけど、それなら仕方がないのかな」
「ええ、あれほど盛況な祭りだとは思いませんでした。
前に王都での祭りに参加させてもらいましたが、あれと賑わいは変わらないかもしれませんね。
……おっと、こんなこと言うと不敬罪に問われかねませんかね」
「それくらいで、いちいち不敬罪になんか問えないさ。
それに、あそこは国一番の港町だ。
外国からの商人の数だと、王都以上になるから賑わいだってそれ相応になるのだろうな。
俺は祭りを見たことが無いからわからんが」
「あ、そうそう、お礼の件ですが『もう、これが最後ですからね』って言われましたけど、了承をもらいました。
日程や金額などは直接店に問い合わせてください」
「おお、それはありがたい。
しかし、これが最後になるのかな」
「わかりませんが、今ではお姉さん方はほとんど客を取っていませんし、娼婦からは足を洗うのではないでしょうか。
今は、ほとんど娼館の経営に忙しそうですしね」
「ああ、モリブデンに高級娼館を二つも抱えてはそうなるわな。
それにあのフィットチーネさんは娼館経営にはほとんどかかわっていないのだろう」
「ええ、お姉さん方に任せきりですね」
「それなら、そうなるわな。
あ、それよりのレイさんの依頼の件だが」
「どうなりました」
「俺が動くまでもなかったよ。
レイさんの所の常連さん方が、店が閉まったことで騒ぎ出して、件の子爵様は王都から逃げ出したわ」
「え、ちょっかいをかけていた貴族って子爵でしたか」
「ああ、地方に領地を持つ子爵だが、ほとんど領地に戻らず王都で職漁りをしていると評判の悪い貴族だ。
それに前に大捕り物でいくつか潰されてる貴族があっただろう」
「ええ、うちにも取り潰された男爵家からメイドを奴隷として買いましたから」
「ああ、それはあのドースンから聞いている。
とんだジョーカーを引かされたらしいな。
話を戻すと、潰された貴族の寄り親なんだが、金づるを失ってから相当苦しくなっているようで上納金の増額を下っ端に命じていたようだ。
子爵はその下っ端になるかな。
でも、その寄り親である伯爵様も当分は手が出せないだろうから戻っても問題ないぞ。
あ、いや、できるだけ早くに再開してほしい。
俺のところにも常連貴族から圧力がかかってきている」
「ええ、私がモリブデンに戻り次第、みんなを連れてきます。
……しかし、貴族からのちょっかいって当分ないという話でしたが、子爵が王都にでも戻るのですかね」
「あ、いや、あいつは小物だ。
黒幕は、式典なんかを取り仕切る役職についている伯爵だ。
また、そいつの上に、これまた評判の良くない侯爵家までもがあるからな。
しかし、男爵までもが簡単につぶされたんだ。
当分はおとなしくしているよ」
「わかりました。
またぞろ厄介になり次第逃げだす方向で、店を再開しますので、常連さんにお伝えください」
「ああ、助かる。
それでこの後レイさんはどうするね。
王都の娼館にでも案内しようか」
「やめてくださいよ。
見てください、後ろから冷たい視線を感じますから。
それに、俺のところの奴隷も増えましたから、娼婦は間に合っております」
「カ~、一度は言ってみたいものだ、そういうセリフを。
しかし、そうだな。
本当にレイさんのところには美人しかいないしな。
うらやましい話だ。
で、この後店にでも行くのか」
「いえ、店には誰もいませんし、それに何より早くモリブデンに戻らないとモリブデンの店の酒が尽きます。
モリブデンの店を任せている者たちから恨まれますので、ドースンさんの店によって挨拶だけしたらその足で戻ります。
一応俺は冒険者でもありますし、野営は慣れておりますからね」
「そういうことか。
なら、次に王都に戻ったらゆっくりと話そうや」
「ええ、今回は色々とありがとうございました」
「お互いさまだ。
なら、モリブデンの商売も頑張ってな」
俺たちは、バッカス酒店を離れて、ドースン奴隷商に向かった。
向かったといっても、大した距離もないので、あっという間に奴隷商に着いた。
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