第185話 やらかしがばれた
「ですが、レイ様。
この学校と言うのですが、現在船乗りを養成しているだけで良いのでは」
「ですが、すでに治療師の養成も準備も始めておりますよ」
「あれ、子供たちの教育もって言っていませんでしたっけ」
「え、私は産業を興すとか聞いていましたが。
現在黒板と白墨についての量産の検討を命じられています」
次から次にと丸投げしようとしていたことがこの場で蒸し返される。
「レイ様。
どういうことですか」
そういえば、俺がお国入りした時には、全員を集めてはやり病の対策のための相談や指示を出していたけど、それ以来、みんなを集めて領地経営については何にも話してはいなかった。
それぞれ人を捕まえては指示を出していたけど、それら全部を集められて、領地経営について話し合ったことが無い。
今一度、俺の手掛けたものを集めてみるとちょっと酷いことになっていた。
集められた手がけているプロジェクトの話を聞いたお姉さん方の俺を見る目が冷たくなっている。
エリーさんなんかそっと俺に聞いてきた。
「レイ様。
ひょっとしてなのですが、レイ様は酷いことをされるのがお好きだとか」
それを横で聞いていたサリーさんなんかもっと酷い。
「ひょっとして、レイ様って……なのですか」
「……ってなんですよ」
「ですから、ご主人様に対していえないようなことですが、それとも何か過去に何か有って自分で罰を与えているとか」
「そういえば、神職にはそういう修行もあるとは聞いておりますが、そういうのは自分で鞭打つくらいで、ここまで仕事で自分を追い込むのは無かったような」
教会で修業経験のあるキョウカまでもが俺のことをMだと言い始める始末だ。
俺が慌ててみんなに誤解を解くように説明していくと、どこから聞こえてくる酷い独り言。
「バカなのですかね」
「死ぬの、いや死ねばいいのに」
て、だれが言ってるんだよ。
ちょっと奴隷が主人に対して言って良いことばじゃないだろう。
あ、この場には現地雇用もいるので奴隷だけでないか。
せめて、奴隷の皆様でないことを祈ろう。
それでも必死に今までの経緯を説明していく。
しばらく俺の弁明が続いたが、サリーさんの一言でこの場は落ち着いた。
「わかりした。
レイ様って、凄い人で何でもこなすから誤解しておりました。
なんでもできるものだから、要は考え無しの人だったのですね」
「なら、これからは領地経営については私たちが仕切ります。
その方がいいですよね、レイ様」
「ああ、でもモリブデンと交代があるのでは」
「大丈夫ですよ。
それこそレイ様のものすごい能力がありますから。
これからは頻繁にモリブデンとの連絡を密に取ります。
当然今日の出来事もモリブデンに伝えておきますから、必要があるようならばモリブデンから応援の人でも送ってくるでしょうね」
この一言でこの場は収まった。
今後は定期的に会議をするそうで、マリーさんやエリーさん、それにモリブデンにいるエリーさんが領地経営を仕切ってくれるらしい。
とにかく助かった。
この後しばらくは、今出たプロジェクトを進めることで落ち着いた。
足りない人手については、当分領地内で探す方向で行くそうだ。
それでも無理なようならばそれこそモリブデンや王都、それに商業連合にも伝手はあるから問題ないとか。
まあ、とにかく領地経営もどうにかなりそうだ。
それにしてもなんちゃって貴族の俺にとって、貴族社会の仕来りに詳しい人たちの存在は大きい。
特に王族ともチャンネルを持つお姉さん方の人脈よりもその能力の高さに俺は救われた思いだ。
まあ、この世界の娼館、特に高級娼館はただやることだけの世界ではない。
たとえるのも難しいが、江戸時代の吉原……ちょっと違うか。
昭和の銀座……実態は知らんが、ドラマや小説などでの話だが、有力政治家や企業経営者の相談を受け付けるような知識と人脈を持つような感じかな。
とにかく、この国では最高の知識人の人たちに入るような感じだ。
その後はお姉さん方のお二人に任せると、話はどんどん進み当面の問題は方が付きそうだ。
だが、本質のところでの問題は解決してはいない。
人材の不足だ。
このあたりについては、話し合いの後でお姉さん方と個別に話し合うことになった。
俺の執務室に与えられている部屋にお二人と、バトラーさんが入ってきて、先ほどの続きを始める。
ナーシャとダーナは屋敷内での護衛はいらないので放し飼いだ。
と言っても、すぐに応援の要請で、この町出身のエルフ冒険者につかまり応援で、付近の魔物狩りに連れていかれた。
なので、ゆっくりと『おはなしあい』をしている。
まず、最初に俺はお姉さん方に説教を受けていた。
「レイ様。
いくらレイ様が器用で何でもできるからと言って、本当に死にますよ」
「すみません……ですが」
「反省が足りていませんね」
「あの~、それくらいで。
領主様にも悪気があった訳ではありませんし、何よりこの領地が酷すぎましたので」
ありがとう、バトラーさん。
バトラーさんをこの場に呼んでおいてよかった。
「執事様がそういわれるのでしたら」
「この話の続きは夜にでも」
え?
これで終わるわけではないのか。
「本当でしたら、レイ様の人たち全員を連れてきてもこの地を治めるのには足りなかったでしょうが、本当によくやっていましたよね」
「そうですね。
ですが、そろそろきちんと計画を立てませんと」
そこから始めて前向きの話し合いが始まった。
まず俺のしたいことを聞かれた。
「レイ様は何をされたいのでしょうか」
「まずは領民の安全と、健康の確保だな。
それについては、一応今のところどうにかなったと言えるか」
「そうですね。
ですが今のままという訳には」
「バトラーさん、どういうことですか」
そこから現状をバトラーさんがお姉さん方に説明していた。
結構俺の知らないことも説明していたので、正直助かった。
「そうなのですか。
レイ様はこの後どうするおつもりで」
「ああ、きちんと制度を作っていきたいかな」
「制度ですか?」
「ああ、安全に関してはそのままでは立ちいかなくなった村を統合したので、守る場所が少なくなったから、あとは冒険者かな」
「冒険者……そこは領兵では」
「貴族や敵国相手ではないだろう。
守るのは魔物からかな、あとは盗賊くらいか」
「それならわかりますが」
「ああ、商人も道を使ってくるのも今のところ居ないし、ギルドみたいな仕組みを作るのと、冒険者の嵩上げかな」
「嵩上げって」
「ああ、今も似たようなことをしているが、慣れない冒険者をベテランが連れていき実力を養ってもらうんだ。
これを組織化していきたい」
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