第180話 行ったり来たりと大忙し

 


 うん、船乗りを早く養成して頻繁にこことシーボーギウムとの間の交流を盛んにしよう。

 それと、今使っている船についても改良を研究していこうと心に誓った。

 見た目がとにかく古い帆船だ。

 これが学生時代あこがれた洋酒のカティーサークのラベルに描かれているようなスリムならば面倒な船の研究など考えなかったが、今目の前にある船はとにかくどんくさそうなのだ。

 社会人になって振り返ってみると、あのカティーサークって舶来品(死語になっているような気がする)ではあるが思ったほどは高くなかったな。

 それでいて、国産の下手なウイスキーよりも格段においしかったのを覚えている。


 それた話を戻して目の前の船について考えると、素人と考えではあるが、俺の知る帆船ならばそれこそテレビなど見たことのあるヨットでもモリブデンからシーボーギウムまでを下手をすると1~2日で着きそうなのだ。


 さすがに競技用のディンギーだっけか一人のりでどこにも隠れる場所のないやつ、ウインドサーフィンをよりヨットにしたような奴と言えばわかるかな。

 かえってわかりずらくなりそうなので話を進めると、さすがにそれでの移動はしたくない。

 一応沿岸移動になるのでできない話ではって、一応外洋になるので流石にまずいか。

 だが、4~5人の利用で金持ちがレジャーで使うようなヨットでも今使っている船よりは早そうだって、それを真剣に考えるか。

 俺の場合、人の移動の方が用途がありそうだ。


 まあ、とにかくモリブデンでの最大の懸案だったお姉さん方の件がこれでひとまず片付いた。

 しかも、奴隷の所有権だけでなく奴隷の戸籍とは言わないが登録先がモリブデンからシーボーギウムに変えてある。

 そう、三人ともにだ。

 これにより以後お姉さま方については奴隷に関して税金がかからなくなる。

 しばらく税金で悩む必要が無くなる。


 他の奴隷たちも本籍を全部移してしまえば良いだけなのだが、さすがにそれだとあまりに露骨だし、税収が無くなれば領主も良い気持ちにならないだろう。

 その地で商売をしていると奴隷以外では税金を支払う方がそれでも、急激に変えるとろくなことは無い。

 これは令和日本での経験則だが、多分真理だろう。

 と言っても、こっちは人頭税の他にはギルドへの支払いだけをきちんとしていればいいらしい。


 まあ、ごちゃごちゃ言われるようならば全部閉めてシーボーギウムに移住してしまえば良いだけだ。さすがに王都やモリブデンを引き払ってシーボーギウムに引きこもることはできないが、最も女性たちはそうしてもらいたそうにしてはいるが交代することを約束して我慢してもらっている。


 なので、当分奴隷の登録先もすぐに全員を引き上げる真似はできない。

 金が無ければ、考えなくもないが商売の方も以前と変わらず順調に推移していることだし、これから買う奴隷以外は特別な事情を除きそのままとしている。

 下手に政府から目を付けられて面倒ごとになるくらいならばみかじめ料くらいは支払おうという考えだ。

 あまり褒められたことではないだろうが、少なくとも領地の税を免除してもらっているうちくらいはそのままとしておく。


 船大工についてもフィットチーネさんと相談しており、職人さんのところにいる丁稚や三男以降で商売を継げない者たちを集めている。

 本当は棟梁のような確かな技術を持つ者も最低一人は欲しかったのだが、無理そうだ。

 そう考えると俺に付き合ってくれる船長は貴重だ。


 運がよかったのもあるだろうが、船長が若かりし頃にフィットチーネさんに世話になったことがあるらしく、フィットチーネさんの紹介ということもあってしばらく俺に付き合ってくれるようだ。


 モリブデンでの仕事も終えると、すぐに俺は王都に向かう。

 あっちこっちと気をつかなわなければ恐ろしいことになる場所が増えてきている。

 今回は、メイドたちの交代は無いので久しぶりに俺とダーナにナーシャの三人での移動だ。

 本当に久しぶりなこともあり二人ともうれしそうにしている。

 このメンバーだと当然街道を使わずに森の中に入っていく。

 狩りをしながら王都に向かうが、それでも慣れたのか3日もあれば王都についてしまった。

 ダーナもナーシャも少し残念そうな顔をしているが、しょうがない。


 あいつらうれしかったのか、俺が言うのも聞かずにどんどん森の中を進んでいくからほとんど休みを取らず最短の移動で進むのだから早くつくのも当たり前だ。


 王都に入ると、バッカスさんの店に顔を出して挨拶した後に自分の店に入る。

 店では俺は大歓迎を受けた後に、そのまま乱交に入る。

 オイオイ、商売は大丈夫かと今更のように聞いてみるとピロートークで教えてもらう。

 今日は久しぶりに店をお休みしていたそうだ。

 アイテムボックス通信を使ってモリブデンとの連絡を欠かすことなく続けており、俺たちが今日あたり王都に着くことを知っていた。

 しかし、流石にピンポイントで到着する日時まではと思ったのだが、アイテムボックス通信はダーナも使えたのだ。

 種明かしは終わったら、今度は一斉に不満を俺にぶつけてくる。

 早く自分たちもシーボーギウムに連れて行けとぶー垂れられた。

 店長のカトリーヌは『いつでも店は閉められます』だって。

 もう王都の店を潰すつもりだ。

 そうでなくとも王都には拝領した館も維持しないとまずいしって、あれってどうなったのかな。


「お屋敷ですが、外観だけはどうにか見えるくらいの見栄えは確保してありますが……」


 内装が全くなのね。


「そういえば、内装の方は頼んでなかったな。

 シーボーギウムに戻るときにモリブデンであいつらに頼んでみるよ」


「あいつら……ああ、ガーナ達ですね」


「ああ、風呂も欲しかったし、そろそろモリブデンの仕事も落ち着くころだろうし、ガーナ達が王都に来たら面倒を頼む」


「わかりましたレイ様」


 しかし、いい加減面倒臭くなってきたな。

 拠点が3カ所になったのに、任せられるというか、どこも手を掛けないとまずい拠点ばかりになっている。

 特に王都はダメだ。

 流石に拝領した屋敷を放置はできないが、だからと言って手を掛けたいとも思えない。

 だから余計に心理的負担を感じるのだな。


 店だけならばまだいいが、貴族の付き合いも出てくるだろうからそれなりの体面を維持しながら屋敷を持つのだ。


 しばらくは、少なくとも領地にかかる税を免除されている期間くらいは、時々寄り親に面会するくらいで許してもらえそうだが、その期間が過ぎると本格的に貴族としての生活を少なくとも王都だけでもしないとまずいそうだ。


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