第71話 石鹸営業って、天国だった

 

「サリー様、準備はできているそうです。

 いつでも入れます」


「なら、ちょうど良かった。

 レイさん、この後お時間取れますか」


「ええ、問題ありませんが……何か?」


 俺はサリーさんに手を取られて無言で、風呂場に連れて行かれた。

 風呂場に入ると、女の子たちは一斉に服を脱ぎだす。

 うん、眼福だ。

 全員が脱ぎ終わると、今度は俺の方に襲い掛かってきた。

 俺はなすすべなく、直ぐに全裸にされて風呂場に連れて行かれた。


「レイさん、この石鹸私が買いますから、使っても良いですよね」


「いえ、差し上げますよ。

 見本ですから。

 実際に使ってくださるのなら、後で感想を聞かせて貰えると助かります」


「後でなんて回りくどい。

 今から一緒に使いましょう」


 その後は、久しぶりにここでサバトを経験した。

 お姉さん方の一人であるサリーさんは、一晩で金貨で50枚以上はするのにもかかわらずだ。

 彼女曰く、これは接客でなく、新商品の見極めだからだと。

 それに、教育中の女性たちも今ではちらほら客を取り始め、最低でも金貨2枚以上する娼婦なのに、そんな女性たちが5人。

 俺も含めて7人で、7Pだと。


 石鹸の香りが……全部花の香りだったら良かったんだけど、まあ、あの美味しそうな香りのする石鹸は臭いがきつい訳でないので、それほどでもなかったか、うん、本当にいい時間を過ごした。


 夕方になり、俺が戻ると、女性たちの視線が冷たい。

 うん、移り香は相当だ。

 でも、俺も営業に行っただけだ。

 そう、これは俺の心の中だけの言い訳で、何も言わなかった。

 言えないよ、みんなだよ、俺に冷たい目を向けるのは。

 まだ一度も手を出していない女性たちも一緒なのには参った。


 流石にこの後は俺も気を使った。

 夕食の後全員を連れてもらい湯に行った時に、俺は皆に失敗した固まらない石鹸を渡して、それを体に塗りたぐり、俺の体で彼女たちを洗ってあげた。

 最初は驚いていた彼女たちだったが、気持ちが良かったのか、いや、俺がスケベそうな顔をしながら気持ちよさそうにしているのを見たので、それが彼女たちのツボにはまったのか、液状の石鹸を使ってかなり楽しんだ。


 俺も相当疲れたが、それで彼女たちの機嫌は直った。

 風呂から出る時に、『また、楽しみたいですね』だって。

 これって、俺から言うのなら分かるが、女性に言わせてどういうものなのか。

 まあ、失敗作の有効な使い道も見つかって良かったとしよう。

 ただ、かなりの石鹸を風呂場に撒いた格好になり、風呂から出る時にちょっと片づけが大変だったので、次やる時には、家に風呂を作ってからだ。


 でも、今回の営業により、新たな商材も見つかった。

 しかも、利益もかなり期待できる。

 何せ、原材料費が俺のスキルを使うと、まずかからないが、扱う物が物だけに売値がかなり高価になりそうだ。


 明日もう一度娼館を訪ねて、使った感想などを聞きながら売値も検討していくことになっている。

 当然、風呂場でも楽しんだが、その後も大運動会になった。

 しかも、今回から、今までお預けを食らっていた4人も参加する事になった。

 驚くことに、一人を除く、3人は経験が無かったという。

 流石に双子は分かるが、結婚するために移動中にさらわれたユキも経験が無かったのは信じられなかった。


 風呂場でのノリノリの様子から、絶対に経験あり、それも一回や二回の経験では無いだろうと思っていたので、俺の驚きは相当なものだ。

 風呂場でのこともあり、初めてではあったが、直ぐにその気になり、その後はスムーズだったことをここでは記しておこう。


 あ、レンとランの双子も、お姉さん方の様子を間近で見ていたこともあり、相当興奮していたので、こっちも問題無く開通することができた。

 うん、明日からはローテーションを考えよう。

 流石に毎日は無理だ。

 それについても、一度みんなと相談することで、その日は終えた。


 翌日、昼前に娼館から呼ばれた。

 石鹸の件についてだった。


 俺は、ダーナを連れて娼館を訪ねる。

 一人で行って、昨日のようなことにでもなれば、言い訳ができない。

 流石にダーナを連れて行けば、昨日のような展開は無いだろう。

 ちょっと惜しい気もするが、昨日の今日で、そうそうお姉さん方もサービスする訳にも行かないだろうからありえない妄想を抱きながら俺は、娼館に入った。


 直ぐに奥に通される。

 玄関付近は空いてはいたようだが、それでも昨夜からのお客様がお帰りのようで、人は居る。

 昼近くだというのに、本当に良いご身分だなと、皮肉の一つも出ようと云うものだ。

 奥に入ると、久しぶりにお姉さん方三人がそろっていた。


「お揃いなんて久しぶりですね」


「ええ、昨日はサリーとお楽しみとお聞きしましたよ、レイさん」


 早速マリーさんが皮肉を言ってくる。


「マリー、良いじゃないの。

 それに昨日はお仕事よ、『お仕事!』」


「何が仕事なのよ」


「それよりも、本当にお仕事をしないと、レイさんだってお忙しいでしょうから」


「いえいえ、昨日は本当にすみませんでした。

 で、どうでした、あの石鹸は。 

 売れそうですか」


「レイさん。

 あれ、どうしたのですか。

 貰った石鹸、みんな高品質で、臭くないでしょ」


「え、臭いのもあったのでは。

 あのポテトチップスの臭いのするものが」


「ええ、ですが日ごろ私が使っている物より臭くないでしょ。

 いくらするのですか。

 あれ、私も欲しいです」


「それよりも、驚いたのが、良い香りのするものが在りましたね。

 あれ、貴族の奥様方に相当な高値で売れそうですよ」


「無臭の物もありましたが、あれって、かなりの高級品では」


 お姉さん方が口々に俺の作った石鹸を褒めてくれる。

 褒め殺しか、俺に耐性の無い新手の攻撃を食らって、HPが半分になった。

 冗談は置いておいて、でも、流石にここまで褒められると恥ずかしくなる。


「褒めて頂き感謝します。

 それで、あの石鹸ですが、ここに卸したいと思っているのですが、いかがでしょうか」


 そこから、商談を始めた。

 正直石鹸の相場が良く分からないが、お姉さん方の話では日ごろ使っている奴でも銀貨で10枚は下らないとか。

 それでも、臭いの方がちょっときつめの物まであるらしい。

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