第157話 ハーフなダークエルフ
とにもかくにも貴族って面倒以外にないのだが、それでも叙爵されるのってうれしいものなのか、俺は素直にタリアに聞いてみたら、変な顔をされた。
「ご主人様。
聞くところによりますと、商売人の最終目標が叙爵らしいです。
前の主人の男爵家も、いくつかの家に騎士爵位を渡しておりましたから」
「なにか、商売人の上りが騎士爵だというのか。
だとしたら、俺は王宮に行く前に上がりだったという訳か」
「何です?その『上がり』って」
この世界にはすごろくも無いらしい。
尤も、昭和生まれでもあるまいし、令和の世では子供たちにもわからないかもしれない……あ、有名な電車ゲームがすごろくとしてあったから知っているのはいるか。
まあ、そんなことはどうでも良い。
まずは目の前だ。
屋敷の整備に金を掛けないといけないらしい。
モリブデンから、大工組を連れてきてもいいけど、すぐには無理だ。
注残も抱えていることだし、ここにも風呂は欲しいからいずれは連れてくるけど、とにかく見た目だけでもどうにかしないとまずいか。
「屋敷なんだが、普通は誰がメンテナンスしているんだ」
「お抱えの庭師ですか、屋敷内は大工仕事のできる者を抱えている貴族もおりますが、上級貴族でもない限り、御贔屓の大工に任せておりますね。
前の男爵家でもそうでした」
「なら、その大工に頼めるかな」
「他に仕事が無ければ、多分ですが問題ないかと」
「悪い、大工に話だけでも聞いてくれ」
「庭などはいかがしますか」
「庭なんだが、あまり金を掛けたくないしな~。
今はいいかな。
草刈りなら俺でもできるし」
「そ、それは止めてください」
すぐに止められた。
「どこの世界に男爵様ご本人が草刈りをするのですか」だって。
庭いじりは許されるらしいのだが、廃墟の草刈りはダメらしい。
どこに基準があるのかわからないが、それこそ奴隷でも使って草を刈るか。
「俺は二週間ばかり、王都を離れるから大工の手配だけは頼むわ。
急ぎの連絡はアイテムボックスにでも手紙をくれ。
それで通じるから」
「そうですね、ご主人様はそれが使えますから便利ですね」
とにかく、拝領した屋敷の検分は終わった。
結局、庭の雑草がすごすぎて中に入れず、外からの検分だけになるが、大工にも外回りだけで、当分はいいかな。
内装は俺の使いやすいように、それに風呂も欲しいからモリブデンから連れてこないととは思っている。
俺たちは一旦店に戻り、ダーナに冒険者ギルドに行って指名依頼を受けてきてもらうように指示を出す。
で、残りには、俺がダーナたちいつものメンバーを連れて一度拝領した領地に行くことを伝えた。
「え、お国入りには準備が間に合いませんが……」
すぐに元メイドたちから反対されるがそこは俺にも考えがある。
「お国入りは、しないよ。
俺はダーナに付き合って指名依頼の手紙の配達だ」
「え、え、そんな」
「だから、一度この目で街を見てみたい。
その上で準備を整えてからのお国入りするから、先に進められる準備だけでもしておいてくれ」
元メイドや騎士たちは納得していない顔をしているが、理屈だけは通るから、何も言えない。
そもそも商売人の冒険者である俺が貴族になるのがおかしいのであって、貴族が冒険者の真似事をしているのではない。
まったく俺のような酔狂な貴族がいない訳でもないらしいが、それはあくまで貴族の子供と言った立ち位置での話で、ご当主ではまず聞かない話だそうだ。
まあ、王都でのんびりと何か月もパーティー三昧している連中には冒険などしている暇もないだろう。
幸い、俺の寄り親になる伯爵からはこの後のことについて何にも言ってきてないから、さっさと王都から逃げ出すことにした。
ダーナもギルドから戻ってきたので、俺はそのまま王都を出ることにした。
前にギルドで指名依頼を出した時に王都からシーボーギウムまでの経路は聞いてある。
また、モリブデンで預かっている奴隷たちも経路は知っているだろう。
そんなに詳しくはないだろうが、一度モリブデンに戻ってからそのあたりの情報を仕入れてから移動することにした。
数日でモリブデンに戻ると、一度店に入り、みんなと相談してみる。
明日、奴隷たちに情報などを聞いてみるということになった。
翌日、俺のところで預かっている奴隷たちに聞いてみると、どうも案内するまでは自信が無いという。
元から期待はしていなかったが、どうするか。
店のみんなに聞いたところ港町と言うこともあり、ここから船で行くこともできるらしく、どうしよう。
船をチャーターする手もあるが、俺のところでも船はあるが、現在修理中だ。
この後フィットチーネさんにも聞いてみると、船でも行けるし、ここならば何度も船で行った船乗りも簡単に捕まるだろうということなのだが、費用が割高になるそうだ。
ならば、歩いていこうということになり、もう一度王都に戻り、希望者を募ると護衛として購入した奴隷全員が希望したので、ダークエルフの一人と、元騎士を連れて移動することにした。
久しぶりにパワーレベリングだ。
と言っても、ハーフのダークエルフのジーナだけで、残りはすでに十分にランクが高い。
ハーフのダークエルフはシーボーギウムで冒険者グループを率いていたリーダーだ。
名前を聞いたらジーナだと答えてくれた。
ダークエルフは王都では差別されがちな所、混血と言うことで一段と下に見られている。
ややもすると簡単に迫害されがちなハーフのダークエルフであることから、同じような境遇の少女を集めて冒険者グループを作りシーボーギウムを中心に活動してきたとか。
それも、シーボーギウム周辺を襲った疫病で、資金繰りにつまり奴隷落ちで俺のところまで流れてきたそうだ。
とにかく、この国いやこの世界かもしれないが、獣人亜人とのハーフはとにかく差別の対象らしいのだが、俺は気にもしていない。
心配するのならば俺の仲間たちだが、まあ、ダーナは同じダークエルフではあるが、そんな感じは持っていないようだ。
ダーナが気にしていないからか、他の者たちも今のところ見た感じでは問題なさそうだ。
まあ、俺が気にするところは種別がどうとかではなく性格や、見た目。
特に見た目は大切だ。
そんな俺でも、気にするどころか……ムフフ。
何せ全員がエルフの血を引く美人だ。
しかも、ダークエルフってダーナもそうだが、やたらとスタイルが良い。
病院で魔法を研究しているガーネットもエルフなので、これも美人ではあるがどちらかと言うとスレンダーな美人に対して、ダーナに代表されるダークエルフたちは皆メリハリの利いた美人ばかりで、おじさんはうれしいよ。
王都を出ると、すぐに森になるが、流石王都そばだけあって、強い魔物は出てこない。
こんなのでは、冒険者は上がったりだと思っていると、どうも王都での仕事は今回のような手紙の配達か、護衛の仕事が多いらしい。
街道筋を珍しく進んでいくと、もはや定番、お約束の盗賊が現れるがこれも瞬殺だ。
冒険者を率いていただけあってハーフダークエルフのジーナは躊躇なく俺たちを襲ってきた盗賊たちを刈っていく。
俺では無理な作業だけあって、正直助かるが、これができないのは俺だけのようだ。
ダーナも、ナーシャも顔色一つ変えることなくジーナの打ち漏らしを刈っている。
当然だが、元騎士だったスジャータは戦争経験者だけあって問題はないことはわかっていたが、皆大丈夫だと俺は情けなくなってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます