第43話 ポテトチップス

「それは良い。

 これは売れそうだと分かっただけで、次に進めるよ。

 明日にでも、フィットチーネさんと会ってから、相談してくる。

 となると、ある程度の量は欲しいかな。

 君たちも食べた分以上には手伝ってもらおうか」


「「はい」」

 二人に、手伝ってもらいながら、開けた麻袋に詰まっているジャガイモ全部をポテトチップスに加工した。


 二人に芋を洗ってもらったり、薄く切ってもらったり、ダーナには芋を揚げてもらうのを代わってもらったりもしたが、とても疲れた。

 どれだけ売れるかは不明だが、売れるようならば何か考えないといけないな。

 まあ、明日相談してからだ。


 割と遅くまでかかってしまったが、ポテトチップスを作り、全部アイテムボックスに仕舞った。

 これで、アイテムボックス内での時間経過が無ければ、湿気らずに美味しい状態で、フィットチーネさんに食べてもらえる。


 その後は、軽く汗を拭いてから、お楽しみ時間だ。

 本当に早く風呂が欲しい。


 10日近くもしていなかったので、この日はとてもアグレッシブになった。


 しかも、ダーナがダウンした後にナーシャが俺の物に異常に興味を示したので、なめてもらった。

 言い訳をするわけじゃないが、決してまだ手を出すつもりはない。

 ナーシャが自分で言ってきたので、これくらいならと俺の後始末を頼んだだけだ。


 しかし、本当は危なかった。

 危うくロリに目覚めるところだった。


 俺の始末が終わった後に、お礼に俺はいつも以上に丁寧に尻尾をブラシで梳かしてあげて、ナーシャも果てさせた。

 とても充実した夜だった。


 翌日にフィットチーネさん宅に向かった。

 いつものように執務室に通された俺たちは早速、昨日作ったポテトチップスを取り出してフィットチーネさんに食べてもらった。


「これは、前にお姉さん方から希望の有ったお酒のつまみにどうかと思いまして作りました。

 食べてみてください」


 フィットチーネさんは恐る恐るだが食べてももらい、ダーナたちと同じように驚いた顔をして、ものすごい勢いで俺に言ってくる。


「これは美味しいですね。

 何と言うのですか」


「これはポテトチップスと言います。

 ジャガイモの加工品です」


「ジャガイモって、あのジャガイモですか」


「はい。

 ですが加工に手間がかかりますので、あまり安くは卸せ無いのですが」


「いえ、値段の方は気にしないでください。

 これは使えると私は思うのですが、実際に接待する人に意見を聞きませんといけませんね」


 フィットチーネさんはそう言うと、前に酒を取り出した時と同様にそのまま娼館に連れて行かれた。


 娼館ではすでに営業をしているので、お客様が幾人かがロビーなどにいる。

 昨日からお泊りのお客様がお帰りの様で、また、朝から日中だけ楽しむつもりで訪ねてきている方もいた。

 ただ、流石にお姉さん方はまだ客を取っていないので、今はこの娼館の経営の方で頑張っているようだ。


 そんなお姉さん方はすぐに集まってもらい、みんなで試食会が始まる。

 酒のつまみということで、実際にお客様にお出しするお酒も用意して、酒と一緒に食べていた。


「レイさん。

 これ美味しいよ」

「お酒に本当によく合いますね」

「これなら、誰に出しても喜ばれること請け合いです。

 何と言うのですか」


 お姉さん方にも大好評だった。

 名前を聞かれたから、フィットチーネさんに聞かれた時と同じように答えた。

「ポテトチップスと呼んでおります」


「ポテトチップス?」


「ええ、実はジャガイモの加工品なんです。

 私の田舎でジャガイモのことをポテトと呼んでいましたから、そこから名前をとりました」

 俺は適当に答えた。


「フィットチーネさん。

 是非、店で出したいです、これを」


「ええ、これならお酒とよく合いますし、絶対に受けがいいですね」


「レイさん。

 これ、いくらで卸してもらえますか」


「そうですね。

 原材料の説明はされましたが、値段までは聞いていませんでしたね。

 是非、この店に置きたいので、買いたいのですが、いくらになりますか」


「それなんですよね。

 まだ、これは私たちしか作れませんが、そのうち材料があればだれでも作れるようになりますから、いくらにするべきか、正直私にはわかりません」


「え、材料って、これレイさんがつくったのですか」


 この後、簡単に作り方を公開してから、話し合った。

 問題は、味付けの決め手である塩の存在だ。

 俺の作る塩はまさに塩化ナトリウムそのものだ。

 雑味が全く無いので、ある意味うまいかと言うと、う~~んと言えなくもないが、俺がこの間王都で捌いた塩と比べると雲泥の差がある。

 あの塩でははっきり言って、似たような味にはなるだろうがうまいとは言えないだろう。

 何より、見た目に問題が出る。

 色んなものが混ざりすぎているのだ。

 それこそ色も白色と云うよりも灰色に近い。

 俺の使う塩と同じようなものを使うとすると、ある程度の大きさの岩塩を仕入れてから、それを細かく砕いて使うしかないだろう。

 これも使われていないとは言えないのだが、はっきり言って、これが酷く高価で、まず出回らない。

 王都でも、それこそ公式な晩餐会などの場面でもないと使っていないのではとすら思える。

 そんなことを考えると、俺の作るポテチは相当高価でないといけないらしい。

 話し合いの結果、あの塩を取引時に使っている樽で、一樽金貨一枚と言う値段で引き取ってもらえるようになった。

 まあ、この世界ではポテチ用に袋なんか作れないし、紙で代用しようにも紙の値段が恐ろしく高価なのだ。


 俺もそのうち製紙業にも参入しようかと考えたくなったくらいだ。

 だが、樽でポテチを取引するのは良いが、湿気が心配になって、その辺りを聞いてみたら、問題無いと言われた。

 なんでも生活魔法で、乾燥くらいはすぐにできるというので、俺は常に乾燥状態で保管してくれと一言注意して、後で一樽を届けることで娼館を出た。


 俺は前にジンク村に寄った時に塩やにがりの保管用に新品の樽を購入していたから、その塩を保管している樽を使って、昨日作ったポテチを詰め、娼館に届けてもらった。


 まだ、材料は……、もう一樽ポテチを作るには塩が足りそうにない。


 俺のアイテムボックスにある海水を使って、塩づくりをしてみたがなにせ海水からだと塩は3%しか取れないので、今は良いが直ぐに足りなくなりそうだ。


 この後数日は、海に行っては海水をアイテムボックスに大量に取り込んだり、帰りにジンク村に寄り真新しい樽を買い込んだりと、モリブデンに戻れば戻ったで、前に買い込んだ残りの麻袋で9つ分のジャガイモの加工に三人で全力で当たった。

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