第44話 王都での商売
海水を取りに行ったついでに寄ったジンク村で買い込んだ樽の数だけではどう考えても足りそうに無い。
俺は慌てて、モリブデンで探そうとしたら、結構割高であったので、今後が海水を取り込みに行くときにジンク村まで足を延ばして、そこで真新しい樽を仕入れることにした。
そんな生活をしていると、娼館から呼び出しがあったので、行ってみるとドースンさんが念願を果たし、王都に戻るという。
その護衛を頼むと言ってきた。
今回はキャラバンという力強い味方がいないので、断ろうかと思ったが、そこはドースンさんはフィットチーネさんのご友人だ。
暁さんにも声を掛けてあり、一緒に護衛する言うので、引き受けることにした。
油や、ジャガイモ、それに樽など、色々と仕入れないといけないものが出て来たので、ある意味渡りに船だった。
明日出発という話になったので、俺は娼館にまた酒とポテチを卸して、旅の準備に走る。
今までため込んでいた物は、何度もの旅で色々と使ってきたので、仕入れをする必要を感じていた。
家に戻り、ダーナやナーシャに買い物を頼み、俺は他に便利グッズなどがないか街中を散策しながら探して歩いた。
翌朝、フィットチーネさんの奴隷商会の前に集合してから、王都に向け出発した。
今回も8日で半分以上が夜営という旅程だったが、それも慣れれば案外不便は感じない。
でも、普通に移動ならばやはり10日の距離だそうだ。
宿に持ち込めないような商材などを抱えているのなら止むを得ないが、今回のドースンさんのように、只遊びで移動するような人や、家来など、夜間警備に人がいるような大店の移動ならば、主人などは各村に泊まりながらの移動が一般的なのだそうだが、ドースンさんの場合、ほとんど仕事を放り出してきてのモリブデン行きだったので、急ぎ帰って仕事をしないとそろそろまずいらしい。
遊ぶ前に仕事をしろよと、俺は心の中で言っておく。
まあ、また酒の仕入れをすることができるので、俺にとっては何ら不都合はない。
いや、メリットしか無いのだ。
王都までの旅程では、今度も特筆されることは無く、途中で寄る村々で、ジャガイモや油などを仕入れながらの移動だ。
王都に着いて、護衛は解散となるが、俺は解放されずにバッカスさんのところに連れて行かれた。
当然、ドースンさんとバッカスさんとの間では、まず、ドースンさんの自慢話から始まる。
俺いなくても良いよな。
はっきり言って、親父たちの暇つぶしに付き合うほど暇でもないんだが。
自漫が始まるとすぐにドースンさんを遮るようにバッカスさんが俺の方に来て、話しかけて来る。
「レイさん。
あの話はどうなりましたか」
「はい、一応話は付けてあります。
幸いまだお姉さん方の噂が広まってはおらず、モリブデンでは経営者としての認識しかないようで、時間は取れるようですから、一度くらいならばと了解を頂きました。
お値段は正規料金になりますが、それに、バッカスさんはドースンさんのご紹介となります。
その辺りをお含みおきください」
「ああ、それは覚悟しているから良いが。
そうだな、では来月辺りにお邪魔させてもらおうか。
ほら、ドースン。
直ぐに紹介状を寄こさんか。
それを持ってモリブデンに運んでもらうから。
と言うことで、レイさん。
悪いが明日にでももう一度こちらに来てもらえないか」
「ええ、それは構いませんが、ご依頼ということでしょうか」
「ああ、そうなるかな。
それよりもドースン。
貴様はモリブデンのどこに泊まったんだ」
「あ、俺か。
俺は仕事の件もあったので、フィットチーネ奴隷商会に厄介になったんだ。
しかし、本当にふて~~野郎だ、あいつは。
綺麗なかみさんに賢そうな子供までいるのに、至宝を独占しやがって…ブツブツ」
「そうか、ドースンは宿を取っていなかったんだ。
しかし、俺はどうするかな……」
「宿なら、モリブデンも大きな町ですし、外国からのお客様も多く訪れる町ですので、それなりの宿は沢山ありますよ。
商業ギルド辺りに話せば予約できるのでは」
「おお、それもそうだな。
ところでレイさんはどちらにお泊りなんですか」
「王都ですか。
王都ですと、前に冒険者ギルドで紹介してもらった宿に」
「いえいえ、モリブデンです。
レイさんはモリブデンを拠点にしているんですよね。
どこを定宿にしているのですか」
「いえ、宿ではなく、既に拠点を設けております。
最初に、盗賊を倒した時の報奨金などで、かなりお金を頂きまして、お世話になっているフィットチーネさんの勧めもあり、その時に商業ギルドに加盟と、拠点を購入させていただきました」
「へえ、それは凄い。
で、その拠点はどのあたりにおありで」
「フィットチーネ娼館の直ぐ傍です。
モリブデンにお越しに際にはお寄りください」
「え、行商と聞いておりましたのに、モリブデンに店を構えているのですか」
「いえ、将来的には店にしたいとは思っておりますが、今はただの自宅としてしか使っておりません。
あ、自宅で商売の種も作っておりますから、そう言う意味では工房ともいえますかね」
「商売の種?
いったい何を始めたんだ。
酒の卸をしているんじゃなかったのか」
「ええ、その酒に合うつまみが欲しいとお姉さん方に頼まれまして、私の故郷のお菓子を作ってみました。
結構お姉さん方には評判が良かったから、ドースンさんも娼館で食べたのでは。
ポテトチップスと言いますが」
「ポテトチップス?
ひょっとしてあの薄い独特の食感のつまみか」
「ええ、多分そうだと思います。
これなんですが、バッカスさんも食べてみますか」
俺はそう言いながらダーナを傍に呼んだ。
ダーナからポテチを少しばかり出してもらう。
もう毎日の練習のおかげで、ダーナはすっかり自分のアイテムボックスのスキルを使いこなしている。
容量の確認も済ませており、だいたい1m四方って感じだった。
俺に比べて少ないように感じられるが、俺が今の商売している限り、これだけで十分な量だ。
尤も海水などは除くが、王都から運ぶ酒も半分にならないし、途中で採集するアポーの実に至ってはほとんど誤差だ。
今は、娼館に卸すポテチまでも入れてもらっている。
俺の方は原材料の買い出しの際に、全て俺の方に後で移し替えているくらいだ。
ダーナから樽でポチを出してもらい、その中から少しばかり取り出してバッカスさんに渡して食べてもらった。
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