第126話 ピザに挑戦
モリブデンに来るときに乗っていた馬車を引っ張り出して、メイドさんたちを乗せ、王都に向かう。
今回はちょうどいい機会だったので、半分モリブデンに残していたメイドさんたちとメンバーを交代して連れていくことになった。
とにかく、王都の店には風呂が無かったので、不公平になるまずいと俺がただ単に小市民的な臆病であるために出た心配なのだが、それでも交代については問題なく受け入れられた。
店長のカトリーヌ親娘はどうしようもないが、とにかく奴隷として仕入れた元男爵家のメイドたちは入れ替えての出発だ。
元騎士爵の三人は王都の用心棒役として仕入れていたので、交代は無しだが、どうも俺と一緒に居たいらしく、そのうち何か考えよう。
レベル上げの移動が気に入ったのか外でやることが気に入ったのかは知らないけど。
何を外でやるなんか聞かないでくれ。
少なくともナーシャとダーナは野営での秘め事は大のお気に入りのようだ……あ、ばらしてもうた。
馬車移動なので、王都からモリブデンに来た時のようにはいかないが、それでも一々村に寄らずに移動した。
おかげで、一週間はかかろうかという日程も大幅に短縮されて四日で着くことができた。
途中日が沈んでも移動したおかげなのだが、まず普通の人はしないそうだ。
夜は魔物が襲う確率が上がるとかで危険が増すらしい。
ここでは少しの危険でも簡単に人生とおさらばしてしまうからなのか、冒険者でもできるだけ危険を避ける傾向にある。
なんと盗賊の類も夜はお休みらしく、俺たちにとっては夜の方が安全だという何とも皮肉のような現象まで起きている。
うちにはやたらと鼻が利くナーシャをはじめ俺の臆病というシックスセンスまであるのだ。
この俺のシックスセンスは馬鹿にできない。
ひょっとしてスキルだったとかして。
あり得ない話ではない。
何せ大活躍の鑑定先生だって、偶然から見つけられたのだ。
まあ、とにかく俺たちは無事に王都に着き、店に入る。
連れてきた連中には早速店の掃除を始めてもらい、ダーナには食材等の買い出しに娘のマリアンヌを連れて出てもらった。
俺はさっそくお向かいにあるバッカスさんの店に挨拶に向かう。
「バッカスさんはおりますか」
「あ、レイさん。
王都に戻られたのですね。
しかし、前にお会いしてから二週間はたっていませんよね。
モリブデンとの往復に驚くような速さですが、ひょっとしてまだお戻りになられていないとか」
「いや、うちは冒険者の他にも元騎士もおりますし、日が沈んでからも移動ができますから早く着きました」
「そうですか。
モリブデンと王都の間の移動の速さだけでも商売ができそうですね。
無駄話はこれにして、今主人を呼びます」
いつもの店員さんが世間話を切り上げてバッカスさんを呼びに奥に入っていった。
「お~、レイさん。
早かったな。
今うちにものから聞いたけど、本当にうらやましい話だ。
そんな時間で移動ができるのなら、俺なんか何度もモリブデンの娼館に通っているのにな」
本当にぶれないスケベ爺だ。
「おかげさまですかね。
うちには本当に頼りになる奴隷が増えましたしね。
それよりも、明日はさすがに無理ですが、できるだけ早くに店は開きます。
もしお問い合わせがまだあるようでしたら、そのようにお伝えください」
「それは助かる。
できるだけ早くに再開してくれな。
俺もあの店の食事が待ち遠しくなっているしな」
「再開前にドースンさんも交えて食事会でも開きますかね」
「お~、それは良い。
レイさんからのお誘いを待つとしよう」
「今日は挨拶までとして、この後ドースンさんの所にも顔を出しておきます」
俺はそう言ってからバッカスさんの店を出た。
ドースンさんの店でも同じようなやり取りをした後に自分の店に戻る。
店の方は掃除も終わっており、俺と同時に買い出し組も帰ってきた。
俺は一度全員を集めてから、店について説明をした後に、店で出す料理をみんなに作ってもらった。
自分たちで作った料理を前にみんなで食事会を行う。
当然酒も出して、客目線での店のあり方を体験してもらうのが根底にある。
全員で楽しく食事も済ませてから、簡単に相談しておく。
「レイ様。
明日からでも店は再開できますが」
店主のカトリーヌが俺に言ってきたが、流石に開店すればしばらく忙しくなりそうなので、完全な状態まで準備してからの開店をしたい。
「ならば、明日の夜にお世話になっているドースンさんとバッカスさんを招待しよう。
お客様には悪いが、接客の練習に付き合ってもらおう」
俺はさっそく招待状を作り、シルバーナに持たせて二人の所には知らせた。
さすがに今日の明日だと慌ただしいので、招待は明後日の昼にしておいた。
明日はメイドたちにも料理の練習をしてもらう。
簡単なものばかりなのだが、流石に料理を作れるのが母娘だけだと不安が残る。
尤もメイドたちもモリブデンでは色々と作っていたようなので、練習といっても確認の意味合いが強かった。
さすがに俺が暇だったこともあり、レパートリーを増やそうと考えていた。
パンでも作るか。
そう思い調理場に向かうと、そこにはオーブンがない。
パンを焼くためのオーブンが無いので、作ることにしたけどそれならばと、近くでレンガを買ってきて、ナーシャたちに手伝ってもらいながらパン焼きオーブンならぬピザ窯のようなものを作った。
これならパンよりもピザの方がいいか。
さっそく王都のバザーに向かい、トマトのような野菜の他チーズなどを買い込んでさっそく作る。
味の方は俺の知っているピザからは程遠かったけど、つまみ食いをしているメイドたちからは評判が良かった。
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