第168話 パワーレベリングと俺のマッサージ
村に入り込んでいたトレントたちは大方片付いたところで、休憩を取りシーボーギウムの町に戻っていった。
今日だけでもジーナを含め魔法使い三人やムーランはレベルが急激に上昇したようで、少し調子を崩していた。
初めて見たような気がするが、そういえばこの町に来た頃にはナーシャが時々そんな状態になったことがあったな。
俺がツボを押してマッサージをしてやるとすぐに治ったようなのだが、今回もあいつらにしてやるか。
あいつらは自分たちが急に調子が悪くなったことで、変な心配をしていた。
「大丈夫だ。
レベルが急激に上昇したので、それでなのだろう。
すぐに楽にしてやるよ」
俺はそう言って、マッサージを一人ずつ個別にしてやると、みんなあの状態になった。
流石にみんなをここで相手できるはずもなく、今日のところは我慢してもらう。
結局、夕食後に我慢できずに相手をする羽目になったが、連れてきているメイドたちの目さえ気にしなければ実害はないが、どうもあの『ジト目』で見られるのもな~。
翌日にはメイドたちも相手をすることでその場を収めた。
となると、ついでにメイドたちにもパワーレベリングをしておこうと、今度はムーランの代わりにキョウカを連れて、メイドたち数人と一緒にもう一度あの村の方に出かける。
流石にレベル酔いしたメンバーだけは変えないとまずいかと思ったので、メンバーを替えての冒険だ。
まだ案内が必要だったこともあり、ジーナだけは例外だ。
尤も、今回はあまり狩りには参加させない方向で済ませようかと思う。
何を思ったのか、ジーナは先日に懲りずに勝手に魔物と闘ってるが、流石に昨日レベルが大幅に上がったこともあり、今日の狩りだけではレベル酔いするまではいかなかったのだが、メイドたちは予定通り……もとい、予想通りにレベル酔いになり、俺のマッサージを所望してきた。
俺は求められるままマッサージからの一連のお約束をその場でおこなった。
町に帰る前にある程度済ませることができたことで、夜は平和に過ごせることができた。
翌日の残りのパワーレベリングを行い、その後のお約束も済ませて翌日には一旦モリブデンに戻ることにした。
当然、シーボーギウムにも人を残すが、メイドたちと元騎士たちを連れて帰ることにしてある。
ジーナはもともとこの町の出身だということもあり、この町に残ってもらった。
どうせすぐに俺だけでも戻ることになるのだ。
俺たちが乗って来た船が俺たちを待っていてくれているので、それで帰ることになる。
まあ、そういう契約でひと月を押さえているのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、それでもそろそろ自前の船が欲しい。
モリブデンに帰ってから、フィットチーネさんと相談しよう。
俺たちがメイドたちを連れてモリブデンに戻ると、ちょっとした騒ぎになった。
お姉さん方が波止場まで俺たちを出迎えてくれたのだ。
そういえばお国入りするときにシーボーギウムで引き取るようなことを約束させられたっけ、さすがにそこまでは噂にはなっていないようだが、俺との仲が噂になっていたようで、やっかみというか、おらが仲間の思わぬ出世に御祝いというかなんというか俺にあやかりたいような連中までもが波止場にいたので、屋敷に戻るのに時間を要した。
「わざわざ出迎えてもらい非常にうれしかったのですが、……大丈夫ですか。
お姉さん方はモリブデンに限らずこの国では俺よりもはるかに有名ですから、騒ぎにならない方がおかしいと思うのですが」
「大丈夫ですよ。
もう、フィットチーネさんに私たちの身請けの件を話してありますし、フィットチーネさんからはすぐには無理ですが、レイさんに身請けされる方向で了承は頂いておりますから」
「え?
確かに俺は貴族にはなりましたけれど、お姉さん方を身請けするようになるまではもう少しお時間をいただきたいのですが」
「え~、そんなに待てないわ」
「そうよ、おばあさんになってしまうわ」
「レイさん。
領地が落ち着いたら問題ないわよね」
「領地の方は、どうにか目途は見えてきましたけれど、お姉さん方を見受けするお金の方が……」
「「「お金。」」」
「何だそんなことだったの」
「心配したわ。
レイさんが私たちから心が離れたのかと思ったわよ」
「そんなことはありません!」
「大丈夫よ。
そんなに大声で怒鳴らなくとも」
「今ので、レイさんのお気持ちは理解したわ」
「それにね。
私たちの身請けにはお金はいらないのよ」
「へ?」
「確かに私たちは奴隷ですけど、とっくに自分たちの身請けの費用は稼いでいたわよ」
「それに、レイさんが教えてくれた新しい形での娼館が大盛況で、持参金まで用意できるわよ」
「もっとも、レイさんに迷惑にならない分だけ残して、お世話になったフィットチーネさんに渡すつもりだけどね」
「え?
そんなのでいいのですか」
「ええ、初めからそのつもりでしたからね」
なんでもお姉さん方はフィットチーネさんに引き取られる前に、すでに自由になるくらいの稼ぎはあったらしい。
それでも奴隷で娼婦をしていたのはいけ好かない貴族連中に攫われるのを防ぐためだったとか。
フィットチーネさんも、それを理解して今まで主人としていたのだとか。
それに、かねてからフィットチーネさんから良い人を見つけて幸せになれって口酸っぱく言われていたのだとか。
俺がお国入りした後にお姉さん方はフィットチーネさんに俺のことを話したら、初めからわかっていたようにすぐに理解を示してくれたらしい。
それでも、今ある娼館についてどうにかしてからにしてくれとは頼まれたようだ。
フィットチーネさんにしたら、本業が奴隷商なので、娼館を閉めても構わないらしいが、閉めるのならば閉めるで、お姉さん方が閉めてくれとまで言われた。
実質、あの二つの娼館の経営はフィットチーネさんというよりもお姉さん方が回しており、上りだけをフィットチーネさん渡していたようだ。
そのあたりについてお姉さん方から説明を聞いたら、すぐにでも挨拶に出向かないとまずいだろうと、俺の気持ちが許さなかった。
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