第167話 周辺の魔物狩り

 

 とりあえず、近々の課題であった食料については問題が片付いた。

 しいて言うのならば、後は予算くらいか。

 予算、そう予算は問題だ。

 まだ、俺の所持金は……まだ残っている。

 だが、それも日々使っていくうちにどんどんなくなっていくのが問題だ。

 現在は王都の店からの上りも入ってこない状態だ。

 何せ、王都の店を閉じて全員でここにきているので、できる限り早くメンバーを戻すことも考えないとまずそうだな。


  今は、ここでできる何かしらの金策を考えないといけないな。

 手っ取り早いのは魔物の素材だが……相談してみるか。


 フェデリーニさんが落ち着いたら、魔物の買取について相談してみよう。

 そうなると、近場での魔物について知らないとまずいが、このあたりをテリトリーとしていた冒険者がいたな。

 俺は、冒険者のリーダーをしていたジーナを探す。


 ジーナは街の見回りを率先してやっているようで、今も日に数人の孤児を見つけてくるようだ。

 俺はジーナを捕まえて相談してみる。

「ジーナ、この辺りで冒険者として働いていたのだろう」

「はい、ですが……」

 そりゃそうだな。

 うまくいっていれば奴隷なんかに落ちる筈は無かったのだ。

 仲間のけがで、ポーションなどの治療費が嵩み全員で奴隷落ちしていたと以前聞いたことがある。

「教えてほしい、このあたりの金になりそうな魔物についてだが……」

「このあたりの魔物ですか。

 ほとんどの魔物が良い値を付けておりますが……」

「どうした、何か不味そうなことでも?」

「はい、とにかく近くには暗黒の森もありますし、どうしても強い魔物ばかりで……」

「この近くでもそうなのか」

「はい、近くにまで出没してきますね、かなり凶悪な魔物が」

「でも、狩れなくはないのだろう」

「ですが私たちは無理して怪我しましたから……そして……」

 ああ、奴隷落ちのことか。

 だが、それならばみんなでレベリングをしながらならばどうだろうか。

 幸い、俺たちには治療魔法の使えるキョウカやムーランもこの町に来ているので、最悪でもどうにかなるだろう。

 ジーナたちは聖職者に治療をしてもらえずにポーションに頼ったために奴隷落ちしたのだから、それならば良い機会だ。

 様子を見るだけでもしておこう。

 この町を魔物から守るためにもそれは必要なことだろうしな。

「ジーナ、君には悪いが、近くの魔物のことを知りたいので、俺たちと狩りに付き合ってほしい」

「え?」

「ああ、無理はしないし、元騎士のスジャータたちにも護衛を頼むし、俺も一応冒険者で魔物を狩っていたこともあるしな。

 あ、それに俺の護衛の二人も連れていく。

 これならばどうだろうか?」

「わかりました。

 それに私は奴隷ですので旦那様の命令には逆らえませんので」

「悪いな、いやな思いをさせて。

 だが、それも今だけだ。

 レベルさえ上がればそんなに問題は出ないと思うから」

「レベル?」

 俺の話の内容を完全には理解していないようだが、ジーナは案内をしてくれるという。

 俺は早速、みんなを集めて付近の狩りについて相談を始めた。

 この町には王都から連れてきたメイドを含め商売人枠の奴隷たちを残すので、病人の世話をしてもらう。

 それに聖職者の一人も残して、魔法使いの三人ともう一人の聖職者であるムーラン、それに先ほど話に出た騎士たちを連れて森の中に入っていった。


 森ではすぐにゴブリンやコボルトと言ったよくある魔物にすぐに出会う。

 これらの魔物についてはなんら脅威には感じないが、いかんせん遭遇率が王都やモリブデン付近とは段違いに高い。

 それでも俺たちの戦力では何ら問題なく、ガーネットを筆頭に魔法使いのサリーやマーガレットの経験値になってもらう。

 サクサクと魔物たちを狩りながら森の奥に入っていった。

 町から離れると離れるほど魔物たちの分布が変わり、より強い魔物が多く出るようになっていく。

 確かにこれならば冒険者は強くなるだろうが、そんなのは一握りだろうな。

 ほとんどが強くなる前に死んでいくか怪我して引退の憂き目にあいそうだが、俺たちには都合がよさそうだ。

 もしかしたら、効率的にパワーレベリングができるかもしれない。


 廃村になったと言われている村のそばまでくると、もうそこは廃墟ばかりで、村の中まで森が進出している。

 どう見てもおかしいだろう。

 これは完全に魔物によるものだと思ったらやっぱり出たよ。

 トレントと言うやつだったか、あの木のお化けの魔物が村の中を徘徊していた。

 徘徊だけならまだ……良い訳ないのだが、あいつはところかまわず自分の種と言うか胞子と言うかそんなのをまき散らしながら子孫を増やしている。

 トレント一体だけでも普通の冒険者にとっては十分に脅威になるのだが、それが大挙しているなんか悪夢でしかない。

 俺はそう思い、久しぶりに土石流でも出そうかと自分のアイテムボックス内の確認を始めているとダーナとナーシャが嬉々としてあいつらを狩り始めている。

 それを見ていたのか、そのうちにスジャータまで混じり、最後には皆でトレントたちを狩っていた。

 これは完全にパワーレベリングになっているようで、俺はジーナとムーランに、近くにある石でも投げておいてくれと頼むと二人は不思議そうな顔をしているが、俺の言いつけを守り、どんどん周りにいるトレント辺りに石を投げている。

 そんなに力いっぱい投げずとも良いのだが、一生懸命に投げているので、魔法使いたちに火の魔法でも使ってそれらトレントたちを倒してもらった。

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