第12話 ギルドへの報告

 その後俺はバトラーさんに連れられてフィットチーネさんの執務室まで案内された。


「レイ様、どうでしたか。

 さっぱりされましたか」


「ええ、大変助かりました。

 それにこの服までお貸しいただき大変感謝いたします」


「いえ、レイ様。

 それはレイ様にとこちらで勝手にご用意させましたものです。

 是非、そのままご使用になってください」


「え、これは頂けるのですか。

 正直本当に助かります。

 何せ私はあの服しか持ち合わせがなかったものでしたので、その……」


「まあ普通の冒険者の方はそのようなものです。

 それよりも、レイ様はこの後のことをお考えでしょうか」


「ええ、私はお勧めいただきましたように冒険者ギルドに登録はしましたが、できれば商人として生きて行こうかと。

 前にこき使われていた時にも、売り買いの手伝いばかりをさせられていましたから、そっちの方が慣れております」


「そうなんですか。

 てっきりレイ様は高名な冒険者か魔法使いの元にいたのかと思っておりました。

 何せ、盗賊たちをいっぺんに成敗するあの大魔法がありますしね」


 俺がアイテムボックスにある物をいっぺんに出したあの件だ。

 確かに傍目からは魔法で土石流を出したように見たのだろう。

 結果論だが、ある意味小規模な土石流をあの場所に再現してしまったようなものだし、大魔法使いの弟子と言われても不思議はない。

 さてさて、この後どのようにごまかそうか。

 俺の作ったカバーストーリーに矛盾の出ないように、ここでも新たなカバーストーリーを作らないといけない。

 まあ、伊達にわずかな時間スキを見計らって読み込んだネット小説フリークではない。

 しばらく沈黙後に俺の考えたストーリーを披露してその場を収めた。


「そうですか。

 本当にご苦労されたのですね」


「ええ、先代の知り合いに大魔法使いがおり、何度もそこに手伝いとして貸し出されましたから、護身用にとあれだけを教わった訳なんです。

 ですから私の使える攻撃魔法はあれだけなんですよ。

 冒険者で生活なんてとてもじゃないですが、無理だと考えております。

 落ち着いたら、行商からはじめてみようかと」


「それが良いですね。

 行商を始めるようでしたら、私と同じ商人ギルドへの登録をお勧めします。

 行商先での商売ですが、冒険者の身分でもできますが、量がかさみますと要らないところから目を付けられますし、何より、この町での仕入れや販売で圧倒的に不利になりますから、商人ギルドへの登録をお勧めします。

 もし登録するようでしたら、私もギルドにご一緒しますから、その節はお声がけください」


「ありがとうございます」

 そこから、雑談を交えて、色々と話をしていく。


「そうそう、報奨金が出ました。

 また犯罪奴隷のあいつらですが、領主様が一括での買い上げも決まり、直すぐにお金が支払われるそうです」


「そうですか、大変助かります」


「明日にでも報奨金をお渡しできますので、明日、またこちらに来ていただけないでしょうか」


「分かりました。

 何から何まですみません」


「いえ、こちらこそですよ。

 後、レイ様の御連れした虎人族の少女の件ですが、少々厄介なことになりそうなんです。

 まだ、回復していませんので、もうしばらくお時間がかかりますが、そちらについても後日ご相談させてください」


 お茶を頂いて俺はフィットチーネさんと別れた。

 そうだ。

 まだ、ギルドに報告を入れていない。

 まず薬草をギルドに降ろして依頼を完成させないといけない。

 また、盗賊のアジトから奴隷少女を保護したことも伝えないとな。

 俺はフィットチーネさんの自宅から急ぎ足でギルドに向かった。

 もう夕方近くになっていたこともあり、ギルドの中は混んでいた。

 これはちょっと時間がかかりそうだと、諦めてギルド併設の食堂で休んでいた。

 すると俺の横に、今朝受付をしてくれたあの人がやって来た。


「よう、また活躍したらしいな」


「へ??」


「盗賊のアジトを見つけたんだって」


「あ、そのことですか。

 その件も報告に上がろうとしたらこの賑わいですからね」


「だと思ったよ。

 いいからついてこい」


 そう言われて俺はギルド受付の奥に通された。

 多分応接用に使われている部屋だろうがとにかく殺風景な部屋に通された。

 何とあの主任さんだろうか、あの人は一人の女性を連れ俺の向かいに座った。


「まず、紹介しておく。

 彼女は新人の受付嬢だ。

 貴様の面倒を見るように言っておいたから、明日からは彼女のところで受付を済ませるように。

 それとだ、新人の紹介は後でさせるから、まず報告だけを聞かせてくれ」


 そう言われたので、薬草を取りながら森の中に入っていったら見つけたと言って、簡単な場所を報告しておいた。


「中で何か持ってきたか」


「大したものは何も。

 弱っていた奴隷の少女がいたからとにかく彼女だけを保護しようと必死でしたしね。

 あ、近くにあった金貨をポケット一杯には持ってこれたかな」


 うそぴょ~~~ん。

 かなりたくさん持ち出したから、大したものは残っていないだろうな。

 でも全部持ってきたわけではないから、まだ何かしら残っているかも。

 掘り出し物もあったりして。


「ああそうか。

 別にいいがな。

 盗賊の物は発見者にその権利があるしな。

 それより連れて来た奴隷は、フィットチーネさんのところか」


「ええ、私に頼れるのはこの町では彼だけですし、何より彼は奴隷商ですからね」


「ああ、そうだな。

 お前らが連れて来た盗賊たちもフィットチーネさんが処理したからな。

 まあいいか。

 それよりもこれからが本題だ。

 明日、俺たちを、お前の発見したアジトまで案内な。

 これ、早速指名依頼だから断るなよ」


「ええ、分かりました。

 明日朝一番にお伺いします」


「それでいい。

 後は、薬草の件だが、薬草は取れたのか」


「ええ、発見が薬草を取り終わった後でしたから」


「なら、それも処理しておこう。

 あ、そうだ。

 マーサ、早速受付嬢の仕事だ」


 そう言って、連れて来た少女に仕事を振っている。

 その少女だが、年のころは13~14歳といった感じで、JCくらいのちょっとした美少女だ。

 彼女も受付嬢としてそれなりの人気を得るだろう。

 まあ、ロリ限定だが、俺は違うぞ。

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