第59話 皆の買い物
この後も、俺はフィットチーネさんと少し話がしたかったので、奴隷たちをカトリーヌに任せて、俺の店に連れて行ってもらった。
その際、彼女たちの服などを町で買ってきてもらうように、お金をカトリーヌに渡して、数着の私服と、下着類、そのほかカトリーヌ達でも何か足りないものが在れば好きに買ってきてもらうように指示を出してある。
一応後で、内訳を報告させるが、こういった女性ものの買い物などは、頻繁に頼んでいるので、楽なものだ。
とりあえず奴隷の女性たちは同じ女性に任せて、家の改造についてのアドバイスを求めてフィットチーネさんと話を始めた。
「風呂ですか。
今のまま、娼館を自由にお使いになっても私は構いませんが」
「確かに助かっておりますが、私のところにも女性が増えたこともあり、そろそろ欲しいなと考えていましたので、ジンク村のドワーフに知己を得たこともあり、相談しましたところ先日彼の知り合いがした下見に来てくれましたが、あいにく屋敷内には難しいと」
「そうでしょうね。
あの屋敷は私が勧めた手前申し訳なく感じてはおりますが、確かに古い造りですから……」
「いえいえ、あの値段で買えたことにとても感謝しております。
ですが、私の我儘ですが、どうしても内風呂が欲しくなりまして、相談しましたら、裏庭に別棟を立てればできない話でもないかと」
「別棟ですか。
確かに。裏には馬車用の厩舎や、馬車の保管場所も十分にありましたね」
「ええ、ですので、別棟の建設を考えているのですが、何か町に手続きなど要りますか。
あいにく、そういう処は全くの不勉強で恥ずかしい限りなんです。
あの屋敷も全部フィットチーネさんに任せきりで入手しましたし」
「そうですね。
町への申請等は要りませんよ。
表通り沿いならまだしも、敷地内での工事ですし、あそこは表通りからは見えませんしね。
精々資材搬入時に周りを騒がす程度で、その時にちょっと周りに対して挨拶くらいは必要でしょうが、あそこはね~~」
確かに、あそこはフィットチーネさんの娼館ができて人の流れが変わりつつあり、それにあやかろうと、数件高級娼館の建設も始まっている。
なので、少々騒がしくとも、今更って感じだ。
それに、俺らの場合、資材搬入の時は俺が資材を運べば騒がしくある筈も無い。
「そう言うことなら、こちらに余裕ができた時にでも別棟の建設を考えておきます」
「そうですか。
それが良いでしょうね」
フィットチーネさんとの話し合いも終わり、俺の抱えている問題もとりあえず今のところ全てに目途が付いた。
俺は自宅に戻った。
「ご主人様。
お帰りなさいませ」
「ああ、ただいま」
「あの~、他の方は」
カトリーヌの娘のマリアンヌが俺に聞いてきた。
「ああ、今、君の母親に、新たに仲間に加えた女性たちの買い物を頼んでいる。
服とか下着とか、色々と有るだろうが、俺は女性ものをよく知らないからな」
「あ、そう言えば私たちの時にも色々と買ってくださいましたね。
なら、お母さんは奴隷たちを連れて帰ってくるのですか」
「ああ、そうなるな。
まずは昼の準備をしようじゃないか。
新たな仲間と一緒に、食事をしよう。
ささやかだが、歓迎会という訳だな」
「歓迎会?」
そう言えば一々奴隷を買って歓迎会などする者などこの世界にはいない。
奴隷は財産であって、人では無いし、何より従業員も含め、歓迎会などと言う風習は無さそうだった。
令和の日本でも、いや、あの職場に限りだろうが、俺もしてもらったことが無い。
「とにかく、テーブルがいるか。
もう少し大きめなテーブルと椅子がいるな。
ダーナ、悪いが俺と一緒に買い物に付き合ってくれ」
「ご主人様。
私も一緒に行って良いですか」
「ああ、構わないが、ナーシャ、直ぐ戻るから悪いけど留守番を頼めるか」
かわいそうだが、誰か留守番を置いておきたい。
この場合ナーシャしかいないのだが、彼女の機嫌を取るためにも、俺はナーシャの頭をなでながらやさしく言ってみた。
「ご主人様?
本当に直ぐに帰ってくるの」
「ああ、直ぐに帰るよ。
ナーシャは覚えていないかな。
ナーシャと一緒に家具を買いに行った時の事。
今度も、仲間になる女性たちの家具を買ってくるよ。
と言っても、ご飯を食べるテーブルと椅子だけだけどもな」
「分かった。
なら、待っています」
ナーシャが居ればまず問題無いし、何より店とは言っても、ここに直接買いに来る者などいない。
何せ、店先で物を売っていないのだから。
うちはいわば商社のようなものだ。
俺が営業に出て回り、納品までも済ませる。
差し詰め、ダーナは搬入トラックのようなものか。
ダーナの持つアイテムボックスを使っての納品だからな。
そんなくだらないことを考えながら、三人で、今度は繁華街の方に向かった。
俺の店はフィットチーネさんのお陰で、フィットチーネさんの高級娼館の直ぐ傍にあるから、立地的には貴族街に近い高級住宅街のはずれにあるため、人の通りは少ないが、あ、最近高級娼館のために身なりの良い人が増えたが、それでも治安は多分この町一番に良いが、日常品などを扱う店は周りには無い。
当たり前の話で、この辺りにある店や住宅などはそれこそ上流階級の人ばかりだ。
自分で買い物など下手をすると今まで一度もしたことの無い人ばかりだ。
そんな立地で、商品単価の安い日常品など扱っても客など来ない。
俺はもっと庶民の集まる繁華街の方に向かった。
ギルドの近くには、まだ、高級品を扱う店が多いが、それでも物の良い日常品を扱う店がちらほらある。
俺は、前に買った家具屋に向かい、大きめのテーブルと、椅子を4つ買った。
「あれ、旦那。
今回はあのお嬢ちゃんと一緒じゃ無いのか」
店の主人は俺のことを覚えていたようだった。
「店番をしてもらっているよ」
「え、あんた商人なのか」
「ああ、駆け出しだが、フィットチーネさんの娼館と取引をさせて貰っているんだ」
「何を扱っているんだ」
「王都から高級酒などを買い込んで売っている。
今回は、店の経営が順調になったので、新たに従業員を増やしたから、その受け入れのためだ」
「そうなのか、景気がよさそうで何よりだ。
今後もごひいきに」
「あ、そうだ。
あとで、このダーナに新たな者を連れて来させるから、ベッドなどを選ばせるので、よろしくな」
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