第82話 泡踊り
「何、報告と相談って」
そこで俺はガーナを新たに買った経緯を説明して、お姉さん方がお仕事を始める時に、便宜を図ってもらえるようにお願いだけはしておいた。
「無理はしないで良いですから。
ドースンさんの方も期待はしていないようですし。
それに、こちらの状況ですか。
新たに加わった女性たちの件で忙しい事は伝えておりますし」
「そうですね。
そろそろ私たちは客を取ることを控えて本格的に経営だけに取り組もうかと話していたことですし。
当分、ひょっとしたらもう無理かもしれませんね」
「え、そうなんですか。
がっかりする方も増えそうですね」
「これもレイさんのせいですからね。
何を他人事のように」
「え、俺のせい??」
よくよく話を聞くと、ここ連日大忙しで、お姉さん方が出ずとも予約が取れにくくなっているのだとか。
それも、お姉さん方の教育で、どこよりも一段上質なサービスが受けられることもあるが、何より、宴席で出される酒に、おつまみの評判がずば抜けて良く、評判が評判を呼び、新人の娼婦でも予約が取りにくく、ランキング上位に来ると云っても、既にほとんどの娼婦は予約が1週間単位で取れなくなっているとか。
女性の体調の管理もあり、無理はさせたくないようだが、それでも少しは無理しているとかで、また、増員を考えているとも言っていた。
フィットチーネさんの方からは、近くに別館でもとの声も出てきているのだそうだ。
「そんなことになっているのですか」
「え、聞いていないの。
先日から、ポテトチップスだけでなく、唐揚げの粉やたれなども以前の倍を納入してもらっているのよ。
あ、そうそう、また石鹸をお願いできないかな。
みんな、毎日使うでしょ。
それで、そろそろ……」
「石鹸の方は、直ぐにでも……、あ、無臭まではあるけど、安いのは今手持ちが。
でも、店に戻れば……」
「後ででいいわよ。
でも、まとまった量をお願いしたいから明日の昼間にでも来てほしいかな」
「分かりました」
その後は、雑談後に、風呂を借りることにした。
もう、俺の連れて来た女性たちは風呂から出てきており、奥で俺のことを待っていた。
俺は彼女たちに声を掛けて、先に帰らせ、本当に久しぶりにゆっくりと風呂に浸かった。
一人で風呂に浸かるのは久しぶりだ。
あれ、ひょっとして、この世界に来て初めてかもしれない。
もともとこの世界の風呂は贅沢品だ。
フィットチーネさんがこの娼館を準備してなければ、あ、フィットチーネさんの自宅の風呂をお借りしたかもしれないが、あの時も傍にはメイドの人がいたような。
それで、俺にサービスまでしようかとしていたような。
流石にその時は断ったが、ちょっと惜しい事をしたような気がしてきた。
尤も今はそれ以上のことを、連日のように楽しんではいるが。
思えば、この世界に飛ばされて、それもチートを持たずに、大丈夫かと思ったが、良い人達に巡り合い、どうにかなっている。
いや、どうにかどころか、完全に勝ち組の人生を謳歌している。
………
俺の持つアイテムボックスと鑑定先生はチートか。
商人をしている以上、これ以上ないチートだったが、それでも運が良かったとしか言えないな。
そんなことをしみじみ考えていると、風呂の扉が開き、美女が入ってきた。
湯気ですぐに誰が入って来たのか分からなかった。
あいつらもう一度俺のことを洗いに入って来たのかと思ったら違い、この国の至宝と呼ばれたお姉さんの一人だった。
「良かった、レイさんまだいたのね」
「え、エリーさん。
今大丈夫なのですか」
「大丈夫よ。
「そうなんですか。
なら安心ですね。
俺は運が良かったかな」
「運が良かった?」
「だって、本当に久しぶりに、エリーさんの裸を拝めて」
「あら、運では無いのよ。
今日は商売抜きにサービスしてあげる。
あ、やっぱり今日は、商売抜きでは無いのよね。
聞いたわよ」
「え、ガーナのことですか」
「え、何のこと。
また新しい子を
「誑し込むなんて人聞きの悪い。
人助けですよ」
「そうですよね。
レイさん人がいいから。
違うのよ。
前にここで、楽しい事
それを小耳にはさんだので、今日は実際にそれを見て見たいの」
何のことか分からなかったから、よくよく聞いたら、前にここで、固まらなかった液体石鹸の有効利用として、女性たちに泡踊りをしてもらったのだ。
その後石鹸だらけにして、ちょっと掃除に手間がかかったのだが、それでも楽しかった。
液体状の石鹸はそれこそふんだんに持っているので、またしてもらおうと考えていると、エリーさんはその泡踊りに非常に興味を持ったとのことだ。
なんでも別館の話が出ているので、ここと差別化を考えていて、そのアイデアを貰いたいようだ。
サービスしてくれると云うのなら俺の方に拒む理由などない。
それこそ王様にだってできないことをしてもらえると云うのだから、不敬罪として処罰されても何ら未練はない……いや嘘です。
まだ死にたくはありませんが、それでも、今から天国の時間だ。
流石に前の様に全員でした訳でないので、風呂場に石鹸が散らかることは無く、お湯を流せば後片付けも簡単に済んだ。
まあ、前の経験もあったので、使う量には気を使ったが、これなら
いや~、天国って、割と傍にある物だ。
俺が余韻に浸っていると、横で、やや興奮気味のエリーさんが俺に言ってくる。
「これ、使えるわよ。
王都でも聞いたことないわ。
こんなことされると男の方って、気持ちいいのよね」
「ええ、とても気持ちよく、特にエリーさんにしてもらえるのなら、それこそ天国にでも行ったような感じでしょうか」
「これ、別館の目玉にならないかしら」
エリーさんはそうぶつぶつ言い始めた。
さっき聞いた別館の話だが、与太話では無く本格的に検討している様だった。
別館を持つようなら、また増員を考えることになるから、本当にお姉さん方は経営に本腰を入れざるを得ないな。
もう、よっぽどのことでも無い限り、お姉さん方を買える人は出ないだろうな。
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