第199話 いざ王都に
俺は一緒にいる魔法使いたちに断ってから屋敷に戻った。
屋敷でも、俺宛の手紙に着いて話題に上っており、少しざわついている。
俺は、みんなに現状分かっていることを説明して、すぐに王都に向かうことを準備させた。
今回の王都訪問についてもお姉さん方のうち、エリーさんが付いて来るらしい。
前回の王都訪問時の様にモリブデンで変わるかもしれないけど、ここから船でモリブデンに向かうのには付いてきてくれる。
また、今回に限り貴族としての仕事になりそうなこともあり、現在シーボーギウムに詰めているメイドからメイド頭だったゼブラも同行してくれることになった。
お姉さん方は王室や、上流貴族の人脈は持っているが、弱小貴族の仕来りなどのついては詳しくない。
その欠けている部分を元男爵邸のメイド頭だったゼブラが補ってくれるそうだ。
バトラーさんも王都に行ったことは少なく、そういう王都での付き合いなどでは不安があるとかでゼブラが一緒だということに喜んでいた。
俺が王都で下手を打ってお取り潰しになることを恐れていたようだ。
失礼なって思ったけど、無いとも言い切れないのが情けない。
今回の移動は今までとは少し異なり、メンバーも異様だ。
異様と表現は少し失礼な気がするが、今回はエリーさんの他に俺のお目付け役として元メイド長だったゼブラもついてくる。
それに、王都の屋敷に慣れてもらうためにバトラーさんも今回初めて船に乗ってモリブデンまで向かうことになった。
すぐに船を出してもらったのだが、これにはバトラーさんが散々難色を示していたが、急ぎだったこともあり、無理やり船に乗せた格好だ。
ちなみにバトラーさんが難色を示していたのには、移動の準備が全くできていないことだったと後でわかり、俺とエリーさんからアイテムボックスについて説明をしておいた。
いくらでも物ならば必要な分だけモリブデンや王都、それにシーボーギウムからいつでも取り寄せができることを説明しておいた。
バトラーさんは非常に驚いた様子だったが、納得したようでその後は素直に俺たちの言うことに従ってくれる。
途中船の中から王都にいるメンバーに、できるだけ今回俺の呼び出しについての情報を集めるようお願いをしておいたが、王都の方でもそれは了承していたことで、すでに調査を始めていた。
まだ、情報と言えるほど集めることはできてなかったようだが、それでも今まで集めた情報を俺に教えてくれた。
どうも俺の呼び出しに背景には王都での政争があるようだ。
俺の寄り親の伯爵様と、ライバル関係にある侯爵様との政争がいつも以上に活発になっているとか。
その原因がどうも俺の男爵就任とそれに伴う領地の下賜にあるとか。
そもそも、俺の男爵への就任は、あの呪われた領地を俺に擦り付けるためのもので、『断れるものなら断っていたよ』って声を大にして言いたかったが、どうも王都の貴族連中には伯爵の勝利のような扱いだとか。
なんでも、俺から領地を取り上げるためのプロジェクトと呼べばいいのか策謀が始まったとか。
俺はその話を聞いて頭にきたが、領地を返上できるのならば返上してもいいかなとも思ったので、エリーさんにそれとなく聞いてみた。
『そんなの出来るはずないでしょ』の一言で終わったが、それでもエリーさんも今回の件では相当きな臭く思っているようで、『少し調べた方がいいかもしれませんね』なんて言う始末だ。
エリーさんの言うことでは、陛下が一度下した事柄について、いくら有力貴族がものを言っても簡単に覆すことはできないとか何とか。
それに今回の俺の場合では宰相の企てということもあって、侯爵一人が騒いでもどうすることはできないとのことだ。
今後の展開に知恵を絞っていると、あっという間にモリブデンに到着していた。
モリブデンに到着後に、すぐに店に入り、その後の様子を聞いてみた。
今回、伯爵が慌てているのが、どうも社交シーズン最後に例の侯爵が大パーティーを開いて一族の結束を確認したとか。
そもそも俺の治めるシーボーギウムは、前の領主があまりにあまりだったので、たとえ流行り病が無くとも潰れるのは時間の問題だったらしいのだが、その前の領主というのが今回話題の侯爵に近しい派閥の者だとか。
そこで、その侯爵は自身の政治力強化のためにその派閥を取り込んで、俺をつぶそうと派手にパーティーを開いたらしい。
俺の寄り親の伯爵は、俺の領地拝領の経緯を知っているだけに、慌てず成り行きを見守るつもりだったようなのだが、自身の派閥内から不安視されて今回の呼び出しに繋がったとからしい。
俺があまりに王都にいないこともあって、派閥内でも俺の顔を知らない者たちが多くいるらしく、一度どこかできちんと紹介する必要も同時に感じたとか。
とにかく急ぎ伯爵との会談が必要なことは理解した。
一応、俺の社会人の経験があるので、こういう情勢が分からない時の対処法くらいは聞いたことがある。
とにかく当事者は問題点の近くにいて、情報を簡単に受けられる状況を作るのと同時に、何でもいいから情報を発信していく必要がある……らしい。
これもビジネスマナーだっけか、営業スキル向上なんとかで参加した講習で教えられたことを今思い出した。
普通、火中の栗は拾いたくない。
俺もそうだが、何でもあの時の講師は、皆が拾いたくない栗を拾ってこそ解決する糸口が見えるとか。
それでも多くの場合、その姿勢が周りに評価されてあきらめられるように問題が小さくなっていくとも言っていたけど、この場合まさにこのパターンのようだ。
俺は、モリブデンでも情報を仕入れたので、急ぎ王都に向かう。
今回、普通ならばメイドや執事など戦闘職でない人と一緒の行動なので馬車利用がデフォルトらしいが、俺はあえていつものごとく森の中を歩くことを選んだ。
ゼブラは、領地で何度か経験しているので問題ないが、バトラーさんは少々年齢に懸念があったが、それでもこれから王都で頑張ってもらいたいという気持ちもあったので、多少時間がかかってもパワーレベリングをしていくことにした。
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