第136話 あれ、誰だっけ?
ペンネさんは俺のためにモリブデン行きの船の手配までしてくれて、俺は無事に店まで戻ってこれた。
店で、二人を紹介したらなぜかみんなからあきれられてしまった。
なぜなんだなろう?
あきれているみんなを見渡すと見慣れない女性が増えていた。
誰?
て、そういえば病院経営に乗り出すきっかけの助けた女性だった。
ここで呼んでもいないのに先生が登場。
『どれどれ、うん、すっかり良くなった。
完治だよ』
だって、しかし助けた時にも美人だとは思ったのだが、すっかり良くなり血色の良い肌では見違えるほどの美人だ。
もし、このままオークションにでも出せばどれほどの値が付くか分かったものじゃない。
先生の見立てを聞いてみようか。
一人目にはまずエルフでしょう。
ダーナがいるからエルフ種が初めてという訳ではないがダークエルフとエルフってひとまとめにしても良いのかは俺は学者じゃないのでわからん。
しかし、ダーナも美人だったけど、目の前のエルフはまた別の種類の美貌を持っている。
名前をガーネットといい、年齢はって……おっと、これは失礼。
なんと78歳だと。
おばあちゃんでしたかって、先生が慌てて否定してきた。
まだまだ成人したてのエルフらしい。
長命のエルフならではのあるあるらしく、だいたい50歳で成人になるとかで、エルフ種族の間ではまだまだ一人前とみられない年齢らしい。
エルフは100歳を超えないと半人前だとか。
当然処女だ。
それでスリーサイズって、もういいよ。
本当に最近の先生は壊れてきたような気がする。
それよりも肝心なのがスキルというか職業なのだが、当然職業は奴隷なのだが、シーフとある。
これっていわゆる冒険者チームに必要な盗賊職というか斥候担当の職業だよな。
それにエルフは期待を裏切らない。
魔法も得意とある。
これからは色々と教われそうな気がしてきた。
次の二人だが、一人は魔法使いのサリーさん21歳。
とてもおいしそうな処女だそうだ。
スリーサイズは無視して魔法使いだそうで、これまた俺たちが一番不足している職業が埋まってきた。
最後の人族が俺の疑問にこたえるかのような職業で、魔法学者とある。
少しばかり薹が立つがそれでも十分食べごろの30歳でしかも処女って、人のことは言えないが俺も30歳まで童貞だったし。
だから彼女も魔法使いに成れたのかもしれないしって、え、先生なんですか?
違うって、30歳の童貞魔法使い説は間違えだって、そんなことはいい。
しかし、もう完全にあれだろう。
回復職に魔法使いって、完全にできすぎだとは思うが、とにかくこの後について色々と考えないとまずい。
彼女たちは病院経営のきっかけになったわけだけど、あの時にはそんなことは一切考えずにもったいないとかかわいそうとかという気持ちが先だって助けたのだ。
確かに俺たちにはどんどん人手が足りなくなっているので、メンバー補充は必須だけど、近々の課題としては病院経営のスタッフ、それも事務職だが、彼女たちって事務職できるのかな。
まあ、いいか。
それよりも全員が集まったところで自己紹介から始めて、助けた三人も病院の方に回すということで、ひとまず落ち着いた。
何せ、ここもそろそろいっぱいになりそうだ。
半分を王都に持って行ったので、まだどうにかなるけど、本来ならば雑魚寝の子供たちにも部屋を割り振りたいし、ここと病院、それに王都の店に分けておけばしばらくはどうにかなりそうだ。
尤も食事だけはここでみんな一緒に取りたい。
なので、ここで簡単に決まりを作った。
食事は朝夜だけはここでみんな一緒に食べるということにして、病院と店に分かれて生活させることにした。
翌日に、俺は回復士の二人の他に魔法使いの三人を連れて港傍にある病院に向かった。
「昨日も話したけど、みんなはここで生活をしてもらう」
「ここですか?」
「ああ、キョウカやムーランにはすでに伝えてあるが、ここは病院となる」
「病院って?」
そういえばそうか。
この世界には、少なくとも俺が知る限り病院なるものが無い。
けがは教会など似る神職にヒール魔法をかけてもらうか、ギルド辺りで売っているポーションが頼りだ。
病気に至っては自然治癒任せの甚だ心もとない限りだ。
そういう意味では俺が作る病院は俺の仲間にとって心強い存在になっていくだろうが、その知識が俺頼りなのはちょっと不安が残る。
難しい病気については正直無理っぽいが、魔法もある世界なのだから、手術の代わりに魔法なんかも利用したい。
そういう意味では魔法使いの三人は頼りになりそうだ。
これからいろいろと研究をしてもらい新たな治療法を確立させていきたい。
まずは彼女たちに説明かな。
「病院というのは病気やけがを専門に治療する施設のことだ」
「ケガや病気って教会で治療するものでは?」
三人は別の国で魔法を極めるための修行などをして仲良くなったらしく、同じ食生活をしていたために、脚気にかかったようだ。
脚気にかかり動けなくなったところを奴隷商に助けられ?て、見事に奴隷になったんだが、脚気の治療はされずに一時的に良くなった時に売られて船の中で再度病気が発症してモリブデンで処理される寸前に俺に買われたといっても無料で引き取ったのだが、俺の奴隷となり治療された経緯がある。
「君たちは、教会で生き腐れ病の治療をされたのかな」
「ええ、神職にヒールの魔法をかけてもらい、ポーションを頂きました。
それで回復したのですが、船の中で再度病気が……」
「ああ、そうなのか。
多分だけど、教会では生き腐れ病は治らないぞ。
そこのキョウカたちにでも聞いたらいい。
彼女たちは教会にいたのだから」
「生き腐れ病!」
どうも初めて病気の名を聞かされたようで、三人とも驚いていた。
何を今更と思わないでもないが、ひょっとして病名も聞かされずに処分されそうになっていたようだ。
だまされたわけでもないのだろう。
一時的に症状が回復すれば完治のチャンスはある。
回復中にビタミンを摂取できれば簡単に回復するのだ。
教会によっては経験則でそのあたりを分かっているのもいたのだろう。
鑑定を持つムーランでも生き腐れ病は治療不可になっていたのだ。
自然治癒しか頼れるものが無いのは本当に怖い。
俺は最初に生き腐れ病について説明しておく。
「生き腐れ病にはいくつかの種類があり、原因も厳密に言えば違うのだが、基本栄養の不足から起きる」
「栄養不足ですか?」
「え、私たちはきちんと食事をしておりましたよ」
「毎日二食は難しかったですが、それでも栄養失調になるとは思えませんが」
二食だって、この世界は本当にもう、しかし肥満に関する病気は少なくとも庶民には縁がなさそうでよかった。
「俺の説明が足りなかったようだな。
必要な栄養というのはいくつかの種類があり、多くはいらないのだが、絶対に欠かすことができない栄養がある。
君たちが店で治療中に食べていたアポーにはその栄養が豊富に含まれているから病気が治ったのだ」
そこから俺は俺のつたない知識の中からわかる範囲で詳しく説明をしていった。
彼女たちの反応はまちまちで、半信半疑といった顔をした者もいれば納得したような顔をした者もいた。
ムーランは鑑定結果が変わったことを経験していたこともあり、俺の説明に納得がいったようだ。
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