第20話 銀色のギルド証
きた、来た、きた~~~。
知識チートの最初は塩からだ。
にがりまでも蒸発させれば当然美味しくは無いだろう。
そこは現代人としての知識って……あれ?
どうやればいいんだ。
まあ良いか。
この世界での塩は岩塩だけということが分かった。
その岩塩は当然利権の塊で早々俺には食い込めないことも分かった。
そうなると、俺の抱えている香辛料も怪しいな。
「塩の話が出たついでで、お聞きしますが、香辛料ってどんな感じですか」
「コショウなどのこの町の重要な商品です。
南方にある国からの輸入で、この町に集まった商人の手で、各地に売られていきます。
当然高価なものになりますから、道中襲われる危険もあります。
駆け出しの商人が扱えるようなものではありません。
仕入れ値も高額になりますしね」
「その分、儲けも大きいのですが」
「そうですか。
色々とお教えいただきありがとうございます。
暫くは持ち分の塩を使って近くを行商して歩き、私の扱う商品の仕入れを考えてまいります」
「そうですね。
それが良いでしょう。
でも行商なら、何も今登録していただけなくとも」
「そうですが、余裕のあるうちにしておきたかったもので。
幸いフィットチーネさんを助けた時の恩恵で、かなりの報奨金を頂きまして。
これからはその資本を食いながらの生活になるでしょうから、いざ店舗商売を始めようとした時に、登録するお金があるとは限らないかと思いましたので」
「そうですか。
いや、それが賢明な判断かもしれませんね」
「そうですね。
商人は無駄を嫌いますが、将来を見越した投資もまた必要な事でしょう。
レイさんの判断は、賢明かと私も思います」
雑談をしているうちに、ギルドの女性職員が主任のところに一枚のカードを持ってきた。
銀色のカードだ。
「レイ様。
商業ギルドの会員証ができました。
これで晴れてレイ様は、商業ギルドの会員です。
一緒に商いを通してこの町をそして商業ギルドの発展のために頑張ってまいりましょう」
多分、新規会員のための定型文だろうが、それを聞くと俺も頑張ろうって気持ちになってきた。
俺は沢山稼いで、美女奴隷を沢山侍らせハーレムを作るんだ。
そんな気持ちにさせてくれる励ましの言葉だった。
そんな訳ないか。
俺はフィットチーネさんと一緒に商業ギルドを後にした。
もう日も傾き出している。
今日も朝から色々と頑張って、無事に夕方を迎えた訳だ。
馬車の中で、フィットチーネさんは俺に金貨を渡してきた。
俺の預けた金貨の残金として200枚の金貨が入っている革袋だ。
「確認しますか」
「いえ、その必要は無いでしょう。
そもそも、この残金の計算だって怪しいのですから。
私は少なくともそれ以上の価値をフィットチーネさんから頂いていると感じておりますし、現実にも私に対して色々とお金を使っていたようですしね」
「お金の件はしっかりしませんと、商人として大成しませんが、まあレイさんのお気持ちも聞けたことですし、それはそれで有りかとも思いますね。
そもそも、商いというのは、お金と商品を通して人と人の絆を作るものだと思ておりまし、そういう面ではレイさんは相当に優れている方かと。
これでは益々レイさんに肩入れしたくなってきます。
それに、予感ですが、レイさんとのお付き合いは大金に繋がる予感もしますしね」
「それはそれは。
絶対にご期待にお応えしなければ。
近いうちに沢山稼いで、奴隷を頼みたいと思っておりますので、ぜひその時はよろしくお願いします」
「ええ、そう遠くない未来だと思っております。
あぁ着きました。
屋敷はいつでも使えますが、ここ娼館にいつまでも居て頂いても構いませんからね」
「ええ、まだ、家具など一切をそろえないと住めそうにないので、もうしばらくお世話になります。
屋敷に移る時にはお礼に伺います」
「お礼だなんて。
でも、レイさんの門出ですから、お待ちしております」
これで俺もいっぱしに商人になった。
まだ何も稼いでいないが。
これからのこの世界の人生で、やりたいことは沢山ある。
俺は絶対にビッグになる。
そんな思いで、今日もお姉さんたちにお世話になりに行った。
翌日からは本格的に商売を始める。
と言っても、いきなり商売は始められない。
商材はあるから売り買いだけはできるが、肝心の相場観と云うのが俺には無い。
これではかもがネギをしょって歩いているようなものだ。
この時代いや世界と云った方が良いか。
人はデフォルトで善良ではない、そう考えていた方が良いだろう。
令和日本のように性善説は通じないと考える必要がありそうだ。
幸いフィットチーネさんは命を助けられたという負い目があるからだろうが俺には紳士的に付き合ってくれている。
だが、他の商人がそうだとは言えない。
一応、商業ギルドの対応を見る限りは契約の概念はありそうで、商売の駆け引きは当然あるが例外的に商道徳と云うのを守っていそうだ。
尤も、駆け引きがえぐいとか、商道徳と云うのが俺の居た日本とは比べるべくも無いだろうと考えていた方が安全だろう。
俺の元居た職場を基準にしておけば、一応は大丈夫だと思う。
あそこはあそこでかなり酷かったから、俺も相当鍛えられていたし、そう言う面ではこの世界で生きていくには良い経験をさせてもらったと、感謝……する訳ないだろう。
俺は夜のお勤めを済ませて翌日を迎えた。
どうも、俺のお勤めについてはナーシャからの受けは良くない。
まさか焼きもちとは思えないが、毎朝酷い時には午前中いっぱい彼女の機嫌がよくならない。
彼女はまだ幼いし、俺の食指が動かないから、もう少し大人に成ってからだ。
そのうち慣れるだろうから放っておくしかない。
その彼女が、機嫌が悪い中でも俺に聞いてくる。
「ご主人様?
今日はいかがしますか」
一応俺の奴隷ということだけは理解しているようで、しかも、何故かしら俺に懐いていることだけは分かるが、だからと言ってお姉さん方との日常にいちいち焼きもちを焼かれてもな~。
だが、ここできちんと相手しないとなかなか機嫌が直らないことも俺は学習している。
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