第91話 女性の鍛冶
それにしたって、これほどの美人って、それこそマスコミあたりで騒がれてもいいくらいの美貌だ。
マリーさんは奴隷商や彼女たちとの話も終わったようで、清算を始めていた。
革袋から直接金貨を100枚くらい取り出して奴隷商に手渡している。
一人金貨で50枚なら俺が買いたいくらいだ。
多分長年の取引でもあるのだろう。
奴隷商の方でも、マリーさん目当てで用意した奴隷のようで、金額も抑えているのかもしれない。
奴隷商が書類関係を用意する間、奴隷商の使用人と思われる人が俺たちのところにきて話しかけてくる。
「書類を準備しますが、しばらくお時間をください。
その間いかがしますか。
他を見て回りますか?
それとも、ほかの奴隷でもお見せしましょうか?」
「レイさん、どうしますか。
外国からの奴隷なんかなかなか見る機会はありませんから、見せてもらいましょうか」
「ええ、そうですね。
ちょうど、私の方でも鍛冶仕事のできる奴隷が欲しかったもので、そういうのが居れば見てみたいですね」
「ええ、大丈夫ですよ。
今回は、そういう奴隷も準備しておりますからご案内します」
奴隷商の使用人にそう言われて、俺たちは奥にある大きなテントの中に案内された。
中に入ると、いくつもの大きなケージがあり、その中に多種多様な人種?の奴隷たちが入っていた。
あまり良い環境だとはいいがたいが、行商ならばやむを得ないか。
俺たちは、そのケージをいくつも通り過ぎて、やっと目的の場所に来た。
ケージのなかには少女たちが入っている。
その中でも美少女といってもいいくらいの少女が、どうも目的の奴隷のようだ。
「え、鍛冶をするのに少女なの?」
「大丈夫ですよ。
彼女はドワーフ族ですから」
紹介してきた女性はドワーフだという。
エルフほどではないが、ドワーフ種も長命と聞くから、俺の感じでは見た目の年令では無いだろう。
そう思い、俺の鑑定先生にお願いをしようかとしていたら、先のケントとか云った奴隷商が書類を持って俺の方に来た。
「彼女ですね。
一応一般奴隷となっていますが、正直申しますと犯罪奴隷になりますかね。
この国ですと、一般奴隷として売れますが、マリーさんの御連れですから、ここは正直にお話しします」
先の奴隷商は、言わなくても良いことを正直に話し始めた。
この国の法律では、国内で犯罪を犯していなければ犯罪奴隷として扱われないとか。
流石に殺人などの凶悪犯なんかは奴隷商の方が顧客からのクレームが怖いのか、正直に犯罪奴隷として売るようだが、軽微な犯罪だと一般奴隷として売るのが普通だそうだ。
彼女の場合も、傷害事件で犯罪奴隷として扱われていたのを連れて来たとか。
まあ、外国に犯罪奴隷を連れてくることは割と普通に行われているとか。
いうならば経歴のロンダリングとでも言えばいいのか。
魔法もあるこの世界では、俺の様に鑑定が使える人も居るだろうから、あまりアコギにはできないだろうが、それでも俺に対しても正直に教えてくれた。
彼女の場合、鍛冶仕事をしたくて町に出て来たのだが、鍛冶仕事を条件に働きだしたら、その日の夜に主人から襲われたと云う。
まあ、彼女の美貌では襲いたくなる気持ちも分からなくはないが、その主人は簡単に彼女からの反撃を食らい大怪我を負ったそうだ。
話を聞く限り、彼女を雇った主人が明らかに悪いと思うし、何より情けない。
話を聞いて、俺も試しに鑑定先生にお出ましを願った。
傷害罪で奴隷落ち。
一般奴隷。
……
……
色々と情報が出て来たが、やたらと詳しくなっていないか。
まあ気にせずに、情報を見ていくと、先ほど説明があったように騙されて性奴隷にされそうになったところを反撃で相手に怪我させ、傷害の罪で奴隷落ちとある。
「彼女と話してみますか」
「ええ、お願いします」
俺は奴隷商のケントさんから彼女と話すことを勧められた。
色々と聞いていく。
彼女は、本当に鍛冶仕事が好きなようだ。
でも、ドワーフ族でも女性で力の要る鍛冶仕事をさせてくれるところは少ないとか。
それでも彼女は諦めることができずに人の多く住む町に出て、鍛冶場を探して歩いたようだ。
色々と聞くうち、最後に彼女から質問が来た。
奴隷商はあまりいい顔をしていなかったが、俺は彼女の質問を受け入れた。
「私を買うのか」
「条件が合えば、そのつもりだが」
「私に鍛冶仕事をさせてくれるって話は本当か」
「ああ、俺のところで、鍛冶仕事ができる奴隷を探していたからな」
「お前は、どう見ても職人には見えないが、本当に鍛冶場の親方か」
ああ、どうも彼女は勘違いをしているようだ。
「俺のところは鍛冶場ではない。
だが、色々と商売をしている関係で、とにかく急ぎ鍛冶仕事のできる奴隷を探している」
俺はこう言ってから、彼女に簡単に俺のところの現状を説明している。
後ろに連れているガーナからも説明してもらう。
ガーナの説明で、彼女の方も納得したようだ。
次は俺からお質問だ。
「では、話を聞かせてくれ。
先に説明したように、俺のところは鍛冶場ではない。
なので、鋼を使ったりして武器などは作っていないが、今必要なのは青銅で機械を作ることだ。
一つは、君は青銅を扱えるのかと云うことと、もう一つは、そんな俺のところで働く気があるかということだ。
俺からはその二つだ」
「ご、ご主人様?
本当に私に鍛冶仕事をさせてくれるのか」
「鍛冶仕事をさせるかって?
その鍛冶が居ないからここに来ているのだ。
ただのパイプくらいまではそこのガーナが作ってくれたが、ガーナの本職は大工や木工だと云うので、それ以上は無理との話だった。
で、君は青銅を扱えるのか?」
「ああ、青銅くらいは簡単だ。
鉄も鋼で無ければどうにか……」
「なら、鍛冶場ではないが、うちに来てくれるのか」
「ああ、お願いします。
……
あ、ご主人様……
一つ聞いても良いか…いいですか」
「ああ、俺に答えられるのならばな」
「直ぐでなくても良いのです。
いずれ、私に鋼で武器を作ることを許してもらえますか」
「そんなことか、別に構わないけど、俺は鍛冶仕事について君に教えることはできないぞ。
それに、うちには他の鍛冶職人は居ないから、自分で試行錯誤しながらになるけど、それでも良いのか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます