第171話 王都に帰還
そこから、みんなに現在の状況を説明していく。
「シーボーギウムに学校というものをおつくりになると」
「え?
学校って貴族の子弟が通う……」
「そう、学校を作ることになった。
と言っても、貴族の子弟が通うような礼儀などを学ぶものではなく、今回は船乗りの養成を目的としたところになるかな。
そのうち、うちの病院のような病気の治療に特化した人材も育てていきたいと考えているが、それは当分先になるかな。
今早急に求めているのは船乗りだ。
後、できればあちらで船も造っていきたい」
「また、それは……」
俺の説明を聞いたみんなは少し引いたような表情を見せる。
『なにも面倒事ばかりしなくとも貴族になったのだからゆっくりと貴族生活を楽しめばいいのに』って感じかな。
だから、俺も説明を続ける。
「いや、俺も正直そこまで大ごとにはしたくは無かったのだが、今回シーボーギウムで協力してくれた商人に頼まれたというのもある。
助けられた以上、話を聞かない訳にもいかず、かといってお茶を濁すような適当なことでも済みそうにないので、正直諦めている」
「諦めですか」
「ああ、諦めだ。
まずは、この先についてだ。
モリブデンでは預かっている奴隷たちを奴隷商に返して、俺たちの仲間については移動できるように準備させてくれ」
「ご主人様は?」
「ああ。俺は一度王都に戻る。
王都の店も長く閉めたままにはできないし、何より俺の寄り親にあたる伯爵にはお国入りの報告もしないとまずいしな。
そうなのだろう」
「ええ、戻られましたら、そうするのが礼儀ですが……」
メイドたちの歯切れが悪かったので聞いてみると、俺の戻りが早すぎるので、どう説明すればいいのか迷っていたようなのだ。
「正直、陸路で国入りしていたのならば、下手をするとまだ現地に着いてすらいないくらいだから、俺が王都に戻るというのもどのようなものか」と言った感じだ。
まあ、船を使って早く行き来できることは良いことだし、何より商人たちが知ればモリブデンを使ってシーボーギウムに商売に来ないとも限らない。
そういう意味ではいい宣伝になると俺は考えている。
とにかく、あれほど荒れた領地をできる限り早急に立て直すには商売は避けては通れない。
現状商業連合とは海路でしか繋がっていないがそれ以外は陸路が中心だ。
海路も無い訳ではないのだが、魔物の影響で盛んではないようだ。
モリブデンとの間には航路も整備されているので、定期的に魔物も間引かれているため、商売が成り立つようにはなっているが、それ以外の航路は、ほとんど冒険に近いらしい。
尤も陸路でも魔物はいるし、盗賊も出るから同じようなものだと俺は考えているが、襲われた場合のリスクを考えると、格段に違うらしい。
この世界では、海上で襲われた場合、撃退できなければ死ぬしかないと考えられている。
陸路だと逃げる選択肢がある分、海路しかない商業連合以外の国とではあまり使われていないという話だ。
俺はこの説明を聞いた時に、新たな商売のタネを見つけた思いだ。
そういう話ならば、海路を行き来でいるだけの強さを持つことができれば問題ない。
幸いなことに、その魔物のおかげでいわゆる海賊と言われるような連中はこの世界、少なくともモリブデンでは知らされていない。
ならば魔物対策さえできれば、陸路よりも簡単にたくさんの荷が運べる海上輸送は魅力的になる。
それについても研究を始めるか。
俺はメイドたちを連れて王都に戻った。
帰りも急ぎ戻ったこともありモリブデンから3日で王都に到着した。
もう俺たちの移動は、この国では特急便扱いの様にほとんど時間をかけていない。
この辺りでも冒険者に急ぎ仕事として依頼すれば優秀な冒険者ならば俺たちくらいでの行きは今までもあったようだが、それを常に行っているのが異常のようだ。
護衛の冒険者にも依頼料は弾まないといけないし、何より冒険者も襲われて動けないのでは意味もないので、交代の冒険者も連れて動くので、普段以上に冒険者を護衛として雇う割には、休憩中の冒険者も馬車などで運ぶ必要があるので多くを運べない。
本当に急ぎでもない時には1週間かけての移動が当たり前だ。
王都の着くと、その足で先触れを伯爵邸に走らせてから店に入る。
俺たちが店に入るのとほぼ同時に伯爵邸に走らせていた先触れが戻ってきた。
「レイ様。
明日にでも大丈夫のようですので、明日うかがうようにお話しておきました」
「ありがとう。
では、今日中に周りに挨拶にでも回るか」
「それが良いですね。
手土産などはいかがいたしますか」
「あの荒れた領地では特産品も無理だろう。
店にある物を適当に見繕うか」
「それしかありませんね」
店の掃除などを済ませてから、バッカスさんの店に顔を出して酒を購入する。
その後、ドースンさんの店にも顔を出して簡単に挨拶だけ済ませて店に戻る。
奴隷などの商談は伯爵様に挨拶を済ませた後に改めて行うということになっている。
その日の夜は、奴隷たちのご機嫌を取るために頑張った。
しかし、最近はおかしい。
確かに望んでいたことではあるけど、最近は俺の欲望を満たすというよりも女性たちのご機嫌を取るために、それも考えもせずにやたらと増やした美人奴隷の数のせいで、とにかく体力目いっぱいに頑張らないと翌日の機嫌が悪くなる。
特に、力及ばずで構えなかった女性でも要れば、その女性の機嫌の悪いこと、とても客商売に出せるレベルにないので、そんなことの無いようにとにかく頑張るしかなかった。
もうこれ以上は増やさないと心に誓うが、まだまだ奴隷たちは必要だ。
奴隷の他にも領地で雇う人も増やさないといけないが、とにもかくにも先立つものが無いので、商売を休むわけにもいかない。
本当ならば王都やモリブデンの店を閉じて領地に連れていければ一番良いのだが、それができない。
まあ、柵(しがらみ)もあるのでお金だけの問題でもなくなってはいるが、本当に面倒くさいことになってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます